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(7) 所属政党を決め、ついでに対立と分断を根強く植え込んでみる。(2023.11改)

ゴードン、サミア夫妻でダブルチェックしたプランが、外務省と防衛省に提示された。
立案した時点から月日が経過して、内容は野ブタの討伐作戦なのだが、新政権による米加国への援助案という外面へと変わった。
外務省の里中とプランした際に猟友会のハンター派遣よりも自衛隊の射撃部隊派遣の方が現実的と判断した時点で、政府の関与は既定路線だった。新政権誕生のご祝儀のようなものと、モリも割り切った。
ニュース映像では、外務大臣に就任予定と秘書の宮崎氏から聞いている、退院したばかりの梅下議員と、防衛大臣に任命予定の議員から石場与党総裁に「北米野生豚掃討作戦の提言書」が恭しく手渡された。

「内閣初めての仕事となります。何としても成功させましょう」と首相任命式典に臨む石場総裁が発言したのだが、与党らしい意味不明なコメントが理解できなかった。新内閣が作戦を承認する以外に、一体何をしてくれるというのだろう?と。

鹿児島・志布志市、鹿屋市、垂水市の大隅半島3市内で、土日の1.5日間に渡るイノシシ狩りで部隊の成果に手応えを感じていたモリは、北米での活動への不安も無く、2週間に渡る活動を楽しみにしていた。何しろガイド役の2人について行けば確実に獲物に遭遇するので、射撃に専念出来る。その上2人は健脚で、山中でのビバークも問題無いのでハンティングエリアを拡大出来る。

防衛省・外務省に感謝するしかないのだが、米加政府の支援を得ていてハンティング地点までチームごとにヘリで輸送し、キャンプ装備、食料、弾薬まで運んでくれるので、狩りに集中出来る。
唯一真麻と懸念しているのが米加側が用意してくれる「食料が何なのか?」で、未だに内容が分かっていない。
ビールやピザ等の追加リクエストが可能であれば嬉しいのだが、自衛官が大半を占めるからと解釈されて、米軍のコンバット・レーションの類を用意されていたなら、頭を抱えるしかない。
「和食のフリーズドライ食品か、陸自の携行食やレーションを持参した方が良いのでは?」と言う真麻のアドバイスを、外務省と陸自のスナイパー部隊の隊長には伝えて、米加側との折衝をお願いした。

現在米国は副大統領が昇格した共和党政権なので、日米間は刷新された状態になっている。

同じ掃討プランと鹿児島県南部のイノシシ駆除のレポートがプルシアンブルー社から米国穀物・食糧会社カーギ(キ)ル日本法人に提出され、同社本社を経由して民主党大統領候補者陣営の手元に届いた。
今後分断と対立が一層激しくなるであろうアメリカで、暫くの間は2大政党のどちらの顔も立てる策をモリが描いていた。近い将来の日本にとって双方を両天秤に掛けておかねば、鬱屈し、閉塞した日ノ本になりかねない。

準備の整いつつある北米作戦の一方で、モリと外務省の里中は手分けして週末からの東南アジア視察の準備に取り掛かっていた。木曜までの都議会中でも申し訳無いのだが内職をし続けていた。

里中は今回新外相となる梅下の外務スタッフに推挙された。モリ絡みの海外援助案件の調整役の継続を了承され話を引き受けた。新外相とモリを繋ぐ連絡員となってゆく。
その為、新首相、新内閣発足後の国会に常時出席せねばならず、北米作戦の参加は見送らねばならない。それ故に今回の東南アジア視察から同じ部の後輩を充てがう事にした。
本人に申し入れた所、飛び上がって喜び快諾した。名を櫻田詩詠という27歳の独身者で、モリの秘書達にも負けない容姿と能力を秘めていた。
きっと気に入る筈だと里中は確信していた。

鹿児島から帰って来て変化したのは、母と真麻、それに加えて由真の3人が仕事を終えて、会社の保養施設2階のジムでトレーニングするようになった。由真は付き合いなのだろうが、母と真麻は来たる北米行きを睨んでのトレーニングなのだろう。議会を終えたモリと共に車で帰って来るようになった。

翔子と玲子、そして母は大森の家では同じ部屋で寝ているが、鹿児島での疲れが残っているのか、ジムで体を酷使し過ぎたのか分からないが、ジムのシャワー室で汗を流している母は夕飯を食べた後は横になり寝てしまい、鹿児島での話を聞けずに居た。
火曜日になって、娘の真麻から話を聞いた叔母から情報を得る。
「山の中でも宿に帰ってからも、3人でヤりまくっていた」と。週末からアジアに同行する由真は妹から詳細情報を得て、慌ててトレーニングを始めたらしい。

翔子だけでは無い。源家の特異体質は今回のイノシシ捕獲数で立証され、娘たちやママ友達の懸念材料となっていた。性行為云々の話は知らずとも、狩猟時の必須パートナーのような存在として独占されかねない。
シカ・イノシシの獣害問題は都市部を除く全ての市町村の共通課題となっており、駆除活動は地方選挙前の有力政策の柱となっている。
狩猟では源家に勝てないと悟ったPB MartとPB ロジスティクス社代表の平泉里子は、翔子の母が許容範囲ならと、自分の母と年の離れた妹に打診をする。
「東京に遊びに来なよ」と新幹線往復料金プラスαを送金する。「早い方がいい、それも今週中に」モリが日本にいる間に会わせる為だった。

ーーー
法治国家として体を成していなかった日本は、首相を選出する為に半年ぶりに国会開催の招集を行った。新政府は新たな政策を打ち出した訳でもなく、他の総裁候補者同様に「コロナ対策」「経済活動の維持」を掲げ、内容に大差はなかった。そこに「富山・大田区モデル」が加わるか、否かという違いだけしかない。

とは言え、今のプルシアンブルー社に各都道府県を富山県並に一斉に移行するだけの体力は無いのも周知の事実だ。
出来うるのはPCR検査キット、マスク、殺菌用アルコール等の国内製造で対応出来ない品々を提供する程度だ。それに誰も政府与党名義で配布しようとは考えていなかった。

大分入りした金森富山県知事は、斑山富ー元首相の邸宅を社会党党首と共に訪れ、社会党再生プランを提案し、元首相の賛同を得る事に成功する。

47都道府県と県庁所在市と政令指定都市の知事・市長に推薦を含む候補者を擁立し、脱政府、地域主導型の政治と経済を構築する。
手始めに年内4箇所(岡山・栃木県知事選、宇都宮・青森・鹿児島)と来年確定している国会議員の補選に候補者を擁立し、全て勝ち取るという当面の目標を掲げた。

また、政府の支給したアホのマスクは中抜きや業者マージンなど、多額の税金を無駄金とした為、PCR検査キット、マスク、各種アルコール類に加えて、米国産の小麦、大麦、大豆、トウモロコシなどの穀物も供給する。小麦は10月も値上げした政府統制価格よりも安く全国各都道府県の社会党支部から供給すると、金森知事は斑山邸の庭で述べた。また、東南アジア産油国からの石油輸入のメドが立ったので岡山・宇都宮・青森・鹿児島の4市内の2箇所で年内中に8店舗の格安ガソリンスタンドをオープンするとの知事の発言が決定打となる。

首相選出前、内閣が組閣前の金森陣営の社会党入りは新首相誕生以上の話題となり、ある箇所では波紋を呼ぶ、最も慌てたのは厚労省かもしれない。同省が抗原検査を未だに主張し続けていた中で「物量作戦」でPCR検査が普及する事態となりかねない。当然ベトナム製紙マスクが普及するので、アホのマスクの無駄が問われるのも避けられない。
本来なら、あと数日間は首相であり大臣である連中が反論・罵倒すべきなのだろうが、一切なく沈黙するのみだった。

モリも都議会に会派手続きを行い、無所属の会を抜け「社会党1名」となった。
都民セカンド27都議、広明党23都議の50議員の選挙区に社会党候補者を来年7月に擁立し、都議会第一党となると、議会閉廷後に恒例となりつつある単独会見でモリが述べた。

「解党やむ無しと言われていた社会党へ、敢えて合流する目的を教えて下さい。また、どのような経緯で合流に至ったのか、可能な範囲で教えて下さい」

「理由は好きな政党だったのと、全国型の政党で各県に拠点を持っているからです。コロナ対策関連の商品や製品、小麦大麦といった穀類等の提供が簡単にできます。
富山県単独や、地方政党でやろうとすれば何処かと組むなり委託するなり依存しなければなりませんが、インフラ環境も人材も各都道府県にありますので活用するだけです。解党するよりも有効活用した方がいいと思いました」

「斑山元首相がモリさんの党代表就任を求めているとの情報もありますが、党の幹部を引き受ける考えはありますでしょうか?」

「私は都議です。政治家になってまだ3ヶ月です。また、無法国家の暗殺対象にもなりました。なので、極力人前に立ちたくありません。また、母も知事になって3ヶ月です。党に貢献出来るよう馬車馬の様に働くつもりですが、党を担う資格はまだ無いと考えています」

「党で米国産小麦をはじめとする穀物を販売を始めるとのことですが、経緯はどのようなものなのでしょうか?」

「正式にはカナダ産の穀物も含まれます。北米国境の穀倉地帯で野生の豚が農産物に被害を与えているので、今月から始まる駆除活動に定期的に参画します。成果次第で安価に穀物を入手し、これを国民の皆様にご提供します。ガソリン、軽油も同様です。
都議会終了後、東南アジア諸国を訪問しますが、産油国との事業提携に絡むバーター取引で相応の年間消費量の石油を入手します。
国費・・といっても税金だったのですが・・カネをバラ撒いて「外交のアホ」と呼ばれて悦に入っていた首相達が何人も居ましたが、兆単位の金を各国にバラ撒いて、日本の国民に還元されたケースを私は一つも思い浮かびません。

我が新生社会党のコンセプトは地球市民的発想のWin Winの援助を目指し、共存共栄を実現することです。 どちらのスタイルが良いのかは、年内の選挙で有権者の方々にご判断いただきます。
多額の税を毟り取られて、見返りゼロの兆単位の援助と、精々掛かっても億単位の援助で、小麦やガソリンが安く入手出来るのとどっちがいいですか?という幼児でも十分に判断できる話でもって、選挙で問いたいと考えています」

モリが回答すると記者達が黙ってしまったので、会見を終えた。

モリの話を聞く限り「与党寄り」の箇所は自滅党都議の選挙区には候補者を立てないだけの話で、内容自体は「反与党」以外の何者でも無かった。

後に言われるようになる「社会党によるメディアジャック」の始まりの日となった。

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会見後、メディアは新生社会党で話がもちきりとなり、与党の組閣だとか新首相の方針は小さな扱いとなる。都議会で都民セカンドと広明党議員の選挙区に対立候補を立てる理由が「退任する知事が作った政党と、特定の宗教法人に依存した政党には存在価値が無いから」だったので、議会に出席すると、明日は我が身となった50名の議員から睨まれる。その一方で、モリを拍手して出迎える自滅、共産などの野党都議といった明暗の分かれる図式、都議会勢力を真っ二つに分断してしまった。
都知事という後ろ盾を失くした都民セカンドの代表者の意味不明なオロオロ度合いはさておくとして、国政では与党の一員となっている広明党は、党の幹事長が都議のモリに対して面会要請を出してた。

議会の休会時間で「宗教票だけに頼っている政党では無いと理解して貰う」と広明党の幹事長が言っていると記者達が質問して来たので、
「会う時間も無いし、そもそも宗教関係者に会う必要はありません。彼らが話す内容は宗教の勧誘と同じで、話がクドくて時間の無駄です。議論したとしても平行線のままで終わるだけです。宗教票の欲しい自滅党に対するロジックは我々には通用しません。社会党は宗教票は端からカウント対象外としています。
私にはツボも、経典も要りませんし、仮に先祖に悪霊が取り付いていても構いません。取り付いているなら先祖の自業自得であって、私達子孫には何の影響もありませんし、子孫に縋る様な軟弱な祖先では有りません。
一つ言い忘れていましたが、憲法の政教分離の原則の遵守と言う意味合いでも、草加学会以外の宗教団体の支援を少しでも受けている都議に対しても対立候補を擁立します。
「宗教関係者や特定団体から支援を受けている人物を政治の場から徹底的に排除する」
それが我が党の新しい方針となります。宗教団体だけでなく、我が党は日教組や連合なんかも完全に完璧に関係を絶ちます」と言って、満月のように笑った。

共々産党以外の都議全員が目の前が暗くなる。モリの基準で言えば自滅党も立憲民々主党も国民民々主党も東京威信劣化党もグレーな都議ばかりだからだ。
「社会党に鞍替えしてもいいかも」と企んでいる日和見主義な連中の排除にも繋がる。

「彼は事実上の社会党党首だ」と都議会と国会で囁かれるようになる。

米国2大政党には両天秤を掛けて分断を煽ったが、国内では2つの与党内に亀裂を与えて、険悪な関係を醸成するのが、当面のモリのミッションとなる。

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PB Motors Thailand社と同・Vietnam社は台湾ネッドジェン社と共同で、中古車販売事業をタイとベトナムで始めると発表した。
中古車販売なので大々的なニュースとはならなかったが、「精霊が宿る車」として両国で人気を得たアユタヤ、バンコク、ホーチミン、ハノイのPB Motorsの店舗に訪れた客の3割が店頭に並んだ中古車を購入してゆくようになる。
欧州メーカーの10年落ちの中古車なので当然だが新車よりも安い。驚くべきはオリジナル車両よりも燃費が段違いに良く、PB Motorsの3年保証が付いているという点だった。

ネッドジェン車の精霊の宿る車と同じような「売れ方」をしてゆく。
口コミで徐々に広がって行き、新車販売よりも台数が伸びてゆくようになる。

タイではバンコク、アユタヤだけでなく、欧州中古車を販売する店舗がThailand Motors社という企業によって買収され、PB Motorsの中古車だけを販売するようになる。

Thailand Motors社の関連企業、Thailand Foods社がバンコクに出店したネットスーパー「PB Mart」に50%出資し、PB Mart ASIA社の共同事業者となっていた。
業績好調なスーパーと中古車販売事業に投資したのは、ラマ5世の直系子孫のタイ王族達だった。

カンボジア王室、ブルネイ王室、マレーシア、インドネシアのスルタン一族も、タイの王族同様にネットスーパーと中古車販売に関与してゆくようになる。

(つづく)



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