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これからのベンチャー企業のコーポレート担当に求められる5つの力

株式会社ベーシック執行役員 CAOの角田(@takeshisumida_)です。
私は現在コーポレート部門の管掌役員として、経営企画、人事、広報、経理、財務、法務、総務、内部監査など、バックオフィス周りの機能全般に幅広く関わっています。

先日ご縁があり、fondeskを提供されている株式会社うるるさんが主催の「コーポレートテック会議2022」に登壇させていただきました。

その中で、私は、エッグフォワードの徳谷さん、UPSIDERの佐藤さんと共に、以下のテーマについてお話しさせていただきました。

今回のnoteではその中でお話ししたことも踏まえて、「これからのベンチャー企業のコーポレート担当に求められること」について、せっかくですのでテキストでも改めてまとめてみたいと思います。特に以下に当てはまる方に読んでいただけると幸いです。

・現在ベンチャー企業のコーポレート部門で働いている方
・今後ベンチャー企業のコーポレート部門への転職を考えている方
・コーポレート部門への理解を深めたいベンチャー企業の経営陣の方


ベンチャー企業のコーポレートを取り巻く環境の変化

"これからの"という言葉をタイトルにも入れているように、大前提として、コーポレート部門を取り巻く環境自体が、ここ数年の中でも大きく変わってきているように感じています。

大きく変わってきているポイントとしては、ひとえに「業務を遂行する手段がより多様化してきた」ことが挙げられると思います。
1つは何と言っても、まさに今回のコーポレートテック会議の主題とも言えるSaaSに代表される”ツールの多様化”です。

また、後ほどの説明の中でも触れますが、それ以外にも、外部委託先や、情報の取得手段の多様化など、これまでのように、自分の専門性だけを活かして、また社内の他部署と協力して、という範囲にはとどまらない形で、外部に存在するあらゆる手段を活用しての業務推進が求められてきています。

だからこそそれに適応するために、またそのような環境の中で成果を最大化するために、新たに必要となったり、より求められるようになってきている要素が出てきていると考えています。

ベンチャー企業のコーポレート担当に必要な5つの要素

上記の流れを踏まえて、これからのベンチャー企業のコーポレート担当に必要な5つの要素を、大きく以下の5つに分けて考えてみました。

1. テクノロジーを活用する力

上述"ツールの多様化"の流れを受け、「テクノロジーを活用して業務を推進する力」は当然のことながら求められます。その中でも特にSaaSに対する知識は必須と言えるでしょう。

ご存じの通り、コーポレートやバックオフィス周りに限らず、SaaSという形態のソリューションはここ数年で年を追うごとに増加しています。
SaaS界隈では必ずチェックされているBOXILさんのカオスマップのまさに文字通りのカオスぶりからも、それは見てとれるかと思います。

出典:BOXIL「SaaS業界レポート2021 速報版」

オンプレミス型のものも含めて、特に"業務効率化"文脈におけるシステムの活用は、以前よりコーポレート組織が持つ大きなミッションの一つではありました。
しかし現在ではこれまでとは異なり、「工数が増えてきたから」「業務が非効率になってきたから」システム導入を考えるのではなく、発生し得る課題を見越して、あらかじめSaaSを組み込んだ業務設計を行う必要があります。

大企業においては情シスのような部隊が基本的にはまるっと請け負ってくれるかと思いますが、ベンチャー企業においてはそのような機能は初期から十分に揃ってはいません。
コーポレート担当の各自が、自分の担当の領域における最新のテクノロジーについてはアンテナを張り巡らせ、適切なシステムを主体的に提言・導入することが求められているのです。

2. 外部に頼る力

上記SaaSに加えて同じく以前より手段が広がってきているのが、外部の専門会社、いわゆる外部委託先です。
この分野も、弁護士事務所や税理士事務所、社労士事務所など、以前からいわゆる士業を中心に、専門人材をまだ抱えていないベンチャー企業が外部に委託すること自体はもちろんこれまでもありました。

しかし現在では領域がそのような士業系にとどまらないというのはもちろん、例えば「採用ピッチ資料の作成」「ダイレクトリクルーティングのスカウト業務」「代表電話の受電代行」など、委託をする業務の種類が、これまでと比べてより専門化、細分化してきています。

また、『Caster』や『HELP YOU』など、リモートワークの広がりも後押しする形で、細かい業務をまるっと引き受けてくれるいわゆる"オンラインアシスタント"の形態のソリューションも多数出てきています。
こちらもいわゆる"BPO"という形態はこれまでも存在していましたが、その金額感から、どのスタートアップやベンチャー企業でも気軽に活用できるというものではなかったのではないでしょうか。

このように、ひとえに外部に頼ると言っても、その内容はさまざまです。そのためにも大事になるのが、業務を「コアとノンコアに分離」すること、その上でそれぞれに適したパートナーを選択することだと考えています。

コア業務・ノンコア業務の定義 出典:Biznet

ベーシックの場合は"ノンコア業務"については基本的には全力で外部委託の方針です。
そのことにより、ノンコア業務ばかりに忙殺され疲弊するようなことを避け、とにかく社員が本質的に担うべき業務に集中できる体制を作ることを心掛けています。

また"コア業務"についても、だからといって全てを社員で賄うのではなく、例えば会社にまだ機能として無かったり、社内メンバーではケイパビリティが不足している場合は、積極的に外部パートナーを活用するようにしています。
いくら本質的な業務に集中できたとしても、経験や知識が不足しているのであれば、結局進めるべきことも進まない、もしくは進むようになるまでに時間を要するからです。

コア業務な以上、可能な限り内製化できるのがもちろん理想なのですが、多くのベンチャー企業においては、そもそも高度な専門人材を採るほどの採用競争力が十分になかったり、初期から専門人材のリソースがフルタイムで必要な程はいらなかったりする場合が大前提として多いでしょう。

まずは外部委託から始めることは、それら問題を解決することはもちろん、結果的にはその機能・職種における、ある意味"理想のレベル感"を早めに知ることができ、ゆくゆく社員として採用を始める際にも、より正しく人材要件を設定できることに繋がると思っているという意味でもお勧めです。
(逆に言うと、組織としてケイパビリティがまだ無い専門職の早期の採用は、お互いミスマッチで失敗することが概して多いです。)

3. ディレクションする力

こちらは上記の外部委託先に頼る上で、ということになりますが、社内のチームのみならず、外部を巻き込んで仕事進める以上、「外部パートナーをディレクションする力」が求められます。
任せる業務の大きさによっては、もはやそれは一つのプロジェクトであるため、プロジェクトマネジメント力と言い換えても良いでしょう。

外部に任せるということは、当然ながら投げっぱなしにすることではありません。「外部委託することで成し遂げたかったことは何なのか」という目的を常に念頭に置き、その目的達成のために想定通りことが進んでいるのか、求めていたQCD(品質・コスト・納期)が達成されているのか、そこからずれないよう適切に管理し、導いていく必要があります。

「社内でも他部署と協力しながらこれまで仕事してきたので普通にできるでしょ」と思われがちなのですが、目指す方向性が一定揃っていたり、人間関係が一定元から存在していたりする社内と、それらが無い社外とでは勝手が大きく違います。

特に"コア業務"を委託する場合にはより注意が必要です。ノンコア業務については、その性質上委託をする人も業務内容をよく分かっている場合が多いので、QCDのズレについては目につきやすいですし、そうなっているかの判断がしやすいです。
一方で"コア業務"については、前述のように、主には自分達にケイパビリティが無いことを委託する形になるため、QCDのズレの判断がしにくく、結果的に「よく分からないので全部お任せします」ということになりがちだからです。

この外部パートナーのディレクションについては、"大企業の管理部門出身者"は特に苦手な領域だと個人的には思っています。
自分自身も完全にそうだったのですが、大企業においては、高度専門職を含め内部に一定の人材が揃っているので、自部門で解決できないことがあったとしても、基本的には社内の他部署に依頼することで完結する場合がほとんどです。
また管理部門はむしろコストを引き締める立場であることが多く、そのためその立場である自分達がコストを使って何かを外部に頼むというケースは、決して多くはないためです。

一方で、ベンチャー企業においては大企業とは異なり潤沢に人が揃っているという状況はまずあり得ません。
もちろんベンチャーの管理部門においてもコスト意識自体は非常に大切なのは当然ですが、だからと言って内製に拘り過ぎて、結果的にコーポレートが事業推進上のボトルネックになっていては意味がありません。

「外部パートナーも含めて一つのチーム」として考え、しっかりと目標を共有しながら、その目標の達成に向けてディレクションを行っていく能力は、ベンチャー企業のコーポレート部門に属している限りは必須です。

4. 情報収集力

上述、テクノロジーを活用したり、外部へ頼ったりする上でも必要となるのが、それらの情報を収集するための有用な手段を持っていることです。
ネットでググったりメルマガやブラウザのアラート機能を使って日頃から情報を収集ということはベースとしてそうなのですが、その上で、個人的に有用だと思っているのは「SNSの活用」と「コミュニティの活用」です。

自分で情報を収集することと、それらを活用することとの大きな違いは、ただ受動的に情報を集めるだけではなく、時にはそれらを通じて疑問の解消や問題解決にまで繋がることです。

SNSの活用
ご存じの通り現在では数多くのSNSが世の中に出ており、SNSの運用の仕方も人それぞれのため、「絶対にどれにすべき!」という限定は正直難しいですが、私の場合その有用性を感じているのはやはり"Twitter"です。
元々は匿名が主流だったTwitterも、2010年台後半から急激に実名のビジネスアカウントが広がっています。かくいう弊社ベーシックでも、コーポレートにとどまらず、全社的にTwitterを活用しています。

Twitterで有用な情報が流れてくるという情報収集観点でもそうなのですが、社外との繋がりができることにより、何か不明な点があった場合に専門性が高い人に聞くことにより解決に繋がったり、何より前述の外部パートナーについても、Twitter経由で見つけられるという点が個人的には大きいです。

もちろんSNSを活用しなくても、直接企業のサイトから問い合わせるという方法もありますが、SNSで呼びかけることにより先方から声を掛けてもらう方が圧倒的に効率的ですし、何より熱量を持って取り組んでくれる会社が結果的に多いと感じています。

コミュニティの活用
仕事関連のコミュニティという形態自体はもちろん過去からあったのですが、Slackなどのオンラインコミュニケーションツール、およびWeb形式でのミーティング・セミナーが急速に一般化したことにより、これまでよりもその活動がオンライン上で活発になり、情報交換がより盛んになっている印象です。

結果的にコーポレート関連職種のコミュニティも、以前から大きく増えています。採用、広報、総務、情シス、経理など、皆様も目に触れたことがあるコミュニティがいくつかあるのではないでしょうか。

実は私自身も"経営企画コミュニティ"を管理人として運営しています。それこそ採用や広報に比べるとニッチな領域ながらも、600人を超える人が参加しており(2022年9月現在)、日々経営企画に関する様々な質疑応答がオンライン上でなされています。

これまでご紹介してきたようにコーポレートの業務を進める上で有用なソリューションが様々出てきている中、「その存在を知らなかったので業務が進まなかった」という事態は今の時代避けられるべきです。
しかし、日々多くの業務をこなしながら、その上で自分が担当している領域の最新情報を全て把握するというのは一方でどこかで限界があるでしょう。

そんな時に、SNSやコミュニティの力も使ってうまく情報を収集できる人はめちゃくちゃ強いです。
必ずしも全ての情報を常に自分が把握しておくべきということではなく、「いつでも情報が把握できる手段を複数持っていること」が重要だと考えています。

5. 発信力

上述の情報を収集する上でより効果があるのが、「自ら情報を発信すること」です。
これは今のコーポレートの流れ云々ではなく古今東西そうではありますが、基本的には、情報というものは、情報を発信する人により集まっていくからです。

前述SNSという形態が苦手という人は多くいるかと思いますが、SNS以外にも情報を発信する手段は増えています。
今書いているnoteもまさにまさにその中でも良い例かと思います。ブログという形態はそれまでもありましたが、noteの登場により、ビジネスに関する個人の情報発信が一気に増えたのは、皆様も体感しているのではないでしょうか。

私自身noteでの発信を積極的にするようにしていますが、それをきっかけに相談や依頼が増えることにより、自分が関わる領域の情報が自然と集まってくることを実感しています。(以下、"経営企画"、"採用広報"の領域における発信例)

加えて、このような情報発信を行うことが、会社の"採用広報"としてポジティブに働くという効果も大いにあります。

対外的な情報としては事業側が全面に出ることが基本的にはどの会社も多いかと思いますが、あくまで「事業とコーポレートは会社の両輪」です。
それは人事や広報の仕事だから、それは採用が必要な部署の仕事だから、ではなく、コーポレートが持っているノウハウや、力を入れてきた取り組みを外部に公開していくことは、会社の知名度向上や強みを伝えていくことに繋がり、会社としての経営課題である採用を促進するために非常に意味があることです。

また、若干観点は異なりますが、このような発信を行うことは、その領域における自分の専門性を外部に伝えていくことになるため、副次的には"キャリア"にも好影響を及ぼす場合も多く、そういった意味でもやって損はないと言えるでしょう。(端的に言うと、転職エージェントに頼らずとも直接企業から声が掛かるようなコーポレート人材になり得るということです。)

ベンチャー企業のコーポレート担当として持っておきたいマインド

現在の世の中の流れを踏まえて、今後のコーポレート担当に求められることを、5つに分けてご紹介しました。
最後に、この5つを行う上でも、ベンチャー企業のコーポレート担当として心掛けたいベースのマインドについて触れたいと思います。

それは「常に目的思考でいること」です。皆様も日々そう感じているであろう通り、ベンチャー企業のコーポレートは常にやることに溢れています。
職種の括りで言うと異なる領域のことでも、会社を前に進めるために、経営陣や他の部署から突如頼まれたり、むしろあえて自ら巻き取ったりすることは日常茶飯事かと思います。

その中で、会社が目指す方向に正しく向かうためにコーポレートとしてできる支援を最大限行うためには、常に目的を明らかにし、前例に囚われることなく、その目的の達成のために最適な手段を選択することが、結果的に多くの物事を同時に、かつ適切に進められることに繋がります。

今回ご紹介したものになぞらえると、1つめの「ツールの活用」については、最新のSaaSを導入すること自体が目的ではなく、あくまで既存のプロセスの課題の解消のため、その手段としてSaaSを導入するということを見失ってはいけません。
既存の古いシステムを最新のSaaSに入れ替えた結果、コーポレート側の管理は楽になったものの、その他現場の従業員の対応の負荷はむしろ高まった、というような事例は身に覚えがある方も多いのではないでしょうか。

また2つめの「外部の活用」についても、外部委託をするという事象だけを切り出して見ると、コストにセンシティブな経営陣からは反発があることは大いにあり得ます。
決して担当者が楽をすることが目的ではなく、あくまで大上段として持っているコーポレートとしてミッションの推進が目的です。外部を活用しなければそのミッションの何が進まなくなるのか、そしてそれが進まなくなると事業推進にどういうマイナスの影響が生じるのか、それらをセットで話せないと「すぐにお金使わずとりあえずみんなで頑張ってみてよ」と経営陣から言われるということになりがちです。

4つめ5つめの「情報収集」や「発信」についても言わずもがなですが、あくまで業務を推進するための一手段ですので、とにかくTwitterやnoteの更新にばかり時間を掛けているということになったら本末転倒です。

ちなみに弊社ベーシックにおいては、コーポレートに限らず、全社のコンピテンシー(行動規範)として、この"目的思考"の考え方が深く浸透しています(社内では"GOAL ORIENTED"と呼んでいます)。
だからこそコーポレートのどの機能でアクションを取るにしても、忖度無しに健全な議論が常に出来ていると感じています。

ベーシックの3つの行動規範

こちらも特に大企業においては、あくまで会社のために何か改善や改革をしたいと思っていても、前例や慣習を踏襲せざるを得なかったり、マネジメントの鶴の一言で方向性が決まったりと、動きにくさを感じている人は多いのではないでしょうか。
とにかく会社を死なせないためにあらゆることをすべきであるベンチャーのコーポレートにおいては、そのようなしがらみに本来すべきことを妨げられている場合ではありません。

特にコーポレート部門のマネージャーにあたる人は、日々のマネジメントや判断においてこの"目的思考"を意識するということはもちろんですが、徹底的に浸透させるためには、弊社ベーシックがそうしたように、全社もしくは部門として、バリューやクレド、コンピテンシーの形で設定してしまうのは、非常に効果的な方法です。

いかがでしたでしょうか。コーポレートと言ってもご存知の通りそこに属する職種は多岐に渡るため、必ずしも一概に言えない部分はあるかとは思いますが、一定共通すると考えている要素をご紹介させていただきました。
今回の内容が、皆様の日々の業務推進の参考に少しでもなっていましたら幸いです。

(※2023年2月追記)
より簡単に内容をご覧いただけるように、スライド版を作成しましたので、よろしければこちらも合わせてご覧ください。

コーポレート組織にまつわることを中心に、これからもnoteやTwitterで発信していきますので、それぞれフォローしてもらえるととても嬉しいです!

Twitter:https://twitter.com/takeshisumida_
note:https://note.com/takeshisumida_

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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