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日記3

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#創作

汚泥重ねた路で藁を齧って

汚泥重ねた路で藁を齧って

 期待が頭の中を駆け巡っている。其れもそのはずで、今歩いている路の先が見えてしまっている状態なのだから、なにか変化がほしい選択が欲しいと常に考え望んでいる時に期待は頭を揉みくちゃにする。
 もう路の先が見えていしまっている。少し前までは路というのはなにか曲がった感じとか、二手・三叉に別れた感じとか、色々な様相を見繕っていた。先が見えたと思っていたら、靄や霧がかかって先の路が不明瞭になり行き先を閉ざ

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鮎と一筋の赤い線

鮎と一筋の赤い線

 川を渡ろうかと思っていた。対岸を眺めやるとなんかいい感じの景色が見えるはずと信じているからだ。
 渡るためには川がどういう状態なのかを知らなければならない。色鮮やかな婚姻色を纏ったオイカワがヒラヒラと泳いでいるような小川なのか、それとも灰色を纏りどっしりと水中を泳ぐノゴイがいるような滑らかな止水域なのか。なんにせよ、穏やかな様子であると渡りやすい気がするのでそちらのほうがいい。
 苔がこびりつい

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言伝もたらすハゲタカ一丁

言伝もたらすハゲタカ一丁

 通勤路に大きい電光掲示板があり、そこではいつもサイネージ広告が流れているのだが、目を向ける度に堀江貴文がWi-Fiをおすすめしてくる。僕はそれがイヤでイヤでたまらない。通勤という今から嫌というほど苦痛を味わう路の途中でなぜ余計な苦痛を味わなければならないのか。野菜もしっかりと接種しているというのに。あ、チゲ野菜炒めとハイボールください。
 と、書くとまるで日常の些細なことに不条理を感じる繊細な心

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部屋の中で先細るしかない

部屋の中で先細るしかない

 外に出て人と会話し景色を享受しない限り先細っていく。部屋に籠もってじめじめと本ばかり読んでいると、つまらない人間になっていくぞ、ということだ。これは押井守の言うところの「マンションのドアとドアを行き来するような映画」であり、起伏がなく平坦でつまらないものと言っても差し支えない。
 会社に行くため外に出るが、仕事の話以外を口にすることはせず、仕事を切り上げれば自宅に戻り、栄養補給・生命維持のためだ

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〆は白飯に限るがゆえ

〆は白飯に限るがゆえ

 友人を酒を飲んでいる時に締めのタイミングになった。酒を飲んでいるときの締めというのは、もう此れ以上酒を飲むことはしませんよという意思表示でありながら、このまま酒を飲むこと止めるのは惜しい、素直に退いてしまっては何かしら悔恨が残る可能性がある。であれば、酒の代わりに何か食い物を食べて嬉しいとか温かい気持ちになって解散しようそうしよう、ということである。つまるところ、なんか美味いもんでも食って帰ろう

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おでんと資本社会

おでんと資本社会

  職場で隣に座る同僚が、私は毒舌だ。私にかかれば一般ピープルくんなどの自尊心はズタズタに引き裂きながらも笑いに昇華できる腕前を有している。そのお陰で、会社では今のような地位を築き上げ給与もガッポガポ稼いでおりますさかい、と喚き嘶ておりました。
 その自信満々の様子にすっかりあてられた某は同僚に「それでは某に何かを言ってみてください」と懇願してみました。すると、同僚は一言だけ「死ね」と仰りました。

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ぬらり、歯が溶けてもダイバーシテエ

ぬらり、歯が溶けてもダイバーシテエ

 ぬらり、とあんまり元気がない感じの気分に陥っており、家に帰れば一気に酒を煽って昏倒気絶直前に天井のシミを眺めては、瞳孔・水晶体・硝子体の中で反射している虚像を追いかける生活を過ごしておりました。その怠惰な生活、いやはや怠惰とは何事かね。この生活のおかげと強調するべきでしょう。この生活のお陰で、酒が内包する強めの酸性により歯はまっさら抜け落ち今では蒟蒻も食いちぎれないほどに食べ物を困っております。

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沖縄って良いところだと思ってます?今の沖縄ってこうなんですよ

沖縄って良いところだと思ってます?今の沖縄ってこうなんですよ

 今や沖縄の人間は地上で暮らすことを諦めた。
 蒼くどこまでも広がる空、緑が煌々ときらめく森林、水平線の何処までもを支配している海、草原を駆けるマングース、屈託のない子どもたちの笑顔。その全てを諦めてうちなーんちゅは地下に潜ってモソモソと蠢きながら生活をしている。
 眼の前に広がるは土塊と木の根、動物かなんかの骨と死骸。近代的なものと言えば、急ぎで持ってきたオイルランプぐらいだ。スマートフォンには

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酒力が足りない

酒力が足りない

 酒力が足りていない。知らない間に枯渇してしまったみたいだ。
 酒力とはなにか。説明が難しいのだが、タバコが好きでばっかばか吸っている人間が「ヤニが切れた!」と喚き散らしているようなものと似ている気がする。いや、決して中毒ではなく。飛行機の搭乗口直前に「パスポートがない!」と慌てふためいている感覚に近い。つまり、めちゃくちゃ危機感を覚えているというわけだ。
 ここ最近、体調に気をつかって酒を飲むタ

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