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只見線のあるまちにて2021/04/15

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昨日、一昨日と写真を撮りに出かけれなかった自分は、今日こそは撮るぞという意気込みで出かけたのです。チェーンに油をさした自転車は、心なしかペダルも軽くなったようで、チリンチリンとベルを鳴らして隣町まで出かけたいのですが、冬のあいだ倒れたせいで自転車のベルは壊れてしまったのです。なので嫌なお使いかどうかはわかりませんが、名曲「自転車に乗って」のようにはいかないのでした。

とりあえず今日は会津高田駅から出発することにしたのです。特にこれと言って理由はないのですが、しいて言えば駅前の食堂の玄関にいる子猫を撮りたかったのですが、今日はいなかったようです。諦めて駅のほうを見ると電車を待っている学生がいます。大沼高校の学生さんでしょうか、シルエット越しに女子生徒だとわかります。今年も駅前の花壇にきれいな花を育ててくれよな、そう心の中でお願いして駅を出発することにしたのでした。

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行き先はだいたいは決まっていたのですが、どのルートでいこうか悩んでいたのです。ただ交差点の信号が青だったという理由だけで自転車を直進させることにしたのです。正面にはまだ雪がだいぶ残っている飯豊山が見えます。駅を出発し、踏切を一つ渡るとなにやら畑で農作業をしている人が見えます。こんなところで農作業をして、息抜きに飯豊山を見たらば、どんなに気持ちいいだろうなと思いながらシャッターを切るのでした。

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いつもは通らない道を今日は走ってみます。すると田んぼの中に白鳥が一羽います。驚かさないようにゆっくり走ったつもりなのですが、近づくと羽を広げて数メートルほど飛んで逃げてしまいます。他の白鳥は自分の国に帰っただろうに、なんだってものぐさなやつもいるもんだな、そう思いながらシャッターを切るのでした。

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いつもなら自分に関係のないことだと通り過ぎていく看板なのですが、なにか違和感を感じてよく見てみると、町名と警察署名が古い会津高田のままなのです。高田と本郷と新鶴が合併して会津美里町になったのは、もう十何年も前のことです。なんだって気づかれないまま放置されている看板があるんだろうかと思いながらも、近所にはユースホステルが建っているだけの田んぼの中なので仕方ないかと思いながら、自転車を先に進めるのでした。

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今日行こうと思っていたのは、田んぼの中にある米沢の千歳桜と雀林にある法用寺の虎の尾桜だったのですが、法用寺の雀林(すずめばやし)を自分は長いことじゃんりんと読んでいたのです。別にこれと言って麻雀をするわけではないのですが、じゃんりん、そう呼んだほうがしっくりくる、それだけの理由で他人様の地名を勝手に読み替えてしまう自分がいるのでした。

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そのじゃんりん集落に入ると夕方の犬の散歩をしている人がいます。犬はまっすぐ歩いてくれないようで、さっきも通りすがりの老人保健施設の送迎バスに向かって行ったりと、なかなか先に進んでくれないようです。それでも飼い主のおじさんは怒るわけでもなだめるでもなく、ただ犬のするがままにしているのでした。

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じゃんりん地区を抜けると米沢の千歳桜はもうすぐです。田んぼの中にポツンとあるさくらなので遠くからでもよく見えます。あぁもう散りかけている、ちょっとばかりため息が漏れてしまいます。せっかく見頃を教えてもらったのに、ほんの1週間ほどぐずぐずしていたら満開を見逃してしまったのです。腕時計を見ると只見線がだんだん近づいてくる時間です。望遠レンズを着けていたので遠くから失礼して撮らせてもらうことにしたのでした。

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米沢の千歳桜と法用寺は直線距離で言ったらほんの数百メートルですが、道路を迂回しなければならないので1キロぐらいあるでしょうか。そんな法用寺への坂道へと近づいたとき、カブバイが通り過ぎて行ったのです。リヤキャリアには何らかの農作業用具が入ってます。これは撮らなければ、そう思い追いかけたのですが間に合わず、カブバイは遠く先にまで行ってしまっています。やっぱり超倍率ズームのほうが面倒がなくていいのかもな、こんなときはそう妥協ともとれる考えが出てくるのでした。

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法用寺の表門に到着すると、駐車場のほうから一台の軽トラが降りてきました。軽トラと桜のコラボを撮影したいと思っていた自分には絶好のチャンスです。望遠レンズを広角側へと回しピントを合わせます。今回はうまくいった、そう思いプレビューを見てみたかったのですが、只見線がもうすぐやってくるのです。仕方なく法用寺はさらっとまわってみることにするのでした。

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法用寺には虎の尾桜と言った種類の桜があります。境内ののぼりにも虎の尾桜の文字がなびいています。虎の尾桜って多分遅咲きの桜だったような気がするのですが、まだ咲いていないのでしょうか、地面にも花弁は落ちていません。今度誰かに聞いてみることにしよう、そう思いながらお参りをすることにするのでした。

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「尊農」・・・当然パソコンで一発変換できるわけはないのです。奉納された年を探してみると昭和八なんたらとあり、そりゃそうだよな右から左に字が書いてあるくらいだから古いに違いないと思ったのです。「そんのう」と言えば「尊王」が候補にあがってしまいますが、これを奉納した人々には農業を尊ぶ、そんな気持ちが強かったのに違いないのでした。

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そんな法用寺をあとにし、只見線の撮影ポイントに向かうことにしました。飯豊山をバックに走ってくる只見線が撮れる、このじゃんりん踏切は好きな場所の一つです。まだ時間がある、そう思ってスマホに手をかけようとすると、遠くから警笛の音が聞こえてきます。あわててカメラの設定をいつもの通りに合わせるのでした。

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じゃんりん踏切での撮影を終えた後、ここで次の列車を待とうかと思いましたが、それにはちょっとばかり時間をつぶす必要がありそうです。それならばと自転車を先に進めることにします。いつもの会津盆地で只見線にとって最大のカーブであろう場所です。今日はなんだかトラクタがたくさんいます。数えてはみなかったのですが5台はいたような気がします。きれいに田んぼを耕しているトラクタを見ると、なんだか頭を五分刈りにされているような感じがして、どことなく笑えてくるのでした。

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線路とは反対に山のほうを眺めてみてもトラクタはいるようでした。遠くには、お寺の屋根と桜の木が見えます。軽トラに桜の木が合うと思っていたけど、トラクタにも似合うんじゃないか、そう思わせるなにかがあるのでした。

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ほどなくして下りの只見線がやってくる時間になったのです。線路わきの田んぼには少なくとも2台のトラクタが土を耕しています。どうにか只見線と一緒に撮れますように、そう願ったのも束の間、一台のトラクタが線路とは反対に方向転換してしまいました。もう一台のトラクタは線路の方には向かっているけど、なかなかやってきません。只見線が目の前を過ぎ、通過を知らせる警笛を鳴らしたころ、ようやくトラクタが線路わきまでやってきたのでした。

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只見線とトラクタのランデブーを上手く撮れなかったことに、少しばかり気分を落ち込んだまま次の撮影ポイントに向かおうとすると、目の前に現れたのがいつも笑ってしまう「気をつけて、いってら」の看板です。なんだか今日はいつもと違うぞ、そう思ってよく見ると桜の木と地面には何かの花が咲いていたのです。わかった気をつけて行ってくるぞ、そう思って自転車のペダルを強く踏んだら、撮影ポイントを通り過ぎていたことに今日一番笑ってしまうのでした。

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面白看板に踊らされて危うく撮影ポイントを逃がすところだったのを、すぐに戻って桜の木がある川沿いのところを自転車で降りていきます。川べりに先客がいたのですが、どうやら撮影ではなさそうです。チラッチラッと見ていると何やらモーター音がしてきました。なんだドローンか、そんなものを川べりでやる人もいるんだな、そう思い少しばかり安心した自分は、スマホを取り出し動画を見るのでした。

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1時間の間に3本も通る只見線のラッシュも撮り終え、自宅へと自転車を走らせます。整備された田んぼには舗装道路が縦横に走っているのですが、大通りには信号がありません。学校帰りの中学生が農道から大通りを渡ろうとしているのですが、なかなか自動車の流れが止まる気配がありません。この自転車を最後に撮って帰ろう、そう思って自転車が渡るのを待って、また農道を走っていくのを追いかけて撮ったのですが、本郷のほうに桜の木が見えます。まだ咲いているところがあるんだな、そう思った自分は明日にでも行ってみようと考えながら、その場を離れ自宅へと向かうのでした。

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