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映画コラム・批評

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【映画解釈/考察】『幸福なラザロ』/『夏をゆく人々』「イタリア人女性監督アリーチェ・ロルヴァケルと現代社会(狼)と失われつつある世界(羊)の間に漂う映像美」

【映画解釈/考察】『幸福なラザロ』/『夏をゆく人々』「イタリア人女性監督アリーチェ・ロルヴァケルと現代社会(狼)と失われつつある世界(羊)の間に漂う映像美」

『幸福なラザロ』 (2018)『夏をゆく人々』 (2014) アリーチェ・ロルヴァケル監督
『幸福なラザロ』は、『夏をゆく人々』のアリーチェ・ロルヴァケル監督の実在の事件をモチーフにした2018年のイタリア映画です。ロルヴァケル監督が、本作でも、脚本を書いており、カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞しています。

『幸福なラザロ』でも、姉で、今のイタリアを代表する女優の一人であるアルバ・ロルヴァケ

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【映画解釈/考察】『her/世界でひとつの彼女』「スパイク・ジョーンズに見る間主観性の哲学と開かれた世界の贈与としての愛」

【映画解釈/考察】『her/世界でひとつの彼女』「スパイク・ジョーンズに見る間主観性の哲学と開かれた世界の贈与としての愛」

『her/世界でひとつの彼女』(2013) スパイク・ジョーンズ

スパイク・ジョーンズ監督・脚本の『her/世界でひとつの彼女』は、個人的に2010年代の最も好きな映画の1つで、映画の脚本の内容が、大胆、かつ巧妙に構成されています。

もちろん長編映画デビュー作の『マルコヴィッチの穴』は、1990年代を代表するような傑作映画だったわけですが、どうしてもチャーリー・カウフマンの作品というラ

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【映画コラム/解釈】『ROMA/ローマ』(2018)が2010年代を代表する映画としてふさわしい理由

【映画コラム/解釈】『ROMA/ローマ』(2018)が2010年代を代表する映画としてふさわしい理由

『ROMA/ローマ』(2018)アルフォンソ・キュアロン監督

『ROMA/ローマ』は、ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞とアカデミー賞監督賞を受賞したアルフォンソ・キュアロン監督・脚本の2018年のメキシコ映画です。1970年代初頭のメキシコシティを舞台に富裕層一家と家政婦の交流を描いた作品で、NETFLIXが配給権を獲得しました。

全編モノクロの作品ですが、光彩がくっきりと映し出されてお

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【映画コラム/解釈】『自転車と少年』(2011)  「ダルデンヌ兄弟と自転車が示すベクトルと偶然性・人間性」

【映画コラム/解釈】『自転車と少年』(2011) 「ダルデンヌ兄弟と自転車が示すベクトルと偶然性・人間性」

『自転車と少年』(2011) ダルデンヌ兄弟

1 ダルデンヌ兄弟とカンヌ国際映画祭『自転車と少年』は、ダルデンヌ兄弟による2011年のベルギー映画で、カンヌ国際映画祭グランプリ(審査員賞)とヨーロッパ映画賞脚本賞を受賞した作品です。ダルデンヌ兄弟といえば、カンヌ国際映画祭の常連で、『ロゼッタ』(1999)『息子のまなざし』(2002)『ある子供』(2006)『ロルナの祈り』(2008) そし

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【映画コラム】映画館という場所 、 ミニシアター・名画座という場所の存在

【映画コラム】映画館という場所 、 ミニシアター・名画座という場所の存在


ミニシアター・名画座の存在が必要な理由

緊急事態宣言の中、小さいミニシアターや名画座と言われる単館・小規模系の映画館にも休業要請が出され、特に都心やデパートなどの大規模施設内にある映画館は、休業に追い込まれています。今回は、短期間ということもあり、観る側にとってみれば、緊急を要する訳ではないですし、映画自体は動画配信サイトで見ることができるので、映画館に行くのを我慢することはそんなに難しい

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