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このnoteでは、映画の考察/解釈を中心に記事を載せています。note別アカウント→https://note.com/takesky2 映画コラム・考察ブログ→https://eigawoyomu.wordpress.com/

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【映画解釈/考察】『アメリ』(2001) 「ルノワールの絵画とフーコーの〈類似〉→〈表象〉→〈人間〉(アメリの視線の先とアメリの存在が街に浮かび上がる特異点 ) 」

『アメリ』(2001) ジャン=ピエール・ジュネ監督 本作は、『デリカテッセン』『ロスト・チルドレン』のジャン=ピエール・ジュネ監督のラブストーリーです。 公開当時は、ブラックユーモアとダークファンタジー色が強い前作2つのイメージとは少し違い、肩透かしを食らった感じでしたが、本作も芸術的な完成度が高いエンターテイメント作品なっています。 もちろん、本作で一躍、世界的に有名になったオードレー・トトゥの魅力に支えられている作品でもあります。 そして、アメリの恋人

    • 【漫画解釈/考察】藤本タツキ『ルックバック』『さよなら絵梨』と映画「引きこもりとイマジナリーフレンドの物語として読む」《前編》

      『ルックバック』藤本タツキ 『さよなら絵梨』藤本タツキ 『ブルーアワーにぶっ飛ばせ』監督 箱田優子 『ボクのエリ 200歳の少女』監督トーマス・アルフレッドソン ※この記事は、ネタバレを含みます。原作漫画を先に読むことを、お勧めします。 『さよなら絵梨』と『ルックバック』の共通点 『さよなら絵梨』は、『ルックバック』に続いて、「少年ジャンプ+」上に無料公開された短編の読み切り漫画です。両作品とも、これまでに少年漫画にはあまりなかった不思議な感触と想像力を駆り立てられる作

      • 【映画解釈/考察】『わたしは最悪。』「“母性”に寄りかかるパターナリズム(父権主義)①」

        『わたしは最悪。』ヨキアム・トリアー 『あのこと』オードレイ・ディヴァン 『テルマ』ヨキアム・トリアー 『ロスト・ドーター』マギー・ギレンホール 『ドント・ウォーリー・ダーリン』オリヴィア・ワイルド 『MEN 同じ顔の男たち』アレックス・ガーランド 『ベルイマン島にて』ミア=ハンセン・ラブ ※この記事は、以前書いた記事を、修正・加筆して、まとめたものです。 今回は、2022年に公開されたヨキアム・トリアー監督の『わたしは最悪。』とミア=ハンセン・ラブ監督『ベルイマン島に

        • 【映画解釈/考察】『君たちはどう生きるか』「世界の意識の一員としてのジブリの世界」

          映画『君たちはどう生きるか』の無宣伝戦略は、作品の主題本位によるものだったのではないか 映画『君たちはどう生きるか』は、宮崎駿監督の総決算的かつおまけ的な作品という制作過程の問題があったと思われますが、公開前から今までのジブリ作品と比べて、何かが違うことを感じずにはいられない作品であったことは、間違いないかと思います。 それは、主に宣伝方法であったことは、確かなのですが、それは戦略的な問題ではなかったのでないかというのが、鑑賞後まず感じたことでした。 そして、その違和感

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        【映画解釈/考察】『アメリ』(2001) 「ルノワールの絵画とフーコーの〈類似〉→〈表象〉→〈人間〉(アメリの視線の先とアメリの存在が街に浮かび上がる特異点 ) 」

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          【映画解釈/考察】『MEMORIA メモリア』 「刹那的な意識と記憶をめぐる冒険」

          『MEMORIA メモリア』(2021) アピチャッポン・ウィーラセタクン監督 『アフター・ヤン』(2022) コゴナダ監督 記憶をめぐる冒険 前の記事で、『アフター・ヤン』を老荘思想と関連付けて解釈を試みました。奇しくも、2022年日本公開の映画には、『アフター・ヤン』の他に、記憶をめぐる印象的な作品が2つありました。それは、『メモリア』と『林檎とポラロイド』です。特に『メモリア』は『アフター・ヤン』と記憶や意識についての共通の思想を多分に感じ取ることができます。今回は

          【映画解釈/考察】『MEMORIA メモリア』 「刹那的な意識と記憶をめぐる冒険」

          【映画解釈/考察】『アフター・ヤン』「老荘思想と、意識と記憶の共有」

          ヤンが動かなくなったのは、経年劣化だけではないという仮説 『アフター・ヤン』のストーリーは、ある日、突然、人間型AIロボットのヤンが、動かなくなるというところから始まります。ここで、気になるのが、故障の原因です。新品同様の再生品だと思っていたヤンが、実際は、2度目の再生品であった事実から、単純に考えれば、経年劣化であると捉えることはそれほど難しくありません。  しかし、ここで頭をよぎるのは、もしかしたら、ヤンが何かを見つけたことによるヤンの意識的な停止である可能性です。

          【映画解釈/考察】『アフター・ヤン』「老荘思想と、意識と記憶の共有」

          【映画解釈/考察】『ふたりのベロニカ』クシシュトフ・キェシロフスキ監督「異色の"分身"譚を探る」+『複製された男』

          『ふたりのベロニカ』クシシュトフ・キェシロフスキ監督 『複製された男』ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督 『分身』フョードル・ドストエフスキー 『ふたつの手紙』『歯車』芥川龍之介 ドストエフスキー『分身』と"分身"譚の典型 『ふたりのベロニカ』は、本作でカンヌ国際映画祭女優賞を獲得したイレーヌ・ジャコブの不思議な魅力と、独特な色彩感によって、強烈な印象を残すクシシュトフ・キェシロフスキ監督の晩年の最高傑作と言うべき作品です。 そして、この映画に興味を惹かれる最大な理由は、不可解な謎

          【映画解釈/考察】『ふたりのベロニカ』クシシュトフ・キェシロフスキ監督「異色の"分身"譚を探る」+『複製された男』

          【映画解釈/考察】『アンダー・ザ・シルバーレイク』 「『裏窓』と複製されたハイパーリアルで愛を待つ地上の人々」

          『アンダー・ザ・シルバーレイク』 『マルホランド・ドライブ』 『裏窓』 『インヒアレント・ヴァイス』 "鬼才"デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督2000年以降に台頭してきた“鬼才”と呼ばれる新進気鋭の監督として、デンマーク出身のニコラス・ウィンディング・レフン、 イギリス出身のエドガー・ライト、イタリアのマッテオ・ガローネ、ギリシャ出身のヨルゴス・ランティモスなどが挙げられますが、そのような監督の一人として数えられているのが、デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督です。

          【映画解釈/考察】『アンダー・ザ・シルバーレイク』 「『裏窓』と複製されたハイパーリアルで愛を待つ地上の人々」

          【映画解釈/考察】『寝ても覚めても』/『ドライブ・マイ・カー』「不条理な世界の存在として、それでも言葉の世界で生きようとする者たち」

          『寝ても覚めても』(2018)濱口竜介監督 『ドライブ・マイ・カー』(2021)濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』を扱った以前の記事で、『ドライブ・マイ・カー』は、不条理な世界を認めざるを得ない一方で、それでも言葉による新たな物語を創出して生きていく人々を描いた物語であるという解釈をしました。  そして、『ドライブ・マイ・カー』を見た後、再度、『寝ても覚めても』を見返してみると、非常に多くの共通点を発見することができ、『寝ても覚めても』は、『ドライブ・マイ・カー』に直接影

          【映画解釈/考察】『寝ても覚めても』/『ドライブ・マイ・カー』「不条理な世界の存在として、それでも言葉の世界で生きようとする者たち」

          【映画解釈/考察】黒沢清監督『CURE』「秘密の部屋(エス)の存在を自我に認めさせるCURE(癒し)」

          『CURE』(1997) 『クリーピー 偽りの隣人』(2016) 『カリスマ』(1999) 『殺人の追憶』(2003)ポン・ジュノ監督 黒沢清監督と言えば、普段私たちが、意識していない存在を、見事に、顕在化させる精緻な脚本が特徴的です。今回は、そのような作品の中から、代表作の一つである『CURE』を考察します。 『CURE』のプロットとリンクする童話『青髭』冒頭、女優の中川安奈さんが演じる高部の妻が、カウンセリング中に声に出して読んでいるのが、ヘルムート・バルツ著の『青髭

          【映画解釈/考察】黒沢清監督『CURE』「秘密の部屋(エス)の存在を自我に認めさせるCURE(癒し)」

          【映画解釈/考察】『ぼくのエリ 200歳の少女』『ボーダー 二つの世界』「引きこもりの物語の表象的存在としての異能者(亜人)とエディプス・コンプレックスの克服」

          『ぼくのエリ 200歳の少女』(2010)トーマス・アルフレッドソン監督 『ボーダー 二つの世界』(2018)アリ・アッバシ監督 スウェーデン作家ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストによる原作・脚本 『ボクのエリ 200歳の少女』と『ボーダー 二つの世界』は、ともに、スウェーデンの人気ホラー作家ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの小説を原作としている上に、自ら脚本に携わっています。 ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストは、もともとスタンダップコメディアンや手品師をしていたよう

          【映画解釈/考察】『ぼくのエリ 200歳の少女』『ボーダー 二つの世界』「引きこもりの物語の表象的存在としての異能者(亜人)とエディプス・コンプレックスの克服」

          【映画解釈/考察】『ロスト・ドーター』『ドライブ・マイ・カー』「不条理演劇と記号的他者を通した物語的自己同一性による癒し」

          『ロスト・ドーター』(2021)マギー・ギレンホール監督 『ドライブ・マイ・カー』(2021)濱口竜介監督 今回は、アカデミー賞2022脚色賞にノミネートされた2作品について考察を行います。 1 不条理演劇と実存主義『ロスト・ドーター』は、エスリンの不条理演劇の言葉がはっきりと映画の中に出てきますが、『ロスト・ドーター』のストーリーの構成自体が、不条理演劇そのものになっています。突然安らぎを破壊する集団、突然降りだす雨、突然現れる訪問者、突然落ちてくる松ぼっくり、突

          【映画解釈/考察】『ロスト・ドーター』『ドライブ・マイ・カー』「不条理演劇と記号的他者を通した物語的自己同一性による癒し」

          【映画解釈/考察】スティーブン・ソダーバーグ監督『セックスと嘘とビデオテープ』「女の虚像に囚われた男と、視線の反転による開放」

          『セックスと嘘とビデオテープ』(1989) 1.スティーブン・ソダーバーグ監督の映画作家としての凄み スティーブン・ソダーバーグ監督の長編映画デビュー作にしてカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作でもある『セックスと嘘とビデオテープ』は、刺激的で挑発的なタイトルとは対照的に、男女関係を哲学的に捉えた、論理的なストーリーが展開されるプラトニックで、精神分析的な作品です。  そして、この作品だけで、ソダーバーグ監督の映画作家としての凄みを、充分実感することができる、そんな作品で

          【映画解釈/考察】スティーブン・ソダーバーグ監督『セックスと嘘とビデオテープ』「女の虚像に囚われた男と、視線の反転による開放」

          【映画解釈/考察】レオス・カラックス監督『ホーリー・モーターズ』(2012)「"眼差し"と"演じる"ことから逃れられない人間たちを、"映画館"に運ぶホーリー・モーターズ(レオス・カラックス監督)」

          『ホーリー・モーターズ』(2012) レオス・カラックス監督 『ミスター・ロンリー』(2007) ハーモニー・コリン監督 『TOKYO!』(2008) オムニバス映画 『アネット』(2021) レオス・カラックス監督 『ホーリー・モーターズ』の寓話性と疑問点の整理 『ホーリー・モーターズ』は、2012 年(日本では 2013 年)に、レオス・カラックス監督の長編映画としては『ポーラ X』(1999)以来 13 年ぶりに劇場公開された作品です。公開前から、首を長くして、かな

          【映画解釈/考察】レオス・カラックス監督『ホーリー・モーターズ』(2012)「"眼差し"と"演じる"ことから逃れられない人間たちを、"映画館"に運ぶホーリー・モーターズ(レオス・カラックス監督)」

          【映画解釈/考察】『ブラック・スワン』(2010)「ダーレン・アロノフスキー監督の方程式」(『π』『マザー!』との共通点)

          『ブラック・スワン』(2010) 『π』(1998) 『マザー!』(2017) 『ブラック・スワン』は、ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞の『レスラー』(2008)に続くダーレン・アロノフスキー監督作として2010年(日本では、2011年)に公開された作品です。ナタリー・ポートマンが、本作で、アカデミー主演女優賞を獲得しています。  また、『π』や『レクイエム・フォー・ドリーム』から続くダーレン・アロノフスキー監督の真骨頂である"人間の精神的弱さを突かれて、主人公が強迫神経症

          【映画解釈/考察】『ブラック・スワン』(2010)「ダーレン・アロノフスキー監督の方程式」(『π』『マザー!』との共通点)

          【映画解釈/考察】『幸福なラザロ』/『夏をゆく人々』「イタリア人女性監督アリーチェ・ロルヴァケルと現代社会(狼)と失われつつある世界(羊)の間に漂う映像美」

          『幸福なラザロ』 (2018)『夏をゆく人々』 (2014) アリーチェ・ロルヴァケル監督 『幸福なラザロ』は、『夏をゆく人々』のアリーチェ・ロルヴァケル監督の実在の事件をモチーフにした2018年のイタリア映画です。ロルヴァケル監督が、本作でも、脚本を書いており、カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞しています。 『幸福なラザロ』でも、姉で、今のイタリアを代表する女優の一人であるアルバ・ロルヴァケルが、出演しています。また、村人を騙して搾取する侯爵夫人役を、『ライフ・イズ・ビ

          【映画解釈/考察】『幸福なラザロ』/『夏をゆく人々』「イタリア人女性監督アリーチェ・ロルヴァケルと現代社会(狼)と失われつつある世界(羊)の間に漂う映像美」