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【子ども時代のちーちゃん③】「好き」の気持ちは、女の子として?男の子として?

このnoteでは、女の子として生まれ、「ちいちゃん」と呼ばれて育ってきたかつての自分。男性として生き、「たっくん」と呼ばれ、福祉の専門家として働いている今の自分。LGBTQ当事者として、福祉の現場に立つ者として、「生」「性」そして「私らしさ」について思いを綴ります。(自己紹介もぜひご覧ください)
このシリーズでは、「ちいちゃん」という1人の女の子の成長を振り返ります。幼少期から思春期を経て自立の時を迎える中で次第に大きくなっていく心と体の性の違和感についてお話しします。

小学校4年生の時の「青い靴事件」で、「女の子だからという理由で、青い靴を履けないのはおかしい」「女の子とか、男の子とか、そんなこと関係なく、自分が好きなものを選びたい」と心から思いました。そして、この事件をきっかけに、私は「自分の好きなこと、したいことはもっとはっきり言おう」と思うようになり、実際に行動で表すようになりました。だから、伸ばしていた髪をバッサリ切ってしまいましたし、母親が好んだフリルのついたかわいい洋服よりも、ジーンズやポロシャツなどを選ぶようになりました。

とはいえ、自分の身体的性別と性自認(自分の性をどう認識するか)について、悩むこともまだありませんでした。私が、身体的性別と性自認の違和感に苦しめられることがなかった理由の一つに、もしかすると、小学校当時の友達との関係があったのかもしれません。とにかく、仲がよかったんです。男女の区別なく、いつも一緒になって遊んでいました。私が、髪の毛を短く切っても、ズボンばかり履くようになっても、一般的には、男の子が好むような体を動かす遊びに夢中になっていても、だれからも「ちいちゃんは変だ」などといわれませんでした。「それがちいちゃんだ」として受け入れられていました。

でも、少しずつ私の内面に変化が現れます。性に関する興味・関心です。

小学校4年生の時に、どうしても「エッチな本」が読みたくなり、大胆にも、自宅の目の前の商店で購入しました。お金は、同居していたおばあちゃんにウソをついて、お小遣いをもらって。そのときの細かいやりとりもよく憶えているので、私にとっても印象に残る大冒険だったのでしょう。

念願の「エッチな本」を部屋に持ち帰った私は、写真の女の子と同じように、ポーズをとりました。その時、私は、「エッチな本」の中のなまめかしい姿態の「女の人」に対して興奮していたと思います。

でも、夢中になれる時間は短いものでした。母親が部屋に入ってきたのです。母親はビックリして「何してるの!」と声を上げました。私はそれはもう慌てふためいてしまい、「さっき道で拾った」とウソつきました。「興味があったから買ってきた」とはさすがに母親には言えません。

ただ、興味があったのは本当だけど、その興味が何なのか、単に同性の大人の女性の体に関心を持ったのか、それとも女性として同じ女性に性的興味を抱いたのか、あるいは違った感情だったのか、自分でも理解してはいませんでした。

小学校5年生か6年生のとき、学校で性教育の授業がありました。私が通っていた小学校は今思うと先進的で、同性愛についても授業で取り上げていました。私は、「女の子に興味があるということは、自分は同性愛者なのかも」と思いました。でも、なぜかそれはしっくりきません。私は同性愛者なの?と自分に問いかけるたびに、「そもそも自分は女じゃなくて、男なんじゃないの?」という別の考えが大きくなっていきました。体は明らかに女の子なのに。

中学校進学が近くなるころには、「自分が好きになる対象は女の子」だと自覚するようになりました。でも、それは他人には知られたくない秘密でした。知られたくなかったのは、女の子を好きになるということ以上に、「女の子の自分」が女の子を好きになることでした。なぜなら、日に日に私の中に「自分は女の子じゃない」という思いが強くなっていたからです。女の子じゃないのに、「女の子でしょ?」「女の子のくせに!」と言われるのがとてもとてもつらかったのです。

それでも、私の性自認は、そのあとも揺れ動きます。「実は自分は男なのではないか」と強く思うときもあれば、「でも、身体は明らかに女なのだから、やっぱり女なのかな」と思い直すこともありました。「身体が女性なのだから、女性として生きていくしかないのだろう」という諦め、「しょうがないのかな」という気持ちとその後も長くつき合うことになりました。

だから、20代後半にGID(性同一性障害)外来を受診し、性同一性障害という診断を受けた時は、「やっぱりそうだったんだ!」とすべての謎が解けたような思いがして、心からほっとしました。カウンセリングを通して、幼少期から思春期、青年期と振り返る中で、「自分は男性として、女性を好きになっていたのだ」と初めて自分を理解したのです。

次回も、思春期まっただ中のちいちゃんについてお話しします。

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