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7年越しの仄暗い退職エントリ〜転職エージェントから逃げました〜

私、転職エージェントを1年で退職していまして。7年経ったいまならその理由をようやく認められます。

「逃げ」ですね。

神田うのさんが「代表作は残せなかった」とインタビューで仰っていて、私も仄暗い過去を認めようと思います。

◆転職エージェントは重すぎた◆

転職エージェント、つまり正社員紹介は私には重かったんですよね。

会社の業績を知り、配属される可能性のある部署やチームと求職者の方の相性を確認し、会社の方向性と休職者の方のライフプランの相性を確認する。

同時にその会社の将来性とその理由が確かなのかを見極める。求職者の方が人生の数年を預ける価値があるのかを見極める。

重い。重すぎる。

言ってしまえば、転職エージェントは求職者の方の人生に責任を持つ仕事でした。社会人一年目の私には荷が重過ぎました。

いや、あれから7年経ったいまでも荷が重すぎます。何歳になってもできなそう。

しかも不幸なことに、転職エージェントとして最初の成約の方が早期離職してしまったのでさらに。喪失からのスタートです。

理由も散々です。私が紹介した会社に入社したのですが、その会社が嘘をついていたんです。

求人票に書いた売上比率や社風に事実はありませんでした。そんな会社なので退職者が相次いでいたようです。だから穴埋めとして転職エージェントを使っていたと。

社会人一年目の私は驚くばかりです。「え、嘘ついちゃダメでしょ」と見抜けない自分は棚に上げて怒るわけです。悲しむわけです。

やり取りをしていた人事のひともすぐに退職し、後任は社長になったのですが、連絡がつかない。どうなってんだ。

「もう出社したくない」

始発の電車に乗ってそのまま遠くへ行こうかと思いました。

◆転職エージェントは「ドンマイ、次に活かそう」が許されない仕事だった◆

そんな怒るやら落ち込むやらな私を見た先輩社員は優しくしてくれました。「そういうブラック企業はいるから。次に活かしな」と言ってくれるわけです。

そんな優しい言葉に対しても怒りがこみ上げてきます。

「騙されて入社したひとの人生は?早期退職という経歴書についた穴は?転職エージェントはどう罪を償えるんだよ?というか励ます暇あったらブラック企業の見分け方を体系化しろよ」

と、自分に向けるべき刃を振り回すわけです。

幸いなことに早期退職したこの方の転職先を支援でき、かつ転職先とも相性も良かったので罪は償えました。

でも、これはレアケースです。通常は「こんな転職エージェントは信じられるか」となります。

先輩キャリアアドバイザーの方との信頼関係ができていたんですよね。その方も私を信じてくれて、私が次に持ってきた求人票を紹介して、とんとん拍子で転職が決まりました。

「神は存在していた、、、!」

と、始発の電車に乗って会社にたどり着くわけです。寝てください。

◆仕事の重さに耐えられず、退職した◆

でも、「転職エージェントを仕事にはできない」と深く刻んだ罪の意識は拭えませんでした。

今思えば、この傷が私自身の早期退職の理由でした。当時の上司には転職先の企業の社長への憧れが理由だと話していましたが、違いますね。転職エージェントが荷が重かっただけです。

転職エージェントは失敗できない。失敗したときに与える求職者の方の人生への損害が大きすぎる。罪を償えない。

その仕事の重さから逃げ出すように退職しました。

まぁ、そんな逃げの退職だったので、次の会社も1ヶ月で退職するんですよね。この時点で正社員のキャリアはほぼ終わりました。

◆逃げたから得たものもある◆

なんて仄暗い7年越しの退職エントリだ、、、でも得たものも大きいです。

ひとつはブラック企業を見分ける指標を持てたことです。希少性のないビジネスをしている会社は、どれだけ採用ブランディングがうまくても中身は黒いことがわかっています。

会社の良し悪しを決める最大の要因は、採用情報じゃないんですよね。ビジネスそのものです。

このようにビジネスモデルや仕組みから会社を見る癖がつきました。転職エージェントに話しているような採用情報は話半分に捉えています。それくらい冷めた目を持っていて、求職者の方の「この会社は大丈夫かよ」を見るフィルターになっています。

あとは、嘘に敏感になりました。ホームページから滲む嘘、人事担当者の嘘、社長の嘘。あらゆる採用情報から滲む嘘に過敏なまでに反応できます。

まぁ、「社風に毎日ワクワクとか書いてある企業は黒な」など歪んだ物差しも搭載していますが(笑)。

社会人一年目以来、転職エージェントを仕事にはしていませんが、代わりに副業・複業エージェントのようなことは楽しく貢献できています。特にビジネスにしていないので、ボランティアの副業・複業キャリアアドバイザー的な感じですが、転職エージェントの経験が活きています。

仕事を探しているひとの人生に責任はいまも持てない弱い私ですが、「その仕事はどんな経験になるか。資産になる経験なのか」には責任が持てるようになっています。

キャリアコンサルティング、とまでは言えないかもしれませんが、ひとの仕事を仕事にする職業とのいい距離感を見つけられたようです。それも「私は逃げた」と認められ、言葉にできるようになったからですね。

退職エントリは仄暗くていい。志望動機になるような転職理由の他にも、できれば隠しておきたい退職理由と向き合うと、仕事とのいい距離感が見つかるのかもしれません。

自分が負える責任の範囲を知っておくことは、働く上で大切だったようです。

7年越しの退職エントリでした。仄暗い。

◆トップ画像はふくりとさんのイラストです◆

トップ画像はふくりとさんのイラストをお借りしました。1年間しか続かなかった転職エージェント時代の私にぴったりです。荷が重すぎてひーひー言っているバナナです。そろそろ転びそう(笑)

当時を思い出させてくださり、ありがとうございました。


CM〜team「最高の会社の辞め方」、退職学グループをはじめました〜

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〜自己紹介〜noteを毎日更新して215日目〜

佐野創太 

サービス・採用広報チーム・Webメディアの編集長、聴き手です。
「届けたい相手へのメッセージを無理なく届け続ける」発信体制を立ち上げています。

最近は退職学の研究者として、「最高の会社の辞め方」をチームで発信しています。

その他の活動としては、ミュージシャンのインタビュアーをしています。ゴールデンボンバーやキズといったヴィジュアル系バンドや、ちゃんみなさんのお話を伺ってきました。結論、ミュージシャン最高。

プライベートではソロ男からの妻ファーストな共働き夫、1児の父です。「睡眠不足の魔の8段階」の最終フェーズに入ったような気がします。

経歴は荒れています。就活迷子→会社員→転職→早期退職→無職→出戻り→独立→複業編集フリーランス(今)です。もう正社員市場、人材市場には相手してもらえなくなりましたなぁ。

ざっとまとめるとこうなります。

【所属、複業先、属性】
◆人間関係をテーマにしたオーネットのオウンドメディア「おうね。」編集長
◆社員シェアリング・複業トレーニングのTonashiba編集長
◆「共感資本社会」を目指す株式会社eumo編集長
◆HED(一般社団法人 法人営業デジタル化協会)編集長
◆日本で唯一のeKYC対応のデジタル身分証アプリを提供する株式会社TRUSTDOCKの採用広報・立ち上げメンバー
◆フリーランス向け報酬即日払いサービス『先払い』を展開するyup株式会社のメディア立ち上げメンバー、サービス編集長
◆"愛"に寄り添うテクノロジー紹介メディアLove Tech Media副編集長
◆退職の手紙で「最高の会社の辞め方」プロジェクト発起人・退職学の研究者
→インタビューしていただきました

→連載がはじまりました

◆共働き小説を婚活アドバイザーの方と執筆中(完全原稿あり)
◆ヴィジュアル系深読みライター(神谷敦彦)の『ヴィジュアル系の深読み話』
◆ソロ男からの妻ファースト、1児の父 New!
◆産休中の妻の付き添い中(里帰り出産中)→出産入院中の妻の帰り待ち→共働き育児中 New!

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