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2020年4月の記事一覧

「あやつり糸の世界は」ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

「あやつり糸の世界は」ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

80年代の前半、ニュー・ジャーマン・シネマという括りで 気鋭のドイツ人映画監督が紹介されました。その中で、日本では中庸なヴェンダースが 最も人気がありましたが、僕は ジャングルにオペラハウスを作るとんでもない話の「フィッツカラルド」や「アギーレ神の怒り」のヘルツウオークや「マリアブラウンの結婚」や「ケレル」などは 日本で公開されたファスビンダーが好きでした。

この「あやつり糸の世界は」1973年

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ボヘミアン・ラプソディ/クイーン

ボヘミアン・ラプソディ/クイーン

ミュージックマガジンの別冊特集「キッス エアロスミス クイーン」は持っていたし、当時 女子学生に大人気、ラジオでも「キラー クイーン」が頻繁に流れていましたが、それほど大好きというわけではありませんでした。でも 当時は本国イギリスでは それほどの人気はなく、まさに「Big In Japan 」。その後の彼らの大成功を見ると、“日本が育てたバンド”という気分になってしまいます。
 この映画の監督は「

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Once upon a time in ... Hollywood/Quentin Tarantino film

Once upon a time in ... Hollywood/Quentin Tarantino film

タランティーノの新作は 「50周年」という事でウッドストックなどのイベントの拡大版がリリースされ特集も増えている1969年のハリウッドのお話。

「ローズマリーの赤ちゃん」で注目を浴びるポーランド人監督ロマンポランスキーの身重の妻 シャロン テートのチャールズマンソンファミリーによる惨殺事件を改変した映画からテレビへ 、ウエスタンからカンフーへと フラワーな時代のハリウッドの転換時期を描いた作品。

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「Yesterday」Directed By Danny Boyle

「Yesterday」Directed By Danny Boyle

全く売れないインド系イギリス人のSSWが、世界的な停電中に起きた交通事故に遭い、目覚めた世界は 誰もビートルズを知らない世界だった。というアイデア倒れになりそうなストーリ―でしたが、さすが「トレインスポッティンティング」や「スラムドッグミリオネア」の監督であり、ロンドンオリンピックの開会式の芸術監督を務めたダニー・ボイル。リチャード・カーティス(「ノッテイング・ヒルの恋人」「ブリジット・ジョーンズ

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「LA LA LAND」

「LA LA LAND」

グラミー賞とかゴールデングローブ賞とか あまり気にしてなかったのですが、うちの奥さんに誘われて、その辺の賞を総なめにした「La La Land」を観てきました。(2017 年)
恥ずかしながら、この映画が始まるまでミュージカルだとは思ってなかったのですが、高速道路の渋滞中の車から出てカラフルな衣装で歌い踊り出すオープニングから、僕の大好きなジャック・デミー監督によるカトリーヌ・ドヌーブ主演の「ロシ

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Roma directed by Alfonso Cuarón

Roma directed by Alfonso Cuarón



 Netflix が配給する作品が様々な映画賞を受賞したことによって、大きな論争を巻き起こした「Roma」。配信向けの作品は メリハリが効きすぎ、わかりやすすぎな印象がありますが、この作品は、フェリーニや小津の映画のように絶妙な構図で淡々と始まり、何気ないが記憶に残るシーンや出演者の表情が重なり合い時代のうねりを背景に、小さな家族や個人の話が一つの大きな物語になるというまさに”名作”の風格。映

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「ベニスに死す」のサントラ

「ベニスに死す」のサントラ



ルキノ・ヴィスコンティによる「ベニスに死す」のサントラ。作曲家アッシェンバッハ(ダーク・ボガード)がポーランド人の美少年タジオ(ビヨルン・アンデルセン)と出会い、若つくりの白塗りの化粧をしてタジオを追い求め、浜辺のチェアで彼を眺めながら朽ち果てていくという映画。その映画のイメージを決定つけたマーラーの5番「アダージェット」。監督ヴィスコンティが貴族の出という事もあり、これがヨーロッパのデカダン

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This Is England

This Is England



フォークランド紛争が勃発し、階級の分断と移民増加による人種問題が発生していたサッチャー政権下、1983年のイギリス。労働者階級(ワーキングクラス)が貧民層(アンダークラス)と呼ばれはじめた時代、極右政党ナショナルフロント(イギリス国民戦線)の実行部隊に取り込まれていくスキンヘッズ。
日本ではUKファッションとしてもてはやされたフレッド・ペリーもベン・シャーマンもそしてドクター・マーチンも彼らの

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「家族を想うとき」ケン・ローチ監督

「家族を想うとき」ケン・ローチ監督



カンヌのパルムドール賞など 各国で多くの賞を受賞した前作「わたしは、ダニエル・ブレイク」(Amazon Prime やNetflixでは無料で観れるので、是非)で引退したといわれたケン・ローチ。 マイク・リーと並び、長く冷徹ながらも共感を持ってイギリスの労働者階級を描いてきた名匠ですが、NHKで「万引き家族」の是枝裕和監督との対談が放送されたので見た方もいらっしゃると思いますが、彼とはレベルの

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「白い暴動」

「白い暴動」



4月公開ながら、映画館が閉まってしまったため、急遽配信で公開された映画。
経済破綻状態にあったイギリス市民の不満が第二次世界大戦後、増加していた移民に向いていた1978年。
そんなイギリス市民、特に若者に向けて その排他主義を扇動した政党 ナショナルフロント(国民戦線党)と黒人や黄色人種の排除を唱える保守党政治家 イーノック・パウエル。
そして彼をを支持したエリック・クラプトン、ディヴィッド・

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Derek Jarman's 「The Last of England」The Original Motion Picture Soundtrack

Derek Jarman's 「The Last of England」The Original Motion Picture Soundtrack



ただならぬ緊張感と閉塞感 そして終末感を漂わせたデレク・ジャーマンの作品。
 いつもと同じくサントラの担当は King of Luxemberg こと Simon Fisher Turner ですが、今回は”Sound Design by "とクレジットされており、Mayo Thompson,Barry Adamson,Diamand Galas,Andy Gillが参加しており、緊張感のある

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「グッド・ヴァイブレーションズ」
“アナキストもキャピタリストもソーシャリストもフェミニストもいなくなり,カトリックかプロテスタントになった“

「グッド・ヴァイブレーションズ」 “アナキストもキャピタリストもソーシャリストもフェミニストもいなくなり,カトリックかプロテスタントになった“

親英、反英の政治対立と宗教対立による紛争が激化し、数千人にが亡くなったといわれる1970年代の北アイルランドの首都 ベルファスト。U2の“Sunday Bloody Sunday “でも歌われた1972年のデモ行進中の市民がイギリス軍に殺された事件や1975年の北アイルランドをツアー中のアイルランドのバンド、マイアミ・ショーバンドがアルスター義勇軍によって虐殺された事件(Netflixでドキュメン

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