親子でつくる新しい学習
column vol.1092
地元・横浜では今週から子どもたちが元気に通学する姿が見られ、夏の終わりをうっすらと感じています。
(…まだまだ…、気温は暑いですが…汗)
にこやかに歩く小学生たちを眺めていると、今年の夏休み、…ではなく、春休みに起きたあるトピックが頭に浮かびます。
ChatGPTのおかげで作文が好きになった女の子の話です。
〈PRESIDENT Online / 2023年8月28日〉
12歳の女の子は作文が苦手で、いつも原稿紙の前に何も書くことが浮かばず、暗い気持ちになっていたのですが、お父さんがお助けマシーンを差し出したことで変わります。
そのお助けマシーンというのが、ChatGPTです。
お父さんが
という言葉で始まるAIへの入念な指示文を打ち込み、AIと少女を対話させたのです。
すると、AIがコーチング能力を発揮し、次々と少女の春休みの出来事を引き出し、たった10分間のセッションで、「書きたいこと」を見つけてあげることに成功。
おかげで少女は作文書く楽しみに目覚めたようです。
そして、そのことをお父さんがSNSで紹介したことで、AIの上手な活用法ということで話題になりました。
まさに、AIは使い方次第という好事例でしょう。
実際、AIによって人間性(もっと言えば人間ならではの能力)を磨くことに大きく寄与する可能性もあるのです。
AIが「なぜ?」にトコトン付き合う
アメリカで「集団一斉授業」に「オンライン個別学習」を融合(ブレンド)する「ブレンディッド・ラーニング」が注目されているのですが
〈PRESIDENT Online / 2023年7月25日〉
ここにAIが今後活用されていくことが示唆されているのです。
集団一斉授業だけでは、どうしたって授業に対する子どもの理解の差は生まれてしまいます。
(教科ごとの興味の差も含めてです…)
一斉授業ではどうしても先生のペースに付いていくしかないですが、理解できなかった子は個別授業をブレンドすれば、劣等感を感じることなく、勉強を楽しく続けることができます。
一方で、生身の人間が対応すれば、今度は先生の負担になる可能性もある…
そこでAIの出番となるのです〜
AIが個別学習の先生になってくれれば、先生の負担は軽減されますし、生徒からしてもAI先生なら何度でも気兼ねなく同じことを聞けます。
実は私はここがポイントだと思っていまして、授業についていけないのは単純に能力の問題ということで片付けられないと感じているからです。
子どもの中には「疑問を解決しないと前に進めない子」もいるのです。
昔の私もそうで、例えば「人間は酸素を吸って、二酸化炭素を吐く」と聞くと、すかさず「何で逆じゃダメなの?」と思ってしまっていました…
でも、本当は多くの子どもがそうで、もっと小さな頃は親に「なんで?なんで?」と質問攻めしているわけです。
それが大きくなるにつれて、聞き分けの良い子は「遠慮」を知るようになる。
でも、これからの時代は「なんで?なんで?」と疑問を持つことが人間らしさを磨いていくのだと思います。
「なんで?なんで?」の精神が重要
予測不能なVUCA時代と呼ばれ、「答えなんかない」と言われるようになって久しいですが、知識を頭に入れる以上に、そこから深く考えることが求められるようになりました。
だからこそ、疑問(問い)を持ち、自分なりの答えに導いていくことが大切。
アクティブラーニング、リベラルアーツ、哲学教育などがキーワードになっていくというのは当然でしょう。
今後は一斉授業は動画配信で良いですし、個別教育はAIで良い。
それよりも、人間の先生は「教学の友」になっていくことが望ましいのです。
教育の目標を分類するための枠組みとして、「ブルームのタキソノミー」という指標があるのですが、そこに先生が果たすべき真の役割が見えてきます。
〈東洋経済オンライン / 2023年8月22日〉
指標は①から⑥まで、6段階の学習の次元があります。
思考を高めるためにとりわけ大事になってくるのが、④から⑥となります。
例えば、「ザビエルは日本に何しに来たのか」という問いは、ICTで簡単に知識を調べ、覚えることができますが
という問いを発すれば④の分析に発展します。
そこで、先生が思考力向上の伴走者になっていく。
その際に先生にとって重要なマインドを、『ブレンディッド・ラーニングの衝撃』の共著者であるマイケル・B・ホーンさんは、このように仰っています。
先生とは「先に生まれた生徒」と捉える。
時に子どもの発見や想像力から学ぶこともあるわけですし、まさに「教学の友」です。
親が子にしたい3つの役割
そう考えると、「教学の友」は親も同じです。
人生で最初の先生は親であり、どんな先生よりも一番長く伴走してもらいます。
学習における親子の関係について、灘中学・高校からマサチューセッツ工科大学に進学した起業家の前田智大さんのお考えは、マイケル・B・ホーンさんが先生に求める内容と一致しています。
大人になっても一生学び続ける姿勢を見せていく。
確かに私は40代後半になった今が一番勉強しているかもしれません…
そうした「学びの背中」を見せつつも、他にも親が子どもにしてあげられる重要な役割が2つあると思います。
1つは「ファシリテーション」でしょう。
好奇心や疑問など、子どもの心に寄り添って本人の学びを進行する役割。
そして、もう1つが「学びの意味づけ」です。
これは前田さんの話とも通じます。
親が子どもよりも先んじている点の1つが「人生経験」でしょう。
人生がそれなりに長くなってくると、これまで経験した学びや体験の意味づけができるようになってきます。
一番分かりやすいのが「あの時、あんな失敗があったから、今の自分がある」という記憶は誰にもあることでしょう。
他にも培ってきた学びや経験が、全く違う分野で花開くことがあります。
よくnoteで例に挙げるのですが、私が仕事において一番タイムマネージメント力を磨けたと思うのは、30代の頃に熱中したマラソンの練習でした。
さらに、私は講演を行うのですが、人前で話すことに慣れているのは、大学時代の演劇と、一時期行っていた体調改善運動の先生の経験が生きている。
親(大人)の人生経験があるからこその学び・体験の転用力は子どもに活かせるのです。
ですから、「もう、ゲームばっかりやって!勉強しないさい!」と言うだけではなく
と考えることも大事ですね。
これこそ、自らに対して
トレーニングになる。
大人も一生勉強ということであれば、望むところですね😊
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