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夢のかけら


物足りなかった。持て余していた。

大学生活が3年目を迎えた頃、夢もお金もなかったが、時間とエネルギーだけはたっぷりあった。僕は退屈な日々の中にいて、未来につながるような、寝食を忘れて没頭できるような何かがほしくて仕方なかった。

現状を打破するためには、今までの自分では到底考えられないような大胆な行動が必要だ。でも何をすればいいのかわからなかった。そんなある日、「深夜特急」という本に出会う。

海外一人旅なんて不安と怖さしかない。

一人旅どころかパスポートを持った経験すらない僕は、そう思い込んでいた。でも一歩を踏み出さなければずっと今のままなのはわかっていた。

数ヶ月後。僕はバンコクのカオサン通りに立っていた。

旅の空の下、心安に。

「旅」という夢のかけらを見つけた19歳の表情は安らかだった。あの、“ただ生きているだけの何もない日々”の方が、よっぽど不安で怖かったと思った。


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