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みたものきいたもの

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プライベートで行った美術館やらなんやら。 その体験を書いてます。
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の、ついでに美術館【老舗酒造「出羽桜」が運営している美術館】

の、ついでに美術館【老舗酒造「出羽桜」が運営している美術館】

成人式(今は二十歳を祝う会と言うらしい)の挨拶のため、地元山形へ帰ってきた。
いつもは落語をやって笑ってもらうわけだが、今日は違う。二十歳のみんなに真面目な挨拶。多少、笑いどころはつくるが、メインはそこではない。いかにして、二十歳のみんなの心に突き刺すことを言えるか。
それを考えすぎたため、多少強気で攻めすぎたのはいなめない。気づいたらこんな事言ってた。

「18歳の頃、僕はこの町が好きじゃなかっ

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の、ついでに美術館【蔵王の老舗旅館が運営している美術館②】

の、ついでに美術館【蔵王の老舗旅館が運営している美術館②】

さて、貸し切り状態で始まった美術館であったが、品揃えがめちゃくちゃ良いのだ。

さらに、江戸時代に使われていた煙草入れに印籠(薬入れ)があったが、どれも素敵なものだった。説明によると、

とのことである。

山形にどうしてこれだけの品があるのだろうか。はっきり言って、なめてました。
ごんなさい、、、

こちらの美術館はタカミヤホテルグループが運営している。タカミヤホテルグループというのは、県内でホ

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の、ついでに美術館【蔵王の老舗旅館が運営する美術館①】

の、ついでに美術館【蔵王の老舗旅館が運営する美術館①】

成人式で挨拶の、ついでに美術館へ行ってきた。

普段から落語家として、全国さまざまな場所へ行く。交通費もいただけるので、そのついでにいろんな場所に行けるというのが、落語家としての特権なのだ。嬉しいね。
というわけで、今回は成人式(今は二十歳を祝う会と言うらしい)の挨拶の依頼があり、地元山形に来た。山形では、お盆で上京している人たちも帰りやすいということで夏に成人式を行うらしい。

朝が早いため、前

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噺家が聞いたハナシ-さくらんぼの実染めの着物-

噺家が聞いたハナシ-さくらんぼの実染めの着物-

山形での仕事の合間に、着物の展示会へ寄った。たまたま入ったのだが、ふとした出会いがあった。

それは、さくらんぼの実染めの着物である。

着物において草木染めというものは、草木であればなんでも染めることができるらしい。だが、色落ちが激しいものが多く、なかなか商品になりづらいのだ。紅花や藍染は有名だが、さくらんぼの実染めは聞いたことがない。その珍しさもさることながら、反物自体も魅力的で、すぐに購入し

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噺家による文楽のススメその三『女殺油地獄』

噺家による文楽のススメその三『女殺油地獄』

【文楽のススメ】そのニでは、『心中天網島』について書いたが、今回はこちら。

『女殺油地獄』

こちら、パッと見よめないだろうが、タイトルに「殺」と入ってるし、さらに「地獄」も入ってるし、なんだこのタイトル!っては具合である。
たまに映画やドラマで、タイトルと内容が異なる場合があるが、この作品はタイトル通りの内容なのだ。読んで字のごとく、女を殺して油まみれで地獄なのだ。
まさに、

女殺油地獄

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噺家による【文楽のススメ】そのニ『心中天網島』

噺家による【文楽のススメ】そのニ『心中天網島』

【文楽のススメ】その一では、文楽がいかに敷居が高いかを説明してきた。ここから、実際に作品に触れていきたいと思う。
先月観に行ったのが、この作品。

『心中天網島』
うん、読めないと思う。

『しんじゅうてんのあみじま』と呼ぶ。
こちらの作品は近松門左衛門の作品であるのだが、近松門左衛門という名前くらいは聞いたことはあるはずだ。日本のシェイクスピアと言われるほど、近松は様々な戯曲を作ってきた。先月、

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噺家による【文楽のススメ】その一

噺家による【文楽のススメ】その一

落語家として、演劇であったり映画であったり、様々なところに足を運ぶようにしている。
その中で、古典芸能である文楽と出会い、好きになり、観に行くようになっていった。

しかし、多くのひとからすれば文楽ってなんすか?というレベルだと思う。
だが、安心してほしい。

落語家もあんまりよく分かっていない。

落語の噺には、歌舞伎であったり文楽のことであったり、古典芸能がつまっており、言わば親戚みたいなもん

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最恐のグルメ王と一緒に

最恐のグルメ王と一緒に

「一緒に美術館へ行きませんか?」

とある後輩の前座さんに誘われた。
みんなそうだと思うのだが、やはり落語家の私も後輩に誘われるのは嬉しい。

その後輩さんは、最恐のグルメ王だ。
彼は食に貪欲で、セミを食べる、豚の脳みそを食べる。機会があれば、人間も食べたいと言った。詳しくはnoteの「寄席芸人グルメ」に彼のことを書いてあるので読んでいただきたい。

「兄さん、ここの美術館へ行きましょう」
くしゃ

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写真家と寄席芸人と思い出と

写真家と寄席芸人と思い出と

−見るものすべてが写真になる

これは、ニューヨークを中心に活動していた写真家ソール・ライターの言葉である。

まずは僕の好きな写真家について書く。
ソール・ライターが脚光を浴びたのは83歳という遅さなのだが、彼の写真の特徴は色彩であり構図だ。

始めチラシをみて、かっちょいいと思いソール・ライター展へ行き、やっぱりかっちょいいとなったのだ。

雨粒に包まれた窓の方が、私にとっては有名人の写真より

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空也上人

空也上人

たまに実家に帰ると、驚くほど家の様子が変わっていることがある。居間に新しいソファーがあったり、母がハワイアンを始めて陽気なスカートが干してあったりとさまざまだ。
その中で最近特に驚いたのが、近所にある観音様の管理をするようになっていたことだ。話を聞くと、村の中で管理しているらしく、その担当になったとのこと。仕事内容は、毎日観音様の扉を開け、また御朱印を求められたら、参拝客の方がうちへやってきてそれ

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祈り・藤原新也

祈り・藤原新也

カミさんと世田谷美術館へ行くことになった。

今やっている展示が藤原新也という人なのだが、日曜美術館という文字通り美術番組で企画展の紹介をしており、一瞬見て、行きたい!となった。
「有名な人?」
とカミさんに聞くと、
「超有名だよ。」
カミさんは絵を描いている人なので、当たり前だが、超詳しい。写真家で、1983年に出版された「メメント・モリ」という本が未だに有名で売れているらしいのだ。
今の美術館

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膨大な時間

膨大な時間

先日、グランマ・モーゼス展へ行ってきた。

世田谷にある砧公園の中にある美術館なのだが、日曜ということもありすごい人出だ。
季節が冬から春に変わり始めたポカポカ陽気の公園ではキャッチボール、バトミントン、ピクニックなどを満喫している家族連れが多く、世田谷美術館に入ると同じように家族連れが多かった。これだけ家族連れが多い美術館は初めてで、公園と美術館の境目がない感じが新鮮である。

グランマ・モーゼ

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落語と浮世絵と

落語と浮世絵と

落語家の僕は最近、浮世絵にはまっている。

よくジャンルを問わず美術館へ行くのだが、海外の絵の方が見る機会が多く、浮世絵は地味という印象のほうが強かった。

個人的にはいまだに葛飾北斎はそんなに好きじゃない。

きっかけは川瀬巴水という画家である。そこからいろんな浮世絵を観るのだが、浮世絵から醸し出される雰囲気、構図、情景の美しさに惹かれていった。

この間は町田市国際版画美術館へ行ってきた。

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少女漫画にこんにちは

少女漫画にこんにちは

どうやら僕はカワイイが好きみたいだ。

そう自覚したのは約半年前、弥生美術館でやっている水森亜土展で作品を見たときであった。

落語家という職業柄、おじいちゃんに会うことが一番多く、特に修行中はカワイイに触れる機会は皆無。「師匠粋ですね」ということはあっても「師匠カワイイですね」という機会はまず無かった。

水森亜土展以降は、そういう展示に対して前よりも敏感になった。特に水森亜土展をやっていた弥生

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