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「白い暴動」

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4月公開ながら、映画館が閉まってしまったため、急遽配信で公開された映画。
経済破綻状態にあったイギリス市民の不満が第二次世界大戦後、増加していた移民に向いていた1978年。
そんなイギリス市民、特に若者に向けて その排他主義を扇動した政党 ナショナルフロント(国民戦線党)と黒人や黄色人種の排除を唱える保守党政治家 イーノック・パウエル。
そして彼をを支持したエリック・クラプトン、ディヴィッド・ボウイ、ロッド・スチュアートなど当時”Old Wave ”といわれたミュージシャン。
(特にブルース・ギタリストであり、ボブ・マーレ―のア・イショット・ザ・シェルフのカバーをカバーしたクラプトンが黒人文化を搾取したとたたかれたようです。)
そんな、人種差別や生まれによる差別など不平等への反抗を示すために発足された”ロック・アゲインスト・レイシズム”による活動が当時盛り上がっていたパンクやレゲエと結びつき、音楽フェスの開催に至る流れが描かれています。
遠く離れた日本に住む僕にも緊張感を伝え刺激した音楽が 実はここまで差し迫った緊張状況の中から生まれたものであると再認識されてくれました。
 アメリカ大統領トランプやイギリスのEU離脱など 過剰なナショナリズムが顕在化する現代と重なるテーマですが、僕が興味を持ったのは、主張を伝えることに効果を発揮したメディアの存在となぜ若者はそのメディアに共感したのかということでした。
印刷所に勤めるメンバーがおり、ライブ会場で販売され、若者の心をつかんだ印刷物と大規模な行進や8万人を集めたフェスという”集会”という
二つのメディアが大きな機能を果たしたことでした。そして当時 彼らが発行した”新聞”「テンポラリー・ボーディング」のパンク・ムーブメントと同期したグラフィック・デザインが直感的に当時の若者の共感を呼んだのだと思います。
今後 人の集まることが難しくなり、また我々のコミュニケーションで大きな役割がSNSなどデジタル・メディアに代わる現代。
そのメディアは大きく変わりますが、共感を呼び起こし人々の連帯を促すものは”デザインの力”のような気がします。
ソマリア人の父とスコットランド人の母から生まれ 子供の時に差別されていたというPoly Styreneをボーカルに据えたX-Ray-Spex、

差別主義者が多いとされたスキンへッズからも支持されたSham69 のJimmy Purceyが飛び入り参加したTha Clashの「White Riot」

そして、このムーブメントをリードし、当時の状況を描いた「Whinter’79」を作ったTom Robison、

ジャマイカ移民2世によって結成されたSteel Pulse、

The Pop Groupをプロデュ―スし、
レゲエとポスト・パンクをつないだMatumbiのDennis Bovellなどが出演し、

当時のイギリスの音楽を形作ったパズルのピースを描いた素晴らしさ、そしてイランとパキスタンにルーツを持つ若いイギリス女性がこの映画の監督であること そして 新聞の切り抜きの写真が動き出すという
モンティ・パイソンなどから脈々と流れる風刺のスタイルの踏襲。イギリスの歴史と今が映像がひとコマひとコマに表現される目の離せない映画でした。それにしてもポール・シムノンの後ろ姿は絵になります。









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