「観光商業」のリスタート
column vol.802
10月11日は「旅の再開」についての大きなトピックスが2つもありましたね。
1つは、各都道府県で期間が違いますが「全国旅行支援」。
そしてもう1つは、インバウンドの水際対策の緩和です。
まずは、「全国旅行支援」について簡単に確認したいと思います。
「全国旅行支援」の概要
旅行代金の割引は、Go Toトラベルの35%よりやや高く、一方、県民割・ブロック割の50%よりやや低い40%割引となります。
1人1泊当たりの割引の上限は宿泊のみの場合5000円、交通機関+宿泊の場合、8000円となります。
この制度について非常に分かりやすく、かつ詳細に解説している記事があるので共有させていただきます。
東洋経済新聞【40%引き「全国旅行支援」押さえておきたい"条件"】
〈東洋経済オンライン / 2022年10月10日〉
また、旅行代金の割引に加えて、宿泊地のある都道府県などの指定された飲食店や土産物屋などで使える地域クーポンが平日なら1泊(日帰り旅行の場合1日)につき3000円、休日なら1000円分得られます。
一方、この支援については、2020年秋、Go Toイートが開始されたとき、鳥貴族で1品のみ注文して、1000円分のポイントを得るいわゆる「トリキの錬金術」が課題になったことなどから、今回は割引対象の下限を設けて、平日なら1泊1名5000円、休日なら1名2000円、その金額を下回る場合は割引対象にならないというルールに。
一方、2名宿泊のビジネスホテルなど、下限を下回ってしまう宿は値上げなどの対策を検討するところもあり、その分、サービスをつけるなどの工夫を施しています。
また、東京都の都民割「もっとTokyo」など各都道府県での支援策もあるので、ぜひそちらも確認しながら、旅先を選びたいところでしょう。
ちなみに奈良県の「いまなら。キャンペーン2022プラス」なら、宿泊費は他の都道府県が40%引きのところ、奈良県のみ50%引きとなるうえ、休日のクーポンも他の都道府県の1000円に対して2000円と手厚くなっています。
居住地の制限を加えず、全都道府県からの旅行者を割引の対象としているところもポイントです。
全国旅行支援について、大和総研は「旅行需要を大きく押し上げる効果が期待できる」とした上で、波及効果も合わせると計約8300億円の経済効果が見込めると試算。
そして、この円安という不安要素をプラスに転換したいのが、外国人観光客の水際対策の緩和でしょう。
入国者数の上限が撤廃。続々日本へ
具体的には、一日あたり5万人としていた入国者数の上限が撤廃されるとともに、ツアー以外の個人の外国人旅行客もおよそ2年半ぶりに入国が解禁されました。
〈NHK / 2022年10月11日〉
インバウンドを期待している業界、企業からは歓喜の声が聞かれる一方、マスクの着用をめぐっては議論が続いています。
アメリカ、韓国、イギリスなど68の国や地域から観光などで訪れる短期滞在者のビザを免除する措置が再開される他、地方の空港や港でも順次、国際線の受け入れが再開される見通しです。
また全ての入国者に対し、発熱など感染が疑われる症状がなければ入国時の検査は行わず、入国後の自宅などでの待機も求めないことになります。
ただ、3回のワクチン接種を済ませたことの証明書か滞在先の出発前72時間以内に受けた検査の陰性証明の提示を求める措置は今後も継続。
ちなみに、お隣り韓国では日本に訪れたい人が急増しており、日本旅行に強い韓国の大手旅行会社「旅行博士」では、水際措置緩和の発表以降、問い合わせが殺到。
9月に受け付けた予約数は8月に比べ530%ほど増えたということです。
日本への観光と言えば、ダボス会議の開催などで知られる国際機関、世界経済フォーラムが5月24日に発表した2021年版「旅行・観光開発指数」の世界ランキングで、日本が初めて首位になるなど、世界から注目が集まっています。
〈観光経済新聞 / 2022年6月6日〉
岸田総理大臣は先週の所信表明演説で、円安なども背景にコロナ禍前を上回る額の年間5兆円を超えるインバウンドの消費額達成を目指す考えを示しており、観光商業の復活が期待されています。
「デジタルノマド」を日本に誘致
そして、今の時代、プライベートでの観光と共に注目したいのが「ワーケーション」です。
コロナによりリモートワークが浸透し、多くのビジネスパーソンの間で働く場所の制限が無くなってきました。
アメリカの旅行情報サイトでデジタルノマドやバックパッカーをよく取り上げる「A Brother Abroad社」は、グローバルに行動するデジタルノマドは約3500万人、市場規模は7870億ドル(日本円で約110兆円、一人当たり換算すると約314.8万円 ※1ドル=140円で換算)と推計しています。
〈観光経済新聞 / 2022年10月8日〉
さらに、世界中のデジタルノマドにリアルな現地情報を発信しているポータルサイト「NomadList」の創設者であるピーター・レベルズさんは、「2035年には世界で10億人のデジタルノマドが誕生するだろう」と予想しています。
となると、観光業界としては世界中のデジタルノマドに日本にもやってきてもらいたいと思うのではないでしょうか?
ちなみに、NomadListではデジタルノマドから評価される都市とは以下の条件のようです。
①利便性…英語が通じるか/交通機関の安全面/生活コスト
②フレンドリーさ…LGBTQフレンドリー/現地の人の幸福度
③楽しみ…余暇/ナイトライフ
④安全面…平和か(対立などが無いか)/年間を通じた大気の質
⑤気候の良さ…エアコンやヒーターの状況/気温
⑥受け入れ環境…外国人に親切か/町のフリーwifiの状況
また、ワーケーション先として選ばれるのは、富裕層がバケーションとして長期滞在する「リゾート型」と、スタートアップやイノベーションという側面の強い「都市型」の2つがあると言われています。
日本でも、リゾート型は美しい景観を十分に生かしリラックスして過ごせるビーチリゾート地や山岳リゾート地、都市型は交通の便も良く長期滞在施設も多い大都市や周辺の都市などは需要が高そうですね。
いずれにせよ、デジタルノマドはポテンシャルの高い分野。
日本のビザ制度のあり方の検討、コワーキングスペースの整備や支援、地域住民との対話の場の構築など、先述のNomadListの評価項目を眺めながら、対策を考えていくと、新しいビジネスの広がりが見られそうです。
未だコロナ禍という課題はありますが、観光商業の最適解を期待したいですね。
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