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黒磯さんぽ 前編


奈実、有香、千江子は高校からの仲。もうかれこれ10年近くの付き合いになる。昔ほど頻繁に集まれなくなってしまった3人だが、今回、千江子の声がけにより、久しぶりに集合し、黒磯日帰り小旅行を開催した。

黒磯…新幹線を利用すれば東京から約75分、仙台からは約70分で行けてしまう、栃木県の北部に位置する街。かつては黒磯市であったが、現在は那須郡西那須野町、塩原町と合併し那須塩原市黒磯となっている。江戸時代には大規模な用水が開かれたり、明治時代には、沢山の大農場が生まれた歴史を持つ場所だが、現在はCAFE SHOZOをはじめとした、おしゃれなカフェ、レストラン、雑貨屋、家具屋、ゲストハウスなどがこぢんまりと集まる素敵な場所になっている。黒磯の詳しい歴史はこちらをどうぞ


9:30a.m.




有香 「わーついたね。黒磯駅って思ったより、大きいんだね。」

千江子 「有香は小さな町か、村を想像してたでしょ。ここは那須塩原市内だからね。」

有香 「あそっか。」

奈実 「なんだか穏やかな空気が流れてて安心する場所だね。」


3人とも駅から出て、街の空気を噛み締めている。平日の朝は出勤でバタバタしているためか、朝、外に出てゆっくり呼吸をすることがとても心地よく感じられる。


奈実 「あの、ところでさ、私、お腹空いたんだけど…。」

千江子 「じゃあ、まず喫茶店で朝ごはん食べよ。」

奈実・有香 「いいね。いいね。」



まず3人が向かったのは、黒磯駅前にある、カフェ セントロ。元々は旅館であった建物を利用して約30年前にオープンしたカフェ。一度の閉店を経て、13年前に再度オープンした。窓から入る朝の光を浴びながら、レトロで落ち着いた雰囲気の店内で朝御飯を頂く瞬間は、何にも変えがたい。3人はほっかほかのトースト、新鮮な野菜を使ったサラダ、飲んだ瞬間にほっとさせてくれるような豆乳スープなどを各自の朝食に選んだ。


3人 「いただきまーす。」

奈実 「美味しいねー。こんなにゆっくり朝御飯を食べられるなんて、本当に幸せ。」



千江子 「特に、奈実は仕事忙しそうにしてるもんね。」

奈実 「そうなんだよね。だいたい家に帰るのが22時過ぎちゃうから、平日はなかなか休まる時間がなくて。」

有香 「でも奈実って何だかバリバリ働くことによって、生き生きするよね。実際、仕事も忙しいながら楽しんでる感じがする。」

奈実 「うん、それはその通りなのかも。仕事以外のことに時間があんまり取れてなくて、そのことに後ろめたい気持ちもあるけどね…。」

有香 「奈実はここ最近ずっと彼氏いないしね…。」

千江子 「あーあの大学の時付き合ってた人以来…。」

奈実 「うん、いないの。その彼と就職した頃忙しくて別れて、それっきり…。」

有香 「私は、その間に3人ほど彼氏が代わりましたけども…。」

奈実 「有香はそのくらい変わってたよね。いいな、有香は。私も有香くらい素直になりたいと思ったりするんだけど。」

有香 「あはは。そうなんだ、ありがとう。まあ、そのせいで悲しいこともほんっと多かったけどね。」


10:15a.m.


3人は近況を報告し合いながら、朝食を頂き、お店を後にする。この黒磯で、まずはゆっくり朝食の時間を過ごすことができたおかげか、3人の息遣いや歩くテンポが心なしか、街に馴染んだものになってきた。これは、楽しい一日になること間違いなし!


有香 「いやー。美味しかった。これからまずはどっちに向かおうか。」

千江子 「ご飯も食べたことだし少し歩かない? 少し歩いたところに公園があるみたいだよ。」

奈実 「いいわねー。まずは歩いて、街の空気を感じることが一番の観光になるからね。」

有香 「相変わらず、奈実はいいこと言うね!」

奈実 「でしょー。ありがとうー。」



3人が向かったのは、黒磯駅から徒歩で約25分のところにある那珂川河畔公園。春には川沿いに桜が咲き誇ることで有名な場所だ。那珂川の川辺で川音を聴きながら散歩をしたり、または那須連山を一望しながら湖畔のベンチで休憩したりなんていうのもいいだろう。



11:00a.m.


奈実 「ついた。とりあえず私はベンチに座って休憩したい。」

有香 「私も。千江子は、相変わらず化物みたいな体力してる。」

千江子 「そうだった…?普段30分も歩かないから疲れるよね…。ごめん、ごめん。ちょっと速く歩きすぎちゃったね。」

有香 「ほんとだよー。」

奈実 「学生の時さ、3人でバンコクに行ったじゃん。その時も千江子の歩くペースについていくの大変でさ…。」

千江子 「あー。すごく懐かしいね。あの旅行はタフだったなあ。」

有香 「暑い中歩いて、歩いて。で、お店ではしつこく値引き交渉して。」

奈実 「千江子は先導担当で有香は値引き交渉担当って感じだったよね。」

千江子 「奈実は、全体を見守ってくれてた感じだったよね。」

有香 「そう。奈実がいてくれるから私たちが突っ走れるっていうね。」


12:00p.m.


思い出話に花が咲き、気がつけば時間がお昼前に。


千江子 「これから雑貨屋さんとか周ろうか?」

奈実 「あ、あの、私お腹減ったんだけど…。」

有香 「私も同じく…。」

千江子 「は、早いな…!でも、沢山歩いたもんね。じゃあお昼は…。そばにしようと思うんだけど、どう?」

奈実・有香 「だいさんせいー!!」


そこで次に3人が向かったのは、そば処 香庵。手打ち蕎麦や卵焼き、ボリューム満点の天ぷらなどが自慢の品だ。


有香 「卵焼きも食べたいし…、天丼も食べたいんだけど…。」

千江子 「じゃあ一つずつ頼んでシェアしよっか。」

まずは、美味しい出汁の効いた卵焼きを頂いている3人の前に天丼が…。

3人 「うわあーーー!!!」

つい歓声をあげてしまう。

奈実 「天ぷらの宝石箱ってこのことじゃない。」

有香 「うん。このことでしかない。」

千江子 「海老なんて、二つも入ってるよ!!!私ー、一つもらっちゃうね。」

有香 「私ももーらい。」

奈実 「二人とも早いって、もう。」

有香 「奈実、でもイカがあるよ。」

奈実 「あほんとだ。ありがとう。」


賑やかに天丼を分けあっていた3人だが、そばを頂いた途端、あまりの美味しさに、終始無言で、一気に食べあげてしまった。

千江子 「いや、全てが本当に美味しかったー!」

奈実 「本当にその通り。旨い出汁が効いた卵焼きに、ボリューム満点の天丼。こしもあって美味しいそば粉の味がしっかりするそば。この上なく幸せなお昼ご飯だった。」

有香 「千江子、調べてくれてありがとね。」

千江子 「いえいえー!二人とも喜んでくれてよかった。さて、次は雑貨屋さんとかが並ぶ通りをふらふらしようか。」

奈実 「あ、あのー、私、さっき通って来たところで、よりたいところがあったんだけど…。」

千江子・有香 「えっ、どこどこ?」

奈実 「ほら、さっき郷土資料館ってあったじゃない。そこ行ってみたいんだけど…。やっぱりその土地の歴史を知って、それを経てこんな今があるんだなーって考えると、観光の深みが増すから。」

千江子 「奈実らしいね。じゃあ、そこ行こっか。」

奈実・有香 「そうしようー!」


3人は奈実の提案により、午後はまず黒磯郷土資料館に向かう。そこからは黒磯さんぽ 後編でお届けするのでお楽しみに!


前編で訪れた場所のだいたいの位置関係はこちら!



最後まで読んでいただきどうもありがとうございます。