見逃せない!飲食業界の“News”
column vol.820
10月11日からスタートした「食オク!」という新サービスに注目が集まっています。
〈FRIDAY DIGITAL / 2022年10月23日〉
仕掛けたのは元広告マンの株式会社食オクの代表取締役社長・山澤孝司さん。
同サービスは、常連客以外ではほぼ予約不可能な人気店の予約権利をオークション形式で販売するというもの。
〈食オク! Webサイト〉
現在、「食オク!」に登録されている店舗は、ミシュラン三つ星を返上したことで知られる会員制の「鮨さいとう」や、半年先まで予約でいっぱいの中華料理「齋華」など、超人気店ばかりが並んでいます。
そして、早くも落札価格は高騰し、2席で40万円の値がついたケースもあるそうです。
飲食業界をサステナブルな世界にする
同サービスは当然、超人気店に行くことができない人にチャンスをもたらすものでもあるのですが、飲食業界を「サステナブルな世界」にしていくことが最大の目的。
飲食店の売り上げは「席数×客単価」が全てと言って過言ではなく、どんなに人気があっても売り上げは頭打ちになってしまうのが現状です。
そもそも世界と比べて日本の飲食店は安く、業界の平均年収は120万円も低い…。
その限られた売り上げの中で職人さんを育てていかなければならず、その上、世界的な物価高で経営はますます苦しくなっています…。
名店が生き残り、次世代の職人を育むために。
オークションで得た利益を飲食店に還元することで、売り上げの頭打ち解消に貢献していこうというのです。
さらに山澤さんは、新たに一般社団法人を立ち上げ、農業や漁業といった一次産業への寄付も行っていくとのこと。
ちなみに、オークション枠をつくることにより、常連さんの席が削れることはないそうなので、ご安心くださいませ。
休みにするはずだった日や、ランチとディナーの間など、本来であれば営業していなかった時間をお店の好意で解放してもらい、その席をオークションにかけているのです。
もちろん、課題もあります。
まずは席の値段が高騰していること。
すでに2席40万円で落札したケースもあるそうです。
さらに、今後海外からの「予約希望者」が増えれば庶民では絶対に手が出ない値段まで高騰してしまう可能性もあります。
そして、もう1つは「招かざる客」を招いてしまうかもしれない状況をお店側が懸念しています。
新しい挑戦にはリスクがつきものではありますが、今後このオークションサービスがどのように展開していくのか、非常に気になるところです。
「礼儀正しい」と安くなるお店
この「招かざる客」ということで思い出すのが、「礼儀正しさ」によって値段が変わるイギリスのカフェの話です。
〈HUFFPOST / 2022年10月23日〉
ランカシャー州プレストンにあるチャイとドーナツの店「Chaii Stop」では、注文の際の「礼儀正しさ」によって支払う金額が異なるのです。
●ドリンクの名前だけを告げて注文した場合5ポンド(約834円)
●「チャイをお願いします」と言うと3ポンド(約498円)
●「こんにちは!チャイをお願いします」と注文すれば1.9ポンド(約317円)
非常に面白いですね。
なぜ、このようなサービスを提供しようとしたのか?
オーナーのウスマン・フセインさんは、そもそもマナーの悪い客に出会った経験はなかったそうですが、「より友好的な雰囲気を大事にしたい」と考えたとのこと。
これまで最も高い5ポンドを請求したことはなく、ルールが導入されてからカフェにやってくる人たちがより親切に接してくれているらしく、フセインさんはこのように結論づけています。
この看板を掲げてから、人々はよりオープンになり、私たちと笑い合うようになりました。
日本ではお客さまとお店の縦意識がより一層色濃いので、カスハラ(カスタマーハラスメント)が問題になっていますが、この「Chaii Stop」の事例はお客さまと店員の関係を見つめ直すきっかけになる気がします。
最近、倫理的な意識で商品を購入する「エシカル消費」という言葉が浸透してきましたが、店員さんへの対応も含んでいきたいところ。
先ほどの「食オク!」の「招かざる客」問題についても、職人さんへのリスペクトを持ちながら、食を楽しむということを大切にしたいですね。
「お店選び」のパラダイムシフト
本日ラストのNewsは「飲食店選びで使用するサービス」についての話題です。
Googleマップ経由の来店客数向上を支援する株式会社エフェクチュアルは、全国の10~50代の男女を対象に、「地図アプリの利用に関する調査」を実施。
レストラン・カフェなど飲食店を選ぶ際にどのサービスの口コミ・レビューを参考にするか聞いたところ、1位は「食べログ」で36.7%だったそうです。
〈ITmediaビジネスオンライン / 2022年10月22日〉
2位は「その他」(28.2%)、3位は「Googleマップ」(25.8%)となりました。
「食べログ」と言えば、レコメンドの点数についてのアレコレがありましたが…、飲食店を選ぶ際に口コミやレビューを重視するユーザーが現時点では多いということが分かりますね。
一方で、若い世代はInstagramなどのSNS検索を通じて、一般の人の偽らざる「生の声」を集めて判断する傾向が強まっています。
私の知人が通うスポーツジムでは、インスタラクターが会員さんにGoogleマップの口コミやレビューをやんわり依頼するケースもあるようで、世の中全体としてレコメンドサービスは話半分で受け止めようというムードが高まってきているように感じます。
「お店選び」の方法も今、過渡期を迎えており、今後より信頼度の高いレコメンドサービスをつくり上げていくことが、大きなビジネスチャンスに繋がっていくのでしょう。
ということで、最近気になった飲食業界のトピックスをお届けさせていただきました。
このコロナ禍の影響をとても受けた業界だっただけに、今後ますます革新的な事例が見られるかもしれませんね。
良い変化が次々と生まれることを期待したいと思います。
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