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哲学のかけら

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哲学も少しはかじっています。なにもそんなこと考えなくてもいいんじゃない、と言われるところも、でもさ、と考えてみる、それが哲学。独断と懐疑に終わらずに常に自分の至らなさを認めるあた…
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2021年7月の記事一覧

『哲学の女王たち』

『哲学の女王たち』

(レベッカ・バクストン+リサ・ホワイティング編・向井和美訳・晶文社)
 
正直、私もひたすら頭を垂れるほかない。女性哲学者の名を挙げてみよ。片手の指にも満たないのだ。情けない。本書から刃を突きつけられているまさにその一人となってしまった。
 
ここには20人挙げられている。徹底的にフェミニズム精神に満ちた本、というような先入観をもつ人には、「まえがき」で先制攻撃が始まる。プラトンの『国家』に女性の

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法

中学で生徒会役員をしたとき、それはどこか「ごっこ」めいていたと思う。何かしら事務の手続きを覚えるための練習の場のようなものだった。事務レベルで何をするか、それを総会という建前の中でどう営むか。いろいろ教えてもらった。
 
それでも、生徒総会で、靴下のライン数についての校則を変更するに至ったのは、ひとつの成果であったかもしれない。規則を変えるにはどういう手続きが必要なのか、学んだ。
 
ブラック校則

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自由のパラドックスを意識しよう

自由のパラドックスを意識しよう

百年も遡るまでもなく、かつては親の仕事の「あとつぎ」という生き方が、当然のことのように考えられていた。もちろん例外もあるし、人それぞれでもあっただろうが、言いたいことは、子どもに向かって、「君のなりたいものになれ。君が仕事や人生を選ぶしかないのだ」というような「空気」が、今や常識のように思われていないか、ということだ。
 
つまり、ここには「自由」が前提されている。「自由なんだから」、自由を使わな

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『老い』(ボーヴォワール・100分de名著2021年7月)

『老い』(ボーヴォワール・100分de名著2021年7月)

関心のない人には気持ちが向かわないテーマかもしれないが、高齢化社会となっては、関心のある人のほうが多いだろうとも言える。しかも講師が上野千鶴子氏。女性問題についてのみならず、社会問題への発言力からしても、最高度のレベルを提供してもらえそうな期待ができる。これを「過激」だなどというと、むしろ、ではあんたは何をしているのか、と問われそうな気もする。
 
ボーヴォワールに戻ろう。そもそもボーヴォワールが

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