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Z世代に与えたい「安心感」

column vol.1048

以前、【軽やかに「挑戦」する企業たち】「店員がタメ口のカフェ」について

そして、【「理想論」につくる余白】「スマホ断食サワー」についてお話しましたが、Z世代の若者たちになぜウケているのかという解説記事がありますので共有させていただきます。

〈DIAMOND online / 2023年6月29日〉

こちらはZ世代の研究で有名芝浦工業大学教授、原田曜平さんの記事。

おさらいしますと、「タメ口カフェ」は今年4月に東京・原宿にオープンした「友達がやってるカフェ」のこと。

店員とお客さんが「もともと友達」という設定をお互いに演じるカフェで、店員は

「久しぶり!」
「待ってたよ~」
「今日来るって言ってたもんね」

初対面なのに、あたかも友達のように迎えてくれます(笑)

しかも、メニューにも工夫が凝らされており、「いつも飲んでるやつ」という名のドリンクは、中身(種類)を聞かずともさっとお目当てのドリンクを店員が提供

実はこれ、本当は「おまかせメニュー」で店員がランダムにソフトドリンクを提供するというものなのです。

そして、もう1つの「スマホ断食サワー」渋谷ネオ焼肉・ホルモン ふたごのメニュー。

グラスの底が半分かけており、グラス単体では自立できない仕様になっており、かけた部分にスマホを挟むことでようやく自立する仕組みになっております。

渋谷ネオ焼肉・ホルモン ふたご

さらに、スマホのライトを付けることでドリンクが光り輝き、「映える」というわけです。

つまり、スマホを手放さないと映えず映えたら映えたでスマホが使えないので写真が撮れない…

まさに「スマホ断食サワー」の名にふさわしいメニューなのです。

では、なぜZ世代にウケているのか、原田さんの解説を見ていきたいと思います。

いかに「傷つけず」「傷つかない」か

若者にウケている理由は、ズバリ友達関係で「傷つかない」ことが挙げられています。

原田さんはこのように語ります。

どうやら日本の若者たちは今、特に目的や行きたいお店がないまま「今日空いてる?遊ぼうよ」などと気軽に友人を誘うことに抵抗があるようです。仲間が別の予定やアルバイトなどを優先した場合に、断られて傷つくリスクが伴うからです。

これは逆の場合もあるでしょう。

相手に「断る罪悪感(で傷つく)」状況をつくりたくないというパターンです。

私には20歳の姪がいるのですが、同じ横浜市ということもあり、よく私と妻に会いに来てくれるのですが、絶対に事前に「行くよ」と言ってくれません

つまり、毎回アポなしで来るので、ほとんど会えないのです…(涙)

こちらからすると「事前に言ってくれれば!」と思うこともありますが、彼女は私たちに気を使わせたくないのでしょう…

当社のZ世代を見ていても、我々世代に比べるとお互いに傷つけ合うことを最小限にしている節を感じます。

スマホ断食サワーについても、一緒に食事していてもスマホ見ながら話しをする状況をもどかしく感じるものの、それを言うとお互い傷ついてしまう

そうした中、スマホを手放さないと楽しめないサワーがあることで、お互い傷つけずに会話に集中できる状況をつくっている焼肉屋ふたごの上手な戦略が若者を惹きつけているというわけです。

多様性という良い意味での「逃げ道」

そういう観点で見た時、Z世代の企画屋、 僕と私と株式会社CEO・今瀧健登さんの若者が重視する「多様性」について、より理解ができました。

〈東洋経済オンライン / 2023年6月30日〉

今瀧さんは1997年生まれのまさにZ世代

「Z世代は個性を重視し、さまざまな価値観を認め合う」と上記東洋経済オンラインの中でも解説しています。

そして、次の言葉に私は注目してしまいました。

いろいろな幸せの姿があって、それぞれに上下も感じない。そうすると、自分がどうやって生きるのかを、とても選びづらくなります

「それぞれに上下も感じない」、ゆえに「どうやって生きるのかを選びにくくなる」

ここに若者の「傷つけ合わない」心理を感じるのです。

つまり、多様であれば比較する必要はない

もっと言えば「競争する必要がない」ワケです。

比較や競争はどちらか一方を傷つけることになります。

以前、「勝利至上主義」への疑問として全日本柔道連盟小学生の全国大会の廃止を決めましたが、まさにこの話とも通ずる話だと思います。

〈PRESIDENT Online / 2022年4月21日〉

運動会の徒競走でも順位を決めないなど、優劣を決めない傾向を感じますが、いつの時代も若者は時代の空気を先鋭的に表現するもの。

私たち大人世代が競争に辟易としている心理が彼らに乗り移っているのかもしれませんね…(汗)

「安全」を求める若者たち

続いて共有させていただきたいのが「パナソニック ホームズ」が実施した若者(Z世代)を対象にした「住まいに対する意向調査」についてです。

〈@DIME / 2023年5月29日〉

住宅に求めるトップ3は、3位が「長く住める」、2位は「快適な住まい」、そして1位「安全な住まい」という答えに。

求める住宅性能についての1位「耐震性」ということだったので、地震大国日本に対する備えを最重要視していることが伺えます。

こうしたことを読み解いていくと、Z世代が生きてきた時代背景が頭に浮かびます。

Z世代は1990年代半ば以降に生まれた若者たち(2012年頃までの生まれ)。

この世代の人たちの多くがバブル崩壊就職氷河期を経験した親を持ち、リーマンショック東日本大震災傷つく社会を見てきました。

そして、ここ最近のコロナです。

終身雇用性の崩壊失われた30年という経済停滞を当たり前のように感じ、「良い大学、良い会社に入っても将来が約束されない」と言われ続けて生きてきている。

つまり、ずっと不安社会の中、毎日を過ごしてきたのです。

こうしたことがZ世代の堅実性やセンシティブな心理を育んでいるのではないでしょうか。

どこでも誰とでもつながれる「不安」

最近、講談社現代新書から出版された『日本の死角』発売即4刷と話題になっています。

〈現代ビジネス / 2023年6月22日〉

ここでも若者について語られており、彼らの中には「個性的と言われると、自分を否定された気がする」「周囲と違うってことでしょ? どう考えてもマイナスの言葉」という反応を示す人もいるそうです。

今の若者たちは、出る杭として打たれないように、安定・安全をより優先するようになっているのかもしれない。

そのように書籍では指摘しているのですが、理由としては

「個性的であること」は、組織からの解放を求めるには好都合だが、組織への包摂を求めるには不都合である。自分の安定した居場所が揺らぎかねないからである。
今日の若者たちは、かつてのように社会組織によって強制された鬱陶しい人間関係から解放されることを願うのではなく、その拘束力が緩んで流動性が増したがゆえに不安定化した人間関係へ安全に包摂されることを願っている

と解説されています。

これは非常に深い見解ですね。

つまり、いつでも誰とでもつながれる世の中は、誰とも深くつながりにくい社会でもあります。

スマホ断食サワーの話ではないですが、リアルに面と向かって会っている人以上にスマホを使って深くコミュニケーションしている相手がいるということです。

二人きりで会っていても、時に孤独を感じることがある。

マッチングアプリの出現で、多くの恋愛が生まれる一方、結婚に辿り着けないケースも増えているそうです。

ここでも、さまざまな異性とつながれることは、同時に関係の希薄化を生み出してしまう…

そうしたパラドックスが若者を一層不安にさせ、人間関係においても「なるべく傷つけ合わない」ようにしたいと思わせるのかもしれませんね。

「安心」を与える人が時代の寵児になる

ということを考えると、非常にざっくりとした言い方をすれば、今の時代、そしてこれからの時代「安心」を与えられる政治家、企業、人時代に求められる組織・個人になっていくのだと思います。

Z世代の5人に1人は、倫理的で社会に有益である企業を選択するという調査結果もありますが、非常にうなずけますね。

ちなみに最近、大阪・ミナミグリコ看板下(グリ下)に入り浸る少年少女たちが犯罪やトラブルに巻き込まれるのを防ごうと、居場所づくりを支援する30社以上の地元企業が若者を従業員として受け入れるという話が話題になりましたが、非常に素晴らしい取り組みだと感じています。

〈産経新聞 / 2023年6月24日〉

私も人生の後半戦に差し掛かり、不安定で不安な社会を生きてきた若者たちどれだけ「安心」を与えられるかが大切だなと思っています。

当然ながら、自社の社員の人生に安心感を与えながら、noteでも若者が見てくれた時は、安心感を生み出す記事を書いていたい。

そんなことを改めて胸に誓う今日この頃です。

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