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【参考にならない滋賀・京都旅】船上で洗濯板を削り、速くてデカい人になる1日

まずい。
旅に出るというのに眠れない。眠れないことにさらに緊張がぴきりと高まり、胸の上の方がドキドキしてくる。

結局、3時半を過ぎた頃に眠るのはあきらめ、アマプラで「ヒロシのぼっちキャンプ」を観る。日帰りにするか泊まりにするか悩んでいたが、帰ってくる力が残らないのではと案じ、布団の中で宿を手配する。

動画で山梨の鳥がちゅんちゅん囀っているかと思いきや、現実の早起きな鳥が外で囀っているのであった。部屋にじんわりとスローペースで光が届き始め、それにつられて巨体をじんわりと布団から抜く。結局一睡もできず、滋賀に向かうことになってしまったではないか。はっはっは、実に愉快だ。

歯を磨き、お土産でもらった愛媛銘菓一六タルトを1切れかじる。スノーピークのシングルマグに牛乳を注ぎ、流し込む。キッチンの細窓から外を見るが、レースカーテン越しで白を足してもなおほの暗い。

今日出会う友人へのおもたせをちゃんと持ったことを指差し確認し、そーっと玄関の引き戸をずらす。

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朝。いい雲だ

そもそも激早の出発を予定していたが、眠れないことによりさらに出発は早まる。結局始発で向かうことにした。外灯はまだ仕事を終えておらず、私だけが歩く道を力無く照らしている。早く正式に朝が来ることを望んでいるかのようだ。見上げたその向こうには白みがかった空があり、細かい雲が流れている。

出発

まずは、大阪を目指す。旅に引き連れていくには厄介なおもたせのため、友人の自宅近くで一旦手渡し、家に置いてもらってから旅をはじめることにした。

おもたせ内容はらっきょうの甘酢漬け、梅のスパイス漬け、梅塩麹、煎り酒のバラエティセットだ。ぼてっとしたおじさんから送られる涼やかな季節の便り。これはきっと喜ぶぞ。

涼やかなセット

旅をはじめる前に力のつくものを食べておかねば倒れると思い、尼崎で途中下車。駅前の松屋に寄る。睡眠不足を補うために大盛りを食べるべきか思案したが、並盛の牛めしとすべりをよくするための生卵を注文。あまり時間もないのでドゥルルルと流し込む。

松屋の後、間違いなくこのあたりの駅で最も横長の駅に辿り着き、スチューデントに紛れて改札に向かう。友人を見つけ、改札ごしに季節の便りバラエティセットを手渡す。らっきょうや梅が改札の鉄柵上を通過したのははじめてではないだろうか。

ダーリンにチャリで駅まで送ってもらったという彼女。30を越えてチャリのニケツとは。楽しそうだ。

駅の椅子でしばし魂を抜いて呆然と佇み、駅に舞い戻った彼女とともに滋賀を目指す。

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山科で京阪に乗り換え、びわこ浜大津へ。まずは、「ミシガン」に乗船する。

大津港。旅気分が高まる

船上でもスタッフの方に言われたが、本屋大賞を受賞した「成瀬は天下を取りにいく」などにも登場したことで、大津やミシガンは聖地化が著しいようだ。(たぶん自分が好きなタイプではないと思いつつ、本屋大賞ということでオーディブルで聴き済みでした)

少し早く着いたので、港にある「Bird Cafe」でお茶。季節の便りバラエティセットのお返しにスコーンとアイスラテセットを奢ってもらった。ラッキー。断るそぶりを微塵も見せずにストレートに奢られる。久しく嗅いでいなかったが、焼きたてスコーンの香りがたまらなく好きだったと思い出す。

おいしいスコーン。ちょっと自分で焼きたくなった

あんなにもしあわせそうな香りがするのに、食べると素朴で甘さ控えめなところも好きだ。時折パサパサのスコーンに出くわすこともあるが、ここのスコーンは当たり。港に内蔵されたカフェということであまり期待していなかったが、おしゃれで琵琶湖も眺められて、スカッとしている。

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名古屋から来る友人とも滞りなく港現地集合を果たし、予約しておいたミシガンのチケットを買いに向かう。友人はキャンプで手首を虫に刺され、ガーゼを巻いての登場だ。ガーゼが風にはためき、壊死した患部が垣間見える。貼りが甘いぞ。

乗船料3,000円は痛手ではあるが、前日に臨時収入で8,000円入手していた私には蚊に刺されたようなものだ。友人みたいにブヨに刺されたようには腫れ上がらない。実家の外構をやり直していて、門扉も取り替えたのだが、親父から「これ金属買取に持ってってみるか?」と言われて試しに持っていってみたら8,000円に化けたのだ。

対応してくれた人が、これまで私が出会った中で類を見ない高圧コリアンおばさんで、手振りでこっち来い早くあっちいけと指示されたのには閉口したが、8,000円もらったらこっちのもんだ。しかも私が訪れると詰所からキンパを丸ごと1本持って現れたというエピソードも入手したので、全然いい。キンパって恵方巻きみたいに丸ごと食べるの?やはり韓国方面を向いて食べるのだろうか。

なかなか渋い出来。いいんじゃない?

名古屋から来た友人はもうすぐ東へ引っ越してしまうので、餞別を用意した。自作の薪バサミである。自作で愛を込めた振りをして、シンプルに金欠気味なのである。8,000円は得たが旅で消えるし。

セリアで買ったスコップとアマゾンで買った練炭バサミを加工し、500円程度で作った。それを黙っておけばよいものの、伝えてしまうのが私である。

せっかくキャンプギアをあげたのに、虫に刺されて辟易している彼には重荷になっただろうか。この先も懲りずにキャンプに向かうことを祈る。

↓自作過程をブログにまとめました。

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ミシガンゲート。愉快だ

ミシガンに乗船し、諸々説明を受ける。出航の合図にドラを鳴らす儀式があり、やりたい人を募られたので、はいはいと手を挙げたら体の大きさで順当に選ばれた。我がドラ3発で大船を動かすのは気分のいいものだ。

ミシガンからの琵琶湖。広大である

港を出たら、琵琶湖を北上していく。暑くなる予報だったが、まだ日差しは強くなく、風が心地いい。屋上には琵琶湖を持ち上げられるトリックアートなどもあって嬉しがってやる。

もう何を話したかは忘れてしまったが、持参したオペラグラスで景色を回し見ているうちに時はあっという間に過ぎていった。

迫力あり

室内に戻り、ショーを楽しむ。劇的な感じかと思ったら歌のショーで、腹に響くいい声で歌ってくれた。途中楽器を渡され、みんなで演奏するというセクションがあったが、私たちが渡されたのは洗濯板とスプーン。これでギロのように音を奏でろというのだ。

別の船ビアンカ

昔は遊びに行っても全然楽しそうにしていないと時折言われた私だが、おじさんになってからは尖りが減り、子どもに戻ったようにとても楽しむ。洗濯板の削りかすを足元に置いたリュックにびっしり纏わせるほど必死で音を鳴らした。

きっとナイス演奏のご褒美なのだろう、私は風船の剣をもらい、友人はハートをもらった。

ミシガンという名が似合うミシガン
ミシガーン

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ミシガンを降り、広場にて白昼堂々もらったバルーンの空気を抜く。身も蓋もない奴らだと思われそうだが、このあとの予定はサイクリングなんだもの。白昼堂々と書いたが実際はコソコソと、子どもたちに見られないように割らないようにそーっとそーっと空気を抜いた。バルーンをくれたショーマンたちにも申し訳ない気持ちでいっぱいなんだ。

港にもレンタサイクルはあったが、少し値段が高めだったので、大津駅にある観光案内所的なところで自転車を借りた。15分ほど駅まで歩く。その途中に有名な三井寺の力餅の店舗があったので、抵抗の余地なく立ち寄る。

これはなんだか変哲ないと思わせてとてもうまい。

友人2人は力餅と抹茶のセット、私は力餅に抹茶ソフトが添えられたものを注文。とても柔らかくて、きなこもしゃりしゃりと歯触りがよく、妙にクセになるおいしさだった。

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自転車を予約していたが、実物を見て私たちが乗ってよいものなのかという不安に駆られる。名古屋の友人と私は同等にデカいので、華奢な電動自転車は耐えられないのではと思ったのである。保険で3台のうち1台はクロスバイクにしていたのだが、男は2人ともクロスバイクにしてもらった。久々の自転車で琵琶湖に繰り出す。

走り出してそれほどたたずに、何か食べておかないと熱中症やハンガーノックのリスクが上がるぞというそれらしいことを宣い、軽く何か食べようと提案する。実際は昼に餅しか食べていないからちゃんと食べようよ旅なんだからということだ。

このカレーはコク深くてうまい

らっきょう彼女がバタートースト、虫刺され名古屋がサンドイッチを頼むなか私はショコラレッドカレーなる甘辛ネーミングのカレーをチョイス。午前中はやや曇り気味だったが、今は青空と琵琶湖が画角を二分する琵琶湖らしい風景が目の前に広がっている。

これぞ琵琶湖の風景。気持ちいい

カレーはコク深く、好みだ。らっきょう彼女は食が細くなってしまったのか、バタートーストを少し分けてくれた。レッドに染めてパクりと食べた。

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サドルを包むように両端に尻肉がはみ出しているのを感じつつ、軽快に走る。太っていて遅いなら順当にバカにされるだけだが、私は太くて速いので、さらに笑いが乗っかってしまう。実際に声に出してバカにされたことはないが、それが気になってロードバイクを手放してしまった。

近江大橋からの琵琶湖

いつも虫刺され名古屋とキャンプをする湖岸緑地を通る。いつもは車で行くが、自転車で苦労して訪れるとまた見え方も違う。このあたりでもう自転車はお腹いっぱいだったが、さらに先を目指す。

Google mapで調べたところ7kmほどと表示され、往復15kmはかなりちょうどいいなと思っていたが、実際には片道15kmほど走って目的地の「ストロベリーファクトリー」に到着。私が提案する距離ものは大体実際はその倍の距離があるのだ。気をつけろ!

涼しげクリームソーダ。うんま

中に何個かお店が入っていて、私は「Uluru」という店で檸檬のクリームソーダを注文した。いちご目当てだったけれど、暑さと疲労で枯れ果てていたので、より爽やかかつ好物のレモンにしてしまった。

一口飲んだときはぬるいなと思ったけど、ゆっくり飲んでいくとさわやかなクリームが溶け込んで、かなりおいしい。クリームになんだろう綿菓子っぽい何かを感じた。

帰りはもう早く帰りたくて、茂り草にチュンチュンと体が当たっても気にせず一心不乱に漕ぐ。約1時間で大津駅に戻り、汗だくで自転車を返す。酸い服を脱ぎ捨て、四条へ向かう。ノー睡眠でここまでやり切れたことに安堵する。もう倒れたっていいだろう。

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疲労困憊だし、皆のもうサクッと帰りたいというオーラを感じ取り、駅から一歩も出ずに行ける居酒屋をチョイス。もう10年近く前から気になっていて食べログの行きたいリストに保存されていた「輝庭」だ。思いがけずリニューアルされたてぽい。花が出まくっていた。

もはやなんか大体ぼけてしまった。はも天
もはやなんか大体ぼけてしまった。刺し盛り。

はもの天ぷら、刺し盛り、生麩田楽などを楽しむが、何より1杯目の翠のソーダ割りがうますぎる。だって翠は今飲みたかった飲み物ランキング1位だったから。さわやか。

いつだってこの人たちと飲んだときの話はほとんど中身がないので、何を話したか覚えていない。そんなのでいいのだ。

まだ20時ごろだったが大人しく解散。皆きっとよく眠っただろう。

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鴨川カッポー。こんな隙間なく並んでたっけ?

皆と別れて宿を目指す。1月の京都一人旅ぶりのルーマプラザ。烏丸から京都河原町の1駅電車に揺られ、まだ何かを食べてやろうかとギラギラあたりを見て回る。

しかし、あまりの外国人観光客の多さと外国人観光客ナイズされてしまった飲食店に疲弊し、すっかり立ち寄る気が失せてしまった。どうもここまで来ると落ち着かない。あたりをぐるりと回って、大人しく常宿に身を寄せた。

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とにかく早く汗を流したい。ベタつく服を引き剥がし、浴場へ向かう。ノー対策でサイクリングに繰り出してしまったので、日焼けがひどい。シャワーを冷水寄りにセッティングして頭体を洗う。気持ちよすぎる。水風呂に浸かってさらに火照りを抑え、外のインフィニティチェアで目を閉じる。街の喧騒が嘘のようにここは思いの外静かだ。混んでいるわけでもない。最高だ。

もう風呂に入ったら、そりゃもうねぇ。当然腹もリセットされてるよねぇ。5Fにあるレストランに繰り出し、電子パネルでメニューを吟味する。

今食べたい感じのものを見つけた。バンバンジー風冷麺。どう考えても今このさっぱりしたの食べたいだろ。居酒屋は意外とさっぱり系が少なくて、こういうのが食べたかった。

バンバンジー風冷麺

酒はもうよかったので、カルピスとオロナミンCをブレンドしたオロポスを注文。唐揚げ1個というのがあったので、そりゃ頼むでしょう。だって1個なんだから。ルーマプラザはやはり私の味方だ。

唐揚げとオロポス

あとはもう私でもゆったり入れるカプセルに体を収め、ぐうすかと眠るだけだ。楽しい1日だったなぁ。太っている割にはアクティブに動くのがやっぱり好きなんだな。

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朝は7時ごろに起床。まずは朝食会場に向かう。ビュッフェだビュッフェ。

いい朝食。おいしすぎないこういう普通のが好き

冷奴や納豆、温玉、そば、酢鶏、角煮など。どれも普通なおいしさがうれしい。もりもり食べる。家では朝はバナナヨーグルトしか食べないが、こういうときはもうそんな縛りは取っ払ってたくさん食べたい。

暴れるカレー

カレーもあるので食べる。角煮や白身フライや納豆などをぶち込んで暴れる。あんなに涼やかな季節の便りを贈った男とは別人のようなごちゃ混ぜ感である。

昨日は酒を飲んでいて、サウナは楽しめなかったので、ゆっくりとサウナに癒される。しかし、まだ9時ごろなのに外気欲は日差しが強くて暑い。日陰でゆっくり過ごしながら、満喫した。京都の街を一望でき、清々しい。

ルーマプラザ入り口

チェックアウトが12時なのも最高。サウナの後、カプセルでゴロゴロと過ごす。普段はなんだか生き急いでいて、ゴロゴロしていると罪悪感に苛まれる私だが、12時チェックアウトということでゆっくり休むことを正式に許された気分になり、ちゃんと休めた。

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昼の鴨川
東華菜館。一回行っときたいな

やはり寝不足の影響か、なかなか体のだるさを感じていたが、いざチェックアウトして歩き出すと、ぐんぐん元気になってきた。もう特に何も食べたくない気分だったが、急に腹が減ってきた。

とっとと帰ろうと思っていたが、方向転換し、木屋町を三条方面へ歩いていく。

涼しげ
趣ある店構え

たどり着いたのは博多長浜らーめん「みよし」。大学時代に頻繁というほどではないが時折訪れた思い出の店でもある。旅に出る前から急に行きたいかもという気持ちになっていた。この雑多な雰囲気にセンチな気持ちが高まっていく。

大鉢がなんかいい

シンプルにラーメンを注文。これこれ、妙に直径の大きな鉢。れんげでスープを掬って一口飲めば、謎の甘み。そう、こんなんだった。洗練されたうまさよりもこの不可思議なうまさがぐっとくる。

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帰ろう。京阪駅近くなので、せっかくだから京阪で帰る。昨日飲み会中に京橋の話をしていたから、なんだか京橋に立ち寄りたくなったのだ。

プレミアムカー

ちょうど特急が来る時間。ホームにプレミアムカーに乗るチケット販売機を発見し、せっかくだから乗ってみることにする。追加500円。

ゆったりと優雅にたどり着いた京橋は、電車を降りた瞬間から謎のにおいがする。えっさほいさと言いながらおじさんが階段を上がってくる。うわぁ京橋だ。プレミアムカーとのギャップに戸惑いながら京橋の街を一瞥し、帰路につく。疲労しているときに歩くにはやや荷が重い街だ。


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