「教育格差」を越えて
column vol.1162
今朝、ニュースチェックをしていたら、胸が熱くなる記事に出会いました。
と、80代の女性が茨城県稲敷市に2億円相当の株式証券を寄付したというのです。
〈朝日新聞 / 2023年12月6日〉
旦那さんとともに教員として同市で働いていたお二人。
旦那さんには経済的に苦労しながら学んだ経験や、より高い教育も受けたかったと思いがあったそうで、もしもご自身が他界した時は、投資して貯めたお金を寄付に使って欲しいと奥さんにお願いしていたそうです。
そして、旦那さんが亡くなり、奥さんが遺産を引き継ぐタイミングで市教育委員会に申し出をしたとのこと。
市は全額を基金にして、奨学金などに充てるため、必要な条例と予算を昨日開会の市議会定例会に提案。
来春を目指して具体的な貸与の要項などを決めていくそうです。
貯めたお金を自分のためではなく、未来を担う子どもたちに使いたいと思った旦那さんも素晴らしいですが、その志に共感し、意思を引き継ぎ、実際にアクションを起こした奥さんも尊敬します。
とてもカッコいいご夫婦に朝から気持ちが昂ってしまいました🔥
コロナ・物価高で広がる「教育格差」
という事実は、多くの人々に知られるところとなってきましたが、コロナ禍、そして物価高を受けて、ますます生活が苦しくなっている世帯が増えています。
総務省の2022年の家計調査によると、塾代など「補習教育」の費用が19年と比べ、年収が多い世帯では増加したのに対し、比較的少ない世帯では減少する傾向に。
〈東京新聞 / 2023年5月23日〉
困窮家庭の子どもたちに無料学習会を開く「認定NPO法人キッズドア」が昨年11月、支援する家庭に実施した調査によると、「家計維持のために出費を減らしている項目(複数回答)」は、「教育費」が25%に上っています。
また、「物価上昇による子どもの学びや生活の変化」という質問では、「参考書や本の購入を減らした」が37%、「塾や習い事をやめた」についても18%に及んでいる…
総務省の家計調査でも、22年の世帯年収別(2人以上の世帯)の教育支出は、年収200万以上550万円未満の世帯で学習塾などの「補習教育」が19年比で軒並み減少。
一方で年収1250万以上1500万円未満では60%も増え、年収1500万円以上は44%伸び、教育格差の広がりはますます拡大しているのです。
また、教育格差は学力だけの問題にとどまらず、習い事を含めた体験学習にも広がっています。
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの小学生の保護者を対象にした調査によると、物価高騰の影響で、習い事に加えキャンプや動物園に行くなどの体験機会が「減った」と回答した保護者の割合は、世帯年収300万円未満が30.8%で同600万円以上の2倍に。
体験活動への年間支出額は、年収300万円未満では3万8363円だったのに対し、同600万円以上は10万6674円と3倍近い差がありました。
そうした中、学びたいけど学べない子どもたちに無償で学習機会を提供する人たちも増えているのです。
月謝は「やる気のみ」の「無料塾」
例えば、八王子にある無料塾「八王子つばめ塾」です。
子どもに求めるのは勉強へのやる気のみ。
子どもたちから授業料を一切取らず、ボランティア講師が無料で勉強を教えています。
〈AERA / 2023年12月3日〉
2012年のスタート以来、資金や物品を含めるとのべ200人以上の方から寄付を集め、これまで300人以上の貧困家庭の子どもたちの学習を支援してきたそうです。
無料塾を成り立たせるために、公民館や病院、市内の寺院が地元市民のために活動場所として提供するビルの1室などを学習の場として利用しているとのこと。
ちなみに、入塾するには、3つの条件があるそうです。
当然、無料塾なので、ボランティア講師や会場の数が限られているために授業のコマ数を増やせないなどの制限はありますが
それでも、塾・理事長の小宮位之さんは「有料塾にはない可能性も秘められている」と仰っています。
お金以上に志に惹かれて講師を引き受けてくれる方もいるということですね。
つながる「支援のリレー」
もう1つ「熱いなぁ」と思ったのが、最初につばめ塾に寄付した方の話です。
金額としては2,000円だったそうですが、何と提供したのは同塾の卒業生だったとのこと。
心温まる「支援のリレー」なのですが、このエピソードを受けて、思い出した事例があります。
それは、教育格差の問題に取り組む学生団体「Get CHANCE」についてです。
〈NHK / 2022年12月29日〉
こちらはオンラインの無料塾なのですが、2年前、高校生を中心にして設立されました。
立ち上げのきっかけは、代表の濱田颯太さん(慶應義塾大学 法学部 政治学科1年)が高校1年生の時に受けた体験にあります。
コロナ感染により、お父様の経営する飲食店が休業を余儀なくされたことで、大学に向けて塾に通いたい気持ちをご両親に言い出しにくい日々を味わったのです。
こうして教育格差についての意識が芽生えた濱田さんは高校2年生のサマーキャンプの時に知り合ったメンバーたちと活動を開始。
「Get CHANCE」では授業のほか、使わなくなった参考書や文房具を集めて地域の子どもたちに届けたり、子どもたちが将来の夢を持てるよう著名人を招いた講演会を開いているとのこと。
恐らく、同団体の支援を受けた子どもたちの中から、また次の支援者が生まれていくでしょう。
ということで、厳しい現実を救う手も間違いなく増えています。
願くば、善意の輪がさらに広がっていくと良いですね😊
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?