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「一石」の力

column vol.1027

芸人のとにかく明るい安村さんが、日本初の快挙を成し遂げました。

イギリスの人気公開オーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」の決勝にワイルドカード枠で出場したのです。

〈TBS NEWS DIG / 2023年6月5日〉

結果、惜しくも優勝を逃したのですが、会場は総立ち状態だったとのこと。

素晴らしいですね〜

日本の裸芸がイギリスの芸能の一石となったわけですが、そういえば最近、ビジネスの世界でも “一石” を感じるニュースを目にすることが多いと感じます。

例えば、FNNプライムオンライン【若いだけで「公式SNSをさせられた人へ」…シャープの“中の人”が一石投じた真意を聞いた】です。

〈FNNプライムオンライン / 2023年6月3日〉

まさに “一石” という話なのですが、…タイトルがアグレッシブ過ぎという方が気になりますね…😅

この話を皮切りに、今日は話を進めていきたいと思っております。

SNSの本当の意義

シャープといえば、SNS運営のお手本のような会社の1つ。

同社では「中の人」という名前の通り、運営をアウトソーシングせず、自社社員が行っているのですが、Twitterのフォロワー数は83.1万人(2023年6月5日現在)

そんなシャープが3年前に放ったこの投稿内容に注目が集まっているのです。

今年もまたどこかの会社で「若い」という理由だけで公式SNSをさせられた人へ。もし仕事でどうしようもなく困ったら、この一連のツイートを見せるか、あるいはこのマンガを詰めてくる社内の人に読ませてください。

ツイートに貼られた(リンクされた)マンガでは、公式アカウントを運営する中の人たちの座談会が描かれ

“SNSは売るための道具ではない”
“企業はSNSをやることをマーケティングと勘違いしている”

といったことが述べられています。

実は、シャープの投稿は一石ではなく「二石」投じられているのですが、1つは「SNSでセールスをするな」ということ。

もともとSNSはコミュニケーション手段としてユーザーは使用しているわけで、友達や好きな芸能人のツイートを楽しんでいる中、ゴリゴリの企業セールスツイートに興味を示してもらうのは難しいというのが同社の考えです。

それよりも、まずは「好きになってもらうこと」を優先する。

そのために、読んでくださる方が共感できるツイートを心がけているのです。

一般的にマーケティング費用、会社によっては「販売促進費」と言われるものは、販売を促進してナンボ

「投稿」と「商品が売れること」がリンクすることが望ましいので、ゴリゴリのセールスじゃない方が理想と思ったとしても、なかなか舵を切れないのが本音です。

しかし、マーケターとして言えることは「好きになってもらう」ことの重要性は非常に高いと感じています。

例えば、同じコカコーラを買うとして

A:福山雅治さん
B:池辰彦(私)

皆さん、両者が手売りした場合、どちらが売れると思いますか?

Aをご自身の好きな芸能人に変えていただいても構いません。

同じコカコーラだとしても、Aの方が断然売れますし、何だったらAは1万円でも売れるかもしれない。

それが「好きという価値」です。

そして、もう一石は若手に委ねるということ

SNS=若手が得意

という方程式から生まれた解だとは思うのですが…、企業アカウントはできれば中核になる人が代表して発信することが望ましいのです。

理想はトップです。

企業の方向性を決めるのはトップだからです。

以前、【経営者はSNSをやると良いらしい】でも語りましたが、企業アカウントは別としても企業トップが自社を好きになってもらためにSNSを駆使するのは大切なことです。

大切なのは、企業にも「人格」が必要ということです。

トップでなくても、企業のアイデンティティを深く理解している人が適任であることは間違いないでしょう。

安易にSNSだから若手という考えを持つと、肝心の好きになってもらうための人格が明確化できず、ただ発信しているだけのアカウントになりかねない。

それは非常にもったいないと思うのです。

編集者の鏡「一人出版社」

他にも「一石」を感じる好事例はありまして、シャープの記事が「メディア」「トップ(経営者)」という2つの要素があったので、それぞれをテーマにしたものをご紹介させていただきます。

最初のメディアは出版業について。

最近、「一人出版社」が増えているというのをご存知でしょうか?

〈産経新聞 / 2023年5月28日〉

その一人が、滋賀県長浜市で「能美舎(のうびしゃ)」を営む堀江昌史さん

元朝日新聞の記者さんです。

堀江さんの出版哲学にひどく共感したのは、堀江さんにとって本を出すことは「推し活」であること

普通、大手出版社なら採算が合わず出版を見送るような本でも、自分が世の中に知らしめたいと思うものを形にしているのです。

実際、堀江さんが出す本は地元に関するものばかり

そんなスタイルで、書籍の企画から取材、編集に加え、営業やSNSでの宣伝まで1人で担い、年1~3冊のペースで出版

これまでの7年間で、手掛けた本は復刊を含めて14冊にも上るのです。

例えば、2歳から4000日以上、琵琶湖に通い続けたという魚が大好きな大津市の男子中学生が筆者となった書籍『はじめてのびわこの魚』

色鉛筆で琵琶湖に生息する魚50種を描いた図鑑絵本なのですが、躍動感あふれる筆致で話題となり、初版3千部は3ヵ月で完売しています。

堀江さんが常に優先するのは

この人の取り組みを形に残したい

という純粋なる思い。

堀江さんの考え方や活動に触れていくと、非常に心が熱くなります。

まさに編集者としての理想を感じます。

他にも、東京都府中市で書店も経営する一人出版社「よはく舎」代表の小林えみさん

大手では採算が見合わずに見送られる企画も『こんな本を出したい』という思い一つで、本を出すことができる

と、その想いを語っていらっしゃいます。

小林さんは

雑誌を中心とした書籍の落ち込みが出版不況として語られがちだが、海外市場への進出や電子書籍など大手を中心に出版産業の新たな活路は広がっている。多様性を持った本を輩出する一人出版社の活躍もその一つになれば

と、熱さだけではなく、クレバーな考えも語っております。

理想を追い求める編集者の皆さんに、「私自身も…」というエネルギーをいただくことができました。

不満を持つだけで終わらない

最後の事例はトップ(経営者)についての話題です。

主役は、新潟市の印鑑製造販売会社「大谷」の役員、堂田浩之さん

奥さんが2代目社長を務めていらっしゃるというお立場なのですが、堂田さんはある熱い挑戦をし、見事成果を出していらっしゃる方なのです。

〈読売新聞 / 2023年5月13日〉

それは何と!ハンコを売る会社で、堂田さんが勤んでいるのは「ウィスキー造り」

えっ!!!ウィスキー???

と思った方もいらっしゃるでしょう😊

なぜ、印鑑製造販売会社なのにウィスキーをつくっているのか??

それは、7年前に堂田さんが奥さんにこぼした愚痴がきっかけでした。

それまでの数年、国産ウイスキーは世界的人気で品薄となり、オークションで高額取引もされている。

そんな状況を受け、奥さんに対して

なかなか良いウィスキーが手に入らない

と、堂田さんが不満を口にすると、意外にも経営者である奥さんは

だったら自分でつくればいいじゃない

と回答。

普通の人からすれば「無茶振り」とも取れる返しですね…(汗)

しかし、堂田さんは、行政手続きのデジタル化などによる「脱ハンコ」への危機感も感じていた時期だったこともあり、一念発起してチャレンジすることに。

事業化に向けて日本各地の蒸留所に足を運び、事業計画を練り始たのです。

私が従業員の立場でしたら、こうした行動力を見ただけで

単なる逆玉の役員ではない

と称賛を送るはずです。

そして、初期費用約3億円を投じ、「新潟亀田 蒸溜 」を整備。

「ポットスチル」と呼ばれる銅製の釜も本場スコットランド製を取り寄せ、2019年3月に子会社を設立

20年6月には製造免許も取得し、21年2月から本格的なウイスキー造りが始まったのです。

ここまでの行動力だけでも凄いのに、何と今年の3月、イギリス・ロンドンで開かれた品評会「ワールド・ウイスキー・アワード」部門最高賞を受賞したのです…(驚)

同じくイギリスで、安村さんは惜しくも優勝を逃しましたが、堂田さんはしっかりと結果を残しました。

今後は

ウイスキーを海外に売り込みながら、本業のハンコも盛り上げたい

と意気込みを語り、熟成酒での世界最高賞も目指しているとのことで、まさに大谷翔平選手顔負けの二刀流経営を実践しようとしているのです。

非常に感銘しました!

やはり、ビジネスには想いと覚悟が一番大切ということを改めて痛感した好事例たちでした。

皆さんに刺激を受けながら、自分も理想を形にしていきたいと思う今日この頃です😊

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