鈴木瑛大

写真家 / 月がぽんとでりゃ星がぽこ /

鈴木瑛大

写真家 / 月がぽんとでりゃ星がぽこ /

マガジン

  • 気まぐれエッセイ「日々、」

    趣味でぼやきを書き連ねる。ナイスサーティーズな写真家による、雑多な世界の、雑多な人生の、雑多なエッセイ。

  • 東京で考えた事たち

    東京個展で滞在中。考えたりしたことのまとめです。

最近の記事

「日々、」#12 揚げ茄子と光の箱

この前、バイト先で揚げ茄子を丼の上に並べるときに「三角に並べて!」と急ぎ気味で言われたことがあった。 私の脳内では突如として月刊ムーも万歳な脳内会議が行われてしまい、ピラミッドな三角なのか、バミューダトライアングルな三角なのか。私はそんな迷いを抱えてしまい、揚げ茄子を三角に並べることはできなかった。 そんな頭であるから、「エモい」という言葉も正直よくわからない。 二十代とは言えど25歳。ナイスサーティーズな二十代なものだから、おそらく僕らの世代は「エモいを説明できる組」と

    • 「日々、」#11 空と僕らの間には

      なんだかやけに暑い北海道に、東京の専門時代の友人が北海道に旅行に来てくれた。 昔話やら近況やら、久々に長距離の運転の中で。そんなことをしていたら、秋が北海道にも遅れてやってきた。 聞いたところによるとみんなどこかで、見えるところや見えないところで頑張っているようで。 僕も少しは頑張れているだろうか。と少し考えたが、12月の個展の頃よりもこの先のやりたいことを具体的に人に話せる自分に気がついて。 あぁ、とりあえず大丈夫みたいだ。と、少し安堵した。 明日からもまた、何かと

      • 朝日の中へ

        太陽の周りを地球は回っている。これはおそらく真実だ。 しかし、僕のたっている地球からは、太陽は東から上り、西に沈んで見える。これは真実ではないのか、と言われるとそうでは無い。これもまた真実であると考えられる。 観測地点によって真実は変化する。宇宙にいれば地球は太陽の周辺を回るし、地球にいると東から上り西に沈む。 最近は、あらゆる学問の発展で観測地点が多様化されすぎてしまい、観測地点の違うもの同士が自分が真実だといい、相手は間違いだという。 そこから争いが生まれ、平和は作られ

        • 「日々、」#10 鉛筆を削るように

           6月、北海道は初夏とも春とも感じられる季節だった。 僕の学んでいる大学の科目でデッサンがあり、通信ゆえ本来は一人で動画を見て取り組むものなのであるが、せっかくなので画家として活動しているパートナーを呼んで鉛筆の削り方から何から、マンツーマンで教えてもらうことにした。 デッサンを体験したのはおそらく高校とか中学とかの美術の授業で、本格的なデッサンはおそらく初めてだった。 今回のデッサンは納得するまでモノを見て見て描いて描いて。 三日間ほぼ引きこもって描き続けた。 最初

        「日々、」#12 揚げ茄子と光の箱

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        • 気まぐれエッセイ「日々、」
          11本
        • 東京で考えた事たち
          3本

        記事

          「日々、」#8 ひこうき雲、白い蝶、

          あの頃の誰かに会おうと思って日々生活しているけど。 それでも後ろを振り返ればドアは閉まっていたりする。 身近な人に会えなくなるとそれはもちろん寂しくはあるのだけど、どうやらその人はその人らしく汽車に乗ったらしく少し安心した。 白いひこうき雲を見ると昔飼ってたハムスターだと思ったり。春のモンシロチョウを見ると祖母が来たと真面目に思っている。 それは何度も離れてしまった人にばったり町で会う感覚で。 最近いかが。僕はぼちぼちだわ、と。 大体そういう時は写真撮ってるのでカメラを

          「日々、」#8 ひこうき雲、白い蝶、

          「日々、」#7 どうやら、春らしい

          春らしい。 快晴の日、一つの打ち合わせと母の車のタイヤ交換を済ませ。ちゃんとタイヤ交換ができているかの確認も兼ねて農業用の溜池まで車を10分ほど走らせる。 町の中では桜が満開で。子連れが公園で遊んでたりしているのを横目で見ながら信号を待つ。カーステレオでは矢野顕子が「ひとりぼっちはやめた」を歌っている。 チンタラと走っていたらスポーツカーが追い越していく。丁寧に磨き上げられえた黒いボディには街路樹の桜が写し出された。まあ、こんな気分も悪くないと思いながらマイペースで進ん

          「日々、」#7 どうやら、春らしい

          「日々、」 #6 頬の風と、春の光

          もう5年以上前の、あれは確かな春だった。 その春に似た風の温かみが、今の僕の頬を撫でていた。 天気予報士がテレビの向こうで桜前線を追いかける日に、遅くなったけど僕は重い腰を上げてみて、若干の病み上がりの首をさすりつつ、数年ぶりに読めるようになった本の山を押し出した。 書類に必要事項を書き込んで明らかに出遅れていて締め切りギリギリの簡易書留を速達で送った。 つい3日ほど前、僕はとある通信制芸術大学の願書を提出してきた。 長かった体調不良がだいぶ改善されたため、学びたい気持ち

          「日々、」 #6 頬の風と、春の光

          とある写真家の視覚の話

          いささか長い文章になるとは思うが、この際お付き合いいただければ幸いである。 三月から四月、というのは本当に僕にとっては過酷な季節であった。 割と高校前半ぐらいまでは平気だったものの高校後半ごろか。僕は春が近づくと首とか腰とか。あるいは自律神経がやられて寝たきりの状態になっていた。ひどい時には食事も取れなかった。はじまったのは高校三年生の頃からで当時は抑うつ状態と診断され、学校には春ごろには行けなくなっていたし、進学した専門学校も春には中退した。 僕は元々、中学まではものす

          とある写真家の視覚の話

          「日々、」 #5 写真の人

          僕はテクテク、神出鬼没で年齢不詳なのである。 なかなか皆さんの周りには「今どこに住んでいるかわからない。」という人はいないと思うが、僕はよくそう思われてしまうようで、東川町に住んでいながら札幌とかから仕事をもらうこともあるし、バイトしてるのは旭川だったり、はたまたおそらく来月から二ヶ月くらいは西日本へとなんとなく出稼ぎに行く予定だ。 この前、近所の人に「今は東川に住んでますか?」と聞かれた。いや、住んでるって。散歩もしてる。 んまーしゃーないなー、と思う。地元で仕事があ

          「日々、」 #5 写真の人

          GRという写真機

          珍しく機材ネタである。 作品制作には僕はRICOHのGRlllと先日手に入れたGRlllxというカメラをここ最近使用している。 基本的にあの謎エッセイに載せている写真はGRで撮ったもので、GRシリーズとは高校2年ぐらいにお年玉で買ったGR digital IVからの付き合いなので8年近い付き合いとなる。学生時代、ストリートスナップをバリバリに撮っていた頃は大活躍した。 僕はいつもGRを「身体に応えてくれるカメラ」と友人知人に言っている。 GRシリーズといえば1996年の

          GRという写真機

          「日々、」#4 深川というところ

          展示の搬出のため深川に向かった。 深川は僕の住む町の二つ隣の町で、車で一時間ほどのところにある。 実はこの数日後また首を痛めて寝込んでいたので4日ほど前のこととなる。 僕は実はこの深川の街並みが結構好きで時間とってうろうろしたいなと思っていた。 麻婆豆腐がうみゃーな中華料理屋さんに入り「お時間いただきますよ」と一時間ほどして出たのはうみゃーな麻婆豆腐だったな。 人口2万人ほどの町だが道路を横断していくのはみんな爺婆で70は超えてるだろうという感じだった。滑んなよ、と見

          「日々、」#4 深川というところ

          気まぐれエッセイ 「日々、」#3

          冬だなと思う。春は消えてしまったのかなと思う。 そういえば、午前中のうちにやること片付けたくて犬の散歩が遅くなってしまった。 なぜ遅れたのかというと僕はノーコーディングながらも仕事とかでWebサイトを作るのだがそれについての手順とか、全部感覚だけでやってきたのでちゃんとWordかなんかに書き出そうと思ってマニュアル化したのである。 これで作業の中で何か抜けたりはないだろうし、完成してみたら逆に今までよくマニュアルなしにやったなおい大丈夫か。と思ってしまうのである。 とい

          気まぐれエッセイ 「日々、」#3

          気まぐれエッセイ 「日々、」 #2

          僕のこれからの写真について書いてみよう。 今日、川の方が白かった。川霧というやつだ。 冬のこの時期、河川敷に行くと樹氷なんかが出て「キレイダナー」という風景が広がる。 朝早く出かけた時なんか橋の上なんかにでっけえカメラとレンズを引っ提げた人たちをずらっとみることができる。 僕はというといささか肉眼に焼き付ける興味はあるものの写真に焼き付ける興味はなく。その辺が人とズレてるなと。よく思う。 「んなもん撮ってもしょうがないだろ」という気持ちで撮りに行かない訳ではない。そこ

          気まぐれエッセイ 「日々、」 #2

          気まぐれエッセイ 「日々、」 #1

          北の朝はとにかく寒く、体調を崩しやすい。 特に僕なんかは体は細長くて腰を痛めやすく、首も長めなので痛めやすい。 そんなだと僕は今までフルタイムで働けたことなどないし、なんだか、社会で生きるのに不利な体で生まれてきてしまったなとつくづく思う。(アルバイトの求人とかに応募すると健康上の理由で大体断られるのは悲しい。) フルタイムで働けないからといって、本当に何も得意なことがないというわけではない。 Photoshop、Illustratorは使えるし、premierも多少使え

          気まぐれエッセイ 「日々、」 #1

          僕と首との最小公倍数

          ここ数日、首が痛い。 つい一昨日まではほんとに吐き気がするぐらいに首を痛めていて、ようやく今日になって座れるように。 整体に2度にわたって通い詰め、やっとそれなりに動けるようになった。 おそらく原因といえば、むかしむかし顎の骨を骨折した時のむち打ちのようなものが冬になって出てきたのだと思う。 考えてみると三月で25歳。本厄を乗り越えて後厄であるが、古傷が痛むというのはこれは一種の「老い」かもしれないと思う。 以前の体であれば3日も寝てれば大体のことは寝てれば治ったが今

          僕と首との最小公倍数

          卒業、そして僕らが旅に出る理由。

          6回親指でライターの火花を散らしたが、火がつく気配はなかった。 僕はタバコを吸うのを諦めて、ベランダの机に置いてあるロックの麦焼酎に手を伸ばしてそれを少し口に含み、喉にお迎えして月を眺めた。 終わったよ、と一言だけ月に告げて。 つづかない。たぶん。

          卒業、そして僕らが旅に出る理由。