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現代建築史ノート

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現代建築についてあれこれ思ったこと、考えたこと、調べたことをとりとめもなく雑多なままに書き出したノートたちです。
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大阪万博前夜、新しい価値と仕組みをめざして|林雄二郎と『情報化社会』

大阪万博前夜、新しい価値と仕組みをめざして|林雄二郎と『情報化社会』

2025年、大阪でふたたび万博が開催されることになりました。万博の開催は、視界不良な未来に道筋をつけたり、これからの社会にふさわしい価値や仕組みを描き出したりする絶好の機会。

そういえば、1970年に開催された「前の大阪万博」に際しても、これからの社会をつくる試みが模索されたことを思い出します。それは「未来学」と呼ばれたり、あるいは「情報化社会」として捕捉を試みられたりしたもの。そんな万博前夜の

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相模書房『建築新書』の世界|幻におわった超豪華ラインナップ

相模書房『建築新書』の世界|幻におわった超豪華ラインナップ

対米戦争勃発の年、1941年、『建築新書』と名付けられたシリーズ本の刊行が開始されました。出版社は、今はなき相模書房。シリーズ監修には、岸田日出刀(東京帝大教授・建築意匠・設計)、田辺平学(東京工大教授・建築防災)、田辺泰(早稲田大教授・建築史)があたりました。

刊行予定とされた書目は、なんと全部で109冊にのぼります。国家総力戦にあって、ますます科学技術の重要性が認識されていた当時ゆえに、この

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モクチンメソッド|危機を好機に転換する現代版「計画的小集団開発」

モクチンメソッド|危機を好機に転換する現代版「計画的小集団開発」

木賃アパート。ハウジングの戦後史を辿るとき必ず出てくるこの言葉。たしかに老朽化して空室も目立った状態であちこちに見かけるよなぁ~。これは社会問題にもなっていくよな~。などなど他人事に思っていたのですが、ある本を読んで「あ、そうか!いま自分が住んでるアパートも木賃アパートだ!」って、にわかに自分事になってオドロキました。

そんなキッカケとなった「ある本」とは、『モクチンメソッド:都市を変える木賃ア

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家の条件|村上慧『家をせおって歩く:月刊たくさんのふしぎ』を読む

家の条件|村上慧『家をせおって歩く:月刊たくさんのふしぎ』を読む

月刊「たくさんのふしぎ」(福音館書店)は小学生向けながらも、ときどき度肝を抜く企画があるので油断できません。

家をせおって歩くそんな一冊、村上慧『家をせおって歩く』(2016年3月号)は、わたしたちが生きることと住まうことの関係、それが持つ自由と不自由について考えるヒントを怒濤の如く与えてくれる名作(図1)。

図1 家をせおって歩く

美術家・村上慧は「移住を生活する=移動の中に留まる」という

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建築好きなら読んでおきたい『月刊たくさんのふしぎ』10+3選【住まい・生活編】

建築好きなら読んでおきたい『月刊たくさんのふしぎ』10+3選【住まい・生活編】

福音館書店からでてる『月刊たくさんのふしぎ』は、1985年4月創刊。対象年齢が小学校3年生からとありながら、その内容の濃さとヘンタイさ加減が異常で甘く見るとヤケドします。

「ふしぎ」を知ると世界がかわる!
自然や環境、人間の生活・歴史・文化から、数学・哲学まで。あらゆるふしぎを小学生向きにお届けする科学雑誌「たくさんのふしぎ」。第一線で活躍する研究者や専門家が、世界にあふれるふしぎを、子ども

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