『さかしま』からみる書斎論:インテリアは自己表現手段に
フランスの小説家ジョリス=カルル・ユイスマンスの作品『さかしま(原題:A Rebours)』の主人公デ・ゼッサントの書斎の特徴から、その品々によって、いかなる意思表示を自他へ行い得るかを検討する。
本作は1884年に刊行されていることから、既に19世紀末の近代社会であり、作中の時代設定もこの頃である。
主人公が(没落)貴族であることからも、財産整理によって、質素だが比較的豊かな生活であり、実際、職には就いていない。そのため、以下紹介する書斎(自宅)に居ることが大半といった「隠遁生活」を営んでいるのである。
西洋社会における隠遁生活は修道院や、貴族によって養われた思想家によるものなどがあり、日本における隠者文学の先例と類似している。今日の「隠居生活」や「アーリーリタイア」などとは異なり、思想的・信条的目的に基づいて、世俗から離れる行為であり、逮捕を免れるために逃亡する生活ともまた一線を画す。
彼は一族の古城を売り、新たに郊外に購入され、意匠に凝って作られたものであるため、完全なる趣味表現の手法の一つとして捉えることが可能である。
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