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翔太鈴木
2022年7月19日 08:49
理の額を、汗がしたたる。尻のポケットからぶら下げたタオルを抜き出し、汗を乱暴に拭った。「…ふぅ」ビルの清掃のアルバイト。夏休み中のこの時期は繁忙期で、地獄のような忙しさだった。 換気のために開けている窓も部屋の片面しかなく、風通しは悪かった。そして、その窓から直射日光が容赦なく部屋に入ってくる。しかも、電気代をケチったビルのオーナーから「冷房をつけるな」とお達しがあり、まさに蒸し風呂状態だ
2021年10月20日 16:28
「…ふぅ」その日の全ての授業が終わり、理(おさむ)が帰り支度を始めていた。「宗悟、なんか楽しそうだな」クラスメイトの菜田仁(さいたじん)が加賀宗悟(かがそうご)という男子生徒に声をかけていた。宗悟は「おう、やっと今日から始まるんだよ」とワクワクした様子で答えていた。「お、部活?」「おう、すっげー楽しみなんだ」そう言いつつ、机の上にまとめた空手の道着に手を触れた。その会話を、理が何
2021年10月6日 14:10
朝。登校途中の晴香が、学校の近くの道で赤信号に捕まり、足を止めた。「…まだまだ寒いな」入学から少し経った、ある日の朝。四月だというのに朝はまだ寒く、晴香が白い息とともにそうつぶやいた。「晴香!」遠くから名前を呼ばれる。横断歩道を挟んだ向こう側の道で、ジャージ姿の宗悟が大きく手を降っていた。「あぁ」と小さく手を降り返す。宗悟が横断歩道を走って渡ろうとするが、信号が赤なのに気づきいて足を止め