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エッセイ(海外編)

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海外にまつわるエッセイを集めました。面白い体験や大変だった体験、色々綴っています。
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記事一覧

【エッセイ】ガレット・デ・ロワが満たしたのは空腹だけじゃなかった

【エッセイ】ガレット・デ・ロワが満たしたのは空腹だけじゃなかった

*このエッセイは2021年に天狼院書店HPに別名義で掲載されたものです。一部追記修正しています。

「もう1年近く経つんだ」
 フランスに関するFacebookに紹介されている『それ』を見て思わず呟いた。私がフランスから帰国してもう1年になろうとしていた。

 毎年1月になるとフランスのパン屋さんやお菓子屋さんの店頭を埋め尽くす『それ』。失礼ながら、私の中で決して一番好きなお菓子ではない。けれども

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「ロッキー・ホラー・ショウ」の楽しみ方 in Paris(前編)

「ロッキー・ホラー・ショウ」の楽しみ方 in Paris(前編)

 伝説のカルト映画「ロッキー・ホラー・ショウ」(以下、勝手に略して「RHS」という。)をご存じだろうか?
 RHSは、もともと1975年のホラー・ミュージカル舞台劇から始まり、その後、映画化。45年経った今でも世界中で(細々と)公開されている伝説的なカルトムービーである。

 今まで声を大きくして言ってこなかったが、私はRHSが大好きだ。DVDを百回以上は観ており、iTuneストアでも購入し、Fa

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【エッセイ】たまには悪あがきをしてもいいかもしれない

【エッセイ】たまには悪あがきをしてもいいかもしれない

*このエッセイは2020年に天狼院書店HPに別名義で掲載されたものです。一部追記修正しています。

 その日は朝からなぜか落ち着かない気分だった。特段何か嫌なことがあったわけではない。しかし、気分が晴れなかった。なぜだろう?ようやく出張が終わり、これから日本に帰国するというのに。もやもやしながら私はパリの空港へ向かった。

 ドイツのフランクフルト経由で日本に戻るため、フライトの時間を確認する。

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【エッセイ】本の面白さは国境を越える

【エッセイ】本の面白さは国境を越える

*このエッセイは2020年に天狼院書店HPに別名義で掲載されたものです。

「フライトがキャンセルってどういうこと?」
ドイツ・ベルリンのテーゲル空港、ヘルシンキ行きのフライトチェックイン手続きを待っていた私を含む乗客たちが騒ぎ出した。
「チェックインの機械が故障してしまったので、これ以上の手続きができません。すでにチェックインされた方はそのまま搭乗できますが、残りのお客様は振替便となります」

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【エッセイ】ボストン 〜ある冬の日にもらったもの〜

【エッセイ】ボストン 〜ある冬の日にもらったもの〜

「もうこんな時間か。早くチェックインしないと」
 2月のある日、私はジェネラル・エドワード・ローレンス・ローガン空港で時計を見てため息をついていた。デトロイト経由でボストンに着いたが、すでに夜8時を回っている。明日は朝から仕事があり、またとても寒かったため、とにかく早く宿に行きたかった私は空港の出口へ早足で向かった。

 海外駐在や出張の経験があっても、初めての場所はいつも緊張する。今回の訪問先で

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【エッセイ】イタリアのティラミス事件

【エッセイ】イタリアのティラミス事件

「この目の前にあるものは一体なんだろうか?」
 イタリアのとある街のレストランで私は自問自答していた。
 恐らく、私が注文したデザートのティラミスのはずだが、どこからどう見てもティラミスには見えない。これは食してもいい代物なのか、そもそもこれは何なのか。周りの人が固唾をのんで見守る中、私はフォークになかなか手を伸ばせずにいた。

 今から3年ほど前、私は上司たちのお供でイタリアへ出張した。お供と

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【エッセイ】さよなら、テーゲル空港

【エッセイ】さよなら、テーゲル空港

「あぁ、なくなっちゃうんだ…」
 パソコンの画面を見た時、思わず言葉が出た。それはドイツ・ベルリンのテーゲル空港が、ブランデンブルク空港が開港したことに伴い、2020年11月8日のエアフランス、パリ行きを最終便として閉鎖をしたというニュースだった。それは遠い異国のことであるにも関わらず、私は胸が締め付けられる思いがした。

 私がテーゲル空港を使ったのはたったの2回だけだ。しかし、良くも悪くもどの

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