南米パタゴニア南部トレッキング EP.5 ~虹の大地と肉の大地?編~
南米大陸パタゴニア地方、ロス・グラシアレス国立公園の北部にあるエル・チャルテンを拠点に、トレッキングとキャンプを行った私たちは、辛抱の末ついに奇峰・セロ・トーレとのご対面を果たしました。
アルゼンチンでの野望は残すところあと2つ、フィッツ・ロイ山群の朝焼けと、世界最南端の街ウシュアイアへの訪問です。
朝焼けに残されたチャンスはあと2回、まずは明日の朝、トーレ湖畔から朱に染まるセロ・トーレを狙います。夕食を終えてあたりが夕闇に包まれ始め、そろそろ就寝準備に入ろうかと考えている時、テントの中から悲痛なぼやき声が聞こえてきました。
『パタゴニアトレッキング EP.4 〜セロ・トーレ編〜』はこちらから↓↓↓
◇ 虹の大地
「あ〜、やっぱそういうことか…」
「どうした?」
「やっぱ設定だったわ。俺の写真、カメラのメモリー少なくなった時用の低画質で保存されてた。」
フィッツ・ロイへのトレッキングの時から、スマホに転送した写真の解像度が悪く、宿のWi-Fi環境のせいかと思っていた相方のカメラには、残念ながら数々の絶景写真(低画質ver.)しか保存されていませんでした。
旅先では思わぬトラブルが発生するもの。特に最近は”映え”を気にしてついレンズ越しの世界ばかりを覗いてしまいがちです。こういう時に備えて、一旦カメラを下ろして、目の前の光景をしっかりとその目に焼き付けておくことも大切ですね。
迎えた翌朝、私たちは「カメラ低画質事件」からの悪い流れを断ち切ることが出来ず、セロ・トーレの朝焼けを拝む夢は叶いませんでした。
東雲が期待感を煽るも…
ところで、ここまで多くの方が疑問に思っていることがあると思います。
結局、パタゴニアって暑いの?寒いの?
答えは、「夜は寒い(摂氏0度前後)。昼は晴れれば暖かい(日差しも強い)。」です。一口にパタゴニアと言っても、南緯40度以南に2000km以上はある広大な地域です。そのため場所によって多少の違いはありますが、一般的には12月から3月中旬が夏とされています。
単純に緯度だけで考えてみると、日本で北緯40度線が通っているのは秋田県と岩手県です。それよりも北となると、夏場も涼しいことがある程度は想像出来るでしょう。
観光ハイシーズンでもあるこの時期は、天気が良ければ日中は20度前後まで気温は上昇しますが、夜と悪天候時は一気にひと桁まで冷え込みます。そのため、テントの中では暖かいフリースを着てオールシーズン用の寝袋にくるまるのが快適な過ごし方となります。
私たちは、日の出の時刻に合わせてそんな快適テントから這い出して、もはやお馴染みの小高い岩場に陣取りました。
朝日を待つ人々。気温は夏というのに0度近い。
しかし、山々は厚い雲に包まれてまだ夢の中のようです。しばらく待っても一切出てきてくれる気配がしないので、私たちもテントに戻って二度寝をすると、私は通常3時間のルートを5時間かけてのんびりとエル・チャルテンへと戻ったのでした。
帰り道、振り返ると氷河に虹が架かっていた。晴れたり曇ったりと大忙しなパタゴニアは「虹の大地」でもある。
ちなみに帰り道は相方とは別行動をしました。お互いある程度は山慣れ・旅慣れしていることもありますし、何より約3週間もの期間、常に寝食を共にするのです。
お互いの意見に大きな相違がある場合は、干渉し過ぎずにそれぞれの意思を尊重して別行動を取る。
相方と私とのこの共通認識は、旅先での無用な衝突を避けるためには不可欠な心持ちです。もちろん、この選択ができるのは根底の部分で旅の目的が共有できているからに他なりません。
彼との出会いに感謝、ですね。
◇ エル・チャルテンでの安息日
翌日は、日本を発って以来初めての休養日です。早起きをして、最後の朝焼け山脈ウォッチに挑戦しましたが、村から30分ほどの高台まで寝起きの身体に鞭打って登った甲斐もなく、見れたのはただ強烈な朝日を浴びる半身のフィッツ・ロイでした。
川と岩山に挟まれたエル・チャルテンの後方にそびえるフィッツ・ロイ。ロス・コンドレス展望台より(Googleマップ)
朝日を浴びるフィッツ・ロイ
村に戻ってお土産やトレッキング用品の買い足しなどを行い、カフェでのんびりランチをした後、明日から向かうプエルト・ナタレス行きのバスチケットも購入しました。
アルゼンチンの安くて美味しい牛肉とは今夜でしばらくお別れなので、エル・チャルテン最後の晩餐はもちろん、お腹いっぱいのステーキ・ディナー。これさえ食べればここまでの疲れはすぐに回復するでしょう。
日中再訪したロス・コンドレス展望台。上空を舞うコンドル。
急遽お土産として購入したシャツ。ほとんどの人はpatagoniaブランドのウェアを持って来て記念撮影していたが、筆者はブランドグッズ未所持だった。
強風にウィンドブレーカーを引ったくられかける。突風ではなく、常にこの強さで風が息巻いている。
朝日を浴びて真紅に染まるフィッツ・ロイを見る夢は叶わなかったものの、虹の大地はそんな悲しみの涙に薄っすらと、再び橋を架けてくれました。
◇ 100人いれば、100通りの旅がある 〜珍道中ペアとの出会い〜
話は戻りますが、出会いに感謝といえば、私たちと時を同じくして憧れの大地を縦断していたもう1組の日本人ペアがいました。彼らとの出会いのシーンは、トランジットで立ち寄ったJFK国際空港にまで遡ります。
遡りたくない…(EP.1より)
「おい何時間待たせんだトランプ!!」
合衆国への入国審査を待つ長蛇の列の中でおよそ2時間、そろそろ堪忍袋の尾も切れそうになってきた頃、明らかにトレッキングが目的ですと言わんばかりの格好をした同世代の日本人を発見しました。話をしてみると、次の目的地はブエノス・アイレス。やはり最終目的地はパタゴニアでした。
男女2人だったのでカップルかなと思いきや、2人が出会ったのは出国時の羽田空港が初めてだそう。何でも、彼が一緒に行く予定をしていた友達が出発直前に入院することになり、急遽ピンチヒッターに立ったのがその友達の妹である彼女だとのこと。まさに『100人いれば、100通りの旅がある』を地で行く珍道中です。
100人いれば〜…の元ネタであるたびログPV第1弾。是非ご覧ください。『【PV】15人の旅の思い出を集めて世界一周してみた。【たびログ】』(YouTubeより)
そんな彼らと、何とチャルテン村での最後の晩餐会の仕込み中に再会しました。偶然にも同じゲストハウスに宿泊していたようです。
日本国内の大会に出場する程の本格派トレイルランナーである彼は、チャルテンから延びる各トレイルをきっちり走破し、もちろんペリトモレノ氷河での氷上トレッキングツアーへの参加にも成功していました。
トレイルランニングとは
陸上競技の中長距離走の一種で、舗装路以外の山野を走るものをさす。トレランやトレイルランと略される。山岳レースとも呼ばれる。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
『トレイルランニングを始めるべき10の理由 - Red Bull』
順番や時間の割き方は違うものの、同じ日本人かつ実際にパタゴニアに来訪するほどの山好きとくれば、当然訪れるスポットは似通ってきます。私たちはここまでの体験談を語り合い、有益な情報を交換し合うと、お互いのこれからの健闘を祈って2度目の別れを告げました。
最後の晩餐ではなくいつかの夕食。特大の激安牛肉ステーキと大盛りパスタ。
◇ 飛び出せ、牛肉の大地!
日本を出発してからはや8日、私たちはアルゼンチン側パタゴニアならではの絶景、ならではの気候、ならではの食べ物、ならではの出会い、ならではのトラブル(?)等々、できることのほぼ全てを達成してきました。
皆様には大変ありがたいことに、私たちのこれまでの濃密な旅路にお付き合い頂いている訳ですが、夢の旅はここでようやく序盤戦を終え、明日からはいよいよ怒涛の中盤〜終盤戦へと突入していきます。
牛肉の大地・アルゼンチン側パタゴニアを飛び立ち転がり込んだ先に待っていたのは、思いがけない試練の数々でした。次回、『陸路越境!南米大陸!!編』。お楽しみに!!
飛び立てるか
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★バックナンバー『南米パタゴニア南部トレッキング』
『EP.1 〜ペリト・モレノ氷河編〜』
『EP.2 ~エル・チャルテン編~』
『EP.3 ~フィッツ・ロイ山トレッキング編~』
『EP.4 ~奇峰!セロ・トーレ!!編~』
ライター:ふくだえつし @帯広
好きな食べ物:パスタ
Instagram:https://www.instagram.com/c.esshi/
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