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【ビジネスの未来】社会の未来をつくるのは自分である

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜「経済成長」の役目は終わった〜

なぜか最近立て続けに「資本主義の限界」を唱える本を読んでおり、なんだか僕自身もそっち寄りの頭になってきている。

岸田政権が「新しい資本主義」と提唱しているものの、具体的に何をやるかはよく分からない(僕自身がほとんど調べていないのが原因だが笑)。というよりも、「資本主義」そのものに疑問を持つ僕からすれば、その言葉を使う時点で「この政権は社会を本当に変える気は無いな」と感じてしまう。

本書の話にうつる。
本書冒頭では「経済の成長はすでに役目を終えた」という話が展開される。
歴史的に人類は「物質的不足の解消」という課題悩まされていたが、今日の社会においてはその宿願はほぼ実現しつつある。「物質的不足の解消」という課題の山を登り切った先には明るく開けた「高原社会」があり、社会はそこに軟着陸しつつある。と著者は述べる。

経済成長率が低迷している、という事実が社会を悲観的なものにしているが、著者からすれば毎年3〜4%の成長をする社会の方が歴史的には異常な事態だったのだ。「物質的不足」を抱えた社会では大量生産・大量消費により、経済成長が著しい社会であったが物質的に満足した社会では、成長率が鈍化するのは当然なのである。
「高原社会」とは、いわば成長の完了した成熟した社会と言える。成熟期に入った社会において、GDPという指標に一喜一憂するのではなく、むしろ、成長が完了しつつある現代社会を祝福し、新しい社会構想を持つべきだ、と著者は述べる。


〜「生きるに値する人生」を送れる社会に〜

「仕事に対する対価=金銭的報酬」という考え方は、成長過程にあった社会においては合理的であったが、成長が鈍化した社会では所得格差を拡大させ、金銭のためにやりたくもない労働をする人々が増え、人生に幸福を感じる人が増えていく。

今こそ、「仕事の価値」を見直し、「お金のための労働」から解放されるように社会をシフトしていく必要がある
そのカギとなるのが「人間性に根ざした衝動」に基づいた労働と消費である。

そのためには一人ひとりが「真にやりたいことを見つけて取り組む」「真に応援したいモノ・コトにお金を使う」事が必要となり、一人ひとりがそのように生きられるためにUBI(ユニバーサルベーシックインカム)の導入を提案している。

著者は決して社会主義や大衆主義を提唱しているわけではないし、「資本主義を否定」しているわけではない。
著者が求めているのは「人間にとって生きるに値するいい社会」である。近代化・文明化が完了した社会においては、労働市場に市場原理をより徹底的に働かせるための提案が本書なのである。


〜一人ひとりが社会に向き合う〜

さて、「人新世の資本論」を読んだ時にも感じた事だが、著者の語る未来は非常に合理的で理想の社会ではあるものの、制度や仕組みで簡単に変えられるものではない。
一人ひとりが「凝り固まった考え方を捨てて、社会に対して興味を持ち、社会について真剣に考える」必要がある。

著者も補論で軽く触れているが、日本の選挙投票率を見てもわかる通り、日本人は政治や社会に対する意識が低い。
体感としても思うのが、「とりあえず自分のことで精一杯」「自分が良ければ社会の事なんてどうでもいい」「そのうち、すごいリーダーが現れて日本を変えてくれる」という人が日本には多い。
僕には外国人の友達はいないから、一概に「海外と比べて」なんて言えないが、日本人の知り合いや仕事で接する人を見ても、日本人の「自分も社会の一員だ」という意識が低すぎる、というのが個人的な感覚としてある。海外と比べて日本がダメになっているのだとするのであれば(著者はそうは言っていないが)、僕はそこがかなり大きな原因だと考えている。

日本の未来を考える前に、まず一人ひとりがもっと深く社会について関心を持つべきだ。
社会に対してもっと「なぜ?」と考え、良くするにはどうすればいいのかを真剣に考える。たとえ、向かう方向が違っても、一人ひとりが社会に対して考え行動すれば、いくらかは今よりマシになるように思う。

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