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「拡張」する未来

column vol.1190

今週の一大ビジネストピックに挙げたいのが、9日からラスベガスで行われている世界最大級の家電・IT見本市「CES2024」です。

〈ニュースイッチ / 2024年1月11日〉

今年は、昨年のchatGPTから始まった生成AI革命を受け、「AIの見本市」と思えるほど新しいAI技術が続々とお披露目されています。

日本勢では、ソニーグループホンダ共同出資会社が、生成AIを使う対話システム開発においてマイクロソフトとの提携を発表。

私の専門である小売業についても、基調演説を務めたウォルマート

「AIを活用した購入パターン分析を通じ個人化ショッピングを支援する」

という抱負を明らかにしています。

同社のブースではAI物の体積を把握し、選別・包装作業の効率を改善するなど流通・物流の全過程を革新する過程を展示。

流通・物流については小売業の大きな課題なっているので、業界各社の大きなヒントになるでしょう。

…と、CES2024のトピックスを挙げようと思ったらキリがないのですが

本日は、あえてCESではないAIに関するニュースをお届けしたいと思います。


AIで人間が超能力者に??

まず、ちょっぴりSFチックな話題から。

週プレNEWS脳にAIがアクセスすることで拡張する7つの能力について紹介しております。

〈週プレNEWS / 2024年1月2日〉

神経科学者・金井良太先生と、東大准教授・渡辺正峰先生が、未来の展望を大胆に予測したものがこちらです。

【1】手を動かさずにメールに返信
【2】ロボットアームを動かす
【3】記憶力を高める
【4】念じるだけで会話ができる
【5】脳からネットにアクセスする
【6】脳同志をつなぎ感覚を一瞬で共有する
【7】意識を機械にアップロードする

…まず、前もってお伝えしておきますと…、これらの項目が当たり前の風景になるには、技術的にも、コスト的にも多くの壁があることは両先生も指摘しております。

さらに、倫理的な問題も見逃すことはできないでしょう。

その上での話になるのですが…

ざっくり言うと「念力(で何かを動かす)」「テレパシー」といった “超能力” のようなイメージですね😊

そして、この能力拡張のポイントになるのが「BMI」(ブレイン・マシン・インターフェース)になります。

BMIが人間を救う

BMIとは、脳波などの脳活動を利用して機械を操作したり、カメラ映像などを脳への直接刺激によって感覚器を介さずに入力することが可能になるというもの。

2種類あって、1つは頭の外からアプローチする「非侵襲」型

そしてもう1つは、頭の中に電極を入れる「侵襲」型です。

後者の侵襲型といえば、イーロン・マスクさんが共同代表を務める脳科学スタートアップ「ニューラリンク」が昨年、デバイスを人の脳に埋め込む臨床試験の承認FDA(米国食品医薬品局)より取得しています。

えぇぇ??デバイスを脳に…う、埋め込む…??

…と、怖い想いをされた方もいらっしゃるはずです…(汗)

…確かに「BMIによってAIが人間を支配される」という説も世の中にはあります…

…一方で、視覚や聴覚を失った方が、カメラやマイクと脳をつなげて感覚を回復したケースや、記憶を司る部位である海馬を刺激することで認知症の方を救う技術にもなるのです。

また、【2】ロボットアームについても、侵襲型であることで操作の自由度が上がり、モノに触った感覚も得られるので、本物の腕に近いイメージとして活用することができる。

BMIが「人を救ってくれる」という側面も当然あるのです。

もちろん慎重に開発を進めるということは前提にしつつ、今後どのように社会実装されているかに注目が集まるところでしょう😊

「AI同僚」が生まれる日

「人を救う」ということでいえば、最近、興味深いと思った記事がNTTデータIBMが共同で開発中の「デジタル従業員」です。

〈ZDNET / 2023年12月11日〉

こちらは保険業界向けに、人間の意図を理解したAIソフトウェア人間に変わって業務を行うというもの。

”仮想同僚” というわけです。

保険業界では、労働人口の高齢化高い離職率で営業職員の人材不足が課題になっていると言われています。

こちらの技術が実装されれば、人間の従業員と会話をしながら人間の意図を理解し、業務目的に応じた最適なツールを選択して、代わりに業務を自動的に実行してくれるようになるのです。

特徴として、2社は以下の3つの項目を挙げています。

(1)
標準的な保険商品や事務手続きに加え個社に特化した情報も人に代わって機械学習できる
(2)
優れた営業プロセスをモデル化した上でサジェストユーザーの行動変容を促すことができる。
(3)
短期記憶により直前の指示を踏まえてユーザーの性格など個人の特性に合わせたサジェスチョンができる。

こちらは、2024年度以降国内の生命保険、損害保険の企業への実導入を目指しているとのこと。

もしも成功すれば、省人化が求められるこれからの社会にとって大きな一歩になるでしょう。

AIが立法の世界に進出??

最後は政治の世界で賛否両論が巻き起こったトピックをご紹介して締め括りたいと思います。

何と!ブラジルポルト・アレグレで、ChatGPTが生成した条例案が市議会を通過するという出来事があったのです…

〈JBpress / 2023年12月7日〉

案を作成し、市議会を通過させたのは、中道右派政党のブラジル社会民主党に所属するラミオ・ロサリオ市議会議員

なぜ、ChatGPTを使ったかと言いますと…

地方議会の議員や行政職員の人手不足に対して、「テクノロジーの力が救うのではないか?」と思ってからだそうです。

…ただし、ロサリオさんもただ大きなトラブルになることを回避するため、「シンプルで、論争の的になるような問題を避けた法案」で行うことを決めたとのこと。

その法案というのが「水道メーターの盗難時についての所有者の保護」

水道メーターが盗まれた場合、その所有者(メーターが測定する水道の利用者)が交換費用の負担を要求されることが多かったそうです。

ただ、この処置に対する不満は大きく市の水道排水局(DMAE)が負担をすべきでは、という意見がありました。

そこで、この問題を解決すべく、250字の簡単なプロンプトを入力して、ChatGPTに「盗難された水道メーターの費用を所有者に請求することを禁止し、DMAEが負担する」条例案を出力させたのです。

こちらが、その条例文(翻訳版)です。

第1条 1987年12月31日付補完法第170条およびその後の改正に含まれる第20条のAは以下の通りである:
第20-A条 盗難が発生した場合、水道メーターの交換費用をサービス利用者に請求することは禁止されており、DMAEは新しい機器の設置および維持にかかる費用の全責任を負う。
第1項 本条を遵守するため、サービス利用者は水道メーターの盗難を直ちにDMAEに通知し、何が起きたかを記録するために必要なすべての情報を提供しなければならない。
第2項 DMAEは、盗難の通知を受けてから30日以内に水道メーターの交換を手配しなければならず、前述の期限を守らない場合、消費量の測定がない期間の料金を請求することは認められない。
第3項 DMAEは、使用者が盗難防止のための適切な安全対策を怠った過失が証明された場合にのみ、水道メーターの交換費用を請求する。
第2条 この附則法は、公布の日から施行する。

JBpress /小林啓倫氏 翻訳

翻訳した経営コンサルタントの小林啓倫さんも指摘されている通り

「盗まれた水道メーターを市が交換する期限を30日間とする」
「その期限が守られない場合、所有者の水道料金の支払いを免除する」

といった規定は、…なかなかのものです…(汗)

この条例案は委員会を通過。

本会議においても全会一致で可決され、施行されました。

そして6日後、ロサリオ議員がChatGPT利用を公表したのです。

これに対し、さまざまな意見が飛び交っているわけですが…、しかしながら…、地方行政の人手不足という問題は立ちはだかってはいます…

…しつこいですが、倫理面などを考慮しながら、そして活用法を慎重に練りながら、AIの力をどう借りるかということは前提にしつつ

これをきっかけに、今後の人手不足を解決を考えるヒントにはなったでしょう。

〜というわけで、AIの活用次第で救われる世界もある。

そんなことを改めて思う今日この頃です😊

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