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台湾のツボ

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舞台は台湾。台湾で暮らす人たちの日常を切り取った短編小説集です。 普通のガイドブックや旅行記に飽きた方へ。 小説の舞台となっている台湾の観光スポットへあなたも行ってみたくなる…
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#20代女子

コンビニ

コンビニ

コンビニの自動ドアに人が出入りするたびに、正確にはそのドアに人が近づくたびに鳴る、あの音が不快だ。

生粋の台湾人の両親のもと、台北で産まれたが俺だが、親の仕事の都合で小3まで日本の群馬県で暮らしていた。だから、やや方言が混じるものの、一通り日本語が話せる。台北に戻ってきてから中学生くらいまでは、けっこうそれだけで話題に困らなかった。クラス替えをしてすぐの自己紹介でそのことを話せば、だいたいクラス

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ランタン

ランタン

みんな何をそんなに願うんだろう。

と冷めた目で、僕は毎日観光客を見ている。僕は十分でランタン上げの仕事をしている。

台湾で最も有名な観光地と言えば、九ふんだろう。根拠がないと聞いたこともあるが、「千と千尋の神隠し」のモデルになったということで有名だ。

九ふんとは全く別の場所に、十分という場所がある。その名はあまり知られておらず、九ふんのニセモノだと思われることもしばしば。あるいは、何時何分の

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