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【MEMBER'S VOICE #8 岡田亮】スポンサーシップのあるべき姿とはなにか? システム×デザイン思考で再定義したい

 私たちSports X Initiative(SXI)の一番の特徴ともいえるのは、メンバーの多様性です。実績に限らず、事業開発、ブランディング・マーケティング、各種制度設計、データアナリティクスなど、多様な専門性を有したSports Xのアルムナイメンバーを、リレー形式でご紹介させていただきます。

岡田亮(Okada Ryo)
◎経歴

國學院久我山高校 → 明治大学 → 朝日新聞社
◎私にとってSports X Leaders programとは…
「一度きりの人生をRedesignする場」

 みなさん、こんにちは。岡田亮と申します。私はSports X Leaders Programを「一度きりの人生をRedesignする場」と捉えています。少し大げさかもしれませんが(笑)。プログラムの内容、志高く多様性のある仲間たちとの出会い、活動を通じて得た経験は、私の人生に大きな影響を与えました。

 私は朝日新聞社のオリンピック パラリンピック・スポーツ戦略室という部署で働いています。現在はTOKYO2020と日本バスケットボール協会とのパートナー契約の担当をしています。今回は、そんな私のこれまでの経歴、Sports Xにチャレンジをした経緯、そしてこれからのSports Xに期待すること、についてお話をしたいと思います。

「スポーツの仕事がしたい」と志した10年前の夏

 小学生の頃、監督がコンゴ、コーチがイギリス人というユニークなサッカークラブに入団しました。まさにJリーグブームの影響を受け、ランドセルよりサッカーボールと過ごす時間の方が長かったです。サッカーに限らず、さまざまなスポーツが好きでした。2000年にさいたまスーパーアリーナで行われた、NHLの開幕戦へ父親に連れて行ってもらったこともよく覚えています。

 サッカーの実力は決して誇れるものでなく、Jリーグのユースチームには入れませんでしたし、高校時代は公式戦のベンチにすら入ることができませんでした。大学は体育会でプレーする自信がなく、同好会でプレーしました。カフェレストランでのアルバイトに励み、サッカーやスポーツと距離をとっていた時期もありました。

 転機となったのは、今からちょうど10年前。大学4年生の時に受講した原田尚幸先生の『スポーツ・マーケティング論』の授業でした。スポーツの仕事はスポーツメーカーやチームで働くだけでないことを知り、国内外のスポーツビジネスの事例を多く学ぶことができました。フィールドワークとして川崎フロンターレの試合でのボランティアも経験しました。

 学生生活最後の夏休み、原田先生のご紹介でトランスインサイトの鈴木友也さんが主催されている『NYスポーツビジネス視察ツアー』に行く機会を得ました。約1週間、MLB、MLS、全米オープン、マディソンスクエアガーデンなどを見て回りました。アメリカには、スポーツが日常に溶け込んでいて、尊敬し、心から楽しもうとする人々の姿がありました。そして、「スポーツの仕事がしたい」と心の底から衝動が湧いてきました。

oakdaryo_写真① 試合中にも関わらず席に座らず団欒を楽しむファンたち_シティー・フィールドにて

 大学卒業後、朝日新聞社に入社しました。日本が初めてサッカーのワールドカップに出場した1998年フランス大会。当時小学生だった私は、新聞に載っているサッカーの記事や写真を切り抜き、スクラップノートを作っていました。「自分もいつかこのユ二フォームを着たい」と夢描いて練習に励んだわけですが、その原動力になっていたのはメディアを通じて見るサッカー選手の姿だったのです。

 入社して4年間は新聞販売店の方々と仕事をする部署に配属され、販売店の経営者の皆様から経営、財務、労務、税務などさまざまなことを学ばせていただきました。先輩方にも本当に恵まれ、365日が仕事のような生活を送り、社会人としての基礎を築くことができました。そして2015年の春、いまの部署に社内公募で異動をしました。

 その年の年末、私にとってのターニングポイントがありました。満席で立ち見客も大勢いる東京体育館で、観客を熱狂させる高校3年生のある選手に心を奪われました。現在、NBAで活躍している八村塁選手です。私はウインターカップで無双する彼のプレーに興奮し、「バスケっておもしろい」と心から思いました。翌年開幕することになるB.LEAGUEのスポンサーになるべきだと、動き始めた瞬間でした。

なぜSports Xだったのか?

 スポンサーシップの仕事は華やかなイメージがあるかもしれません。しかし、実際は地味な仕事も多く、社内外の調整ごとが多くあります。「目的設定→アクティベーション→効果検証」という教科書通りのPDCAサイクルを回したいところですが、言うは易し……です。仕事柄、ほかのスポンサー企業の方々と情報交換をさせていただく機会も多いのですが、企業によってさまざまな課題を抱えているようです。

 スポンサーシップという構造には、目的設定、ナレッジの可視化、社内外とのコミュニケーション、費用対効果の検証、など多角的で複雑な要素が多いです。スポンサーシップのあるべき姿とはなにか、2020年以降企業によるスポーツへの投資はどう変化していくのか、という問題意識を個人的に抱くようになりました。

 そんな中、中学時代のサッカーのチームメイトであり、社会人になってからも付き合いの濃い田中裕太氏から「おすすめだから参加したほうがいい」とSports Xを紹介されました。彼は1期生として参加していました。大学院などいくつか候補がある中で、彼の口コミが最終的な判断材料となり、2019年にSports Xの門をたたきました。

okadaryo_写真② 中学のサッカー遠征以来のバスで横並びな私(左)と田中氏_平昌オリンピックにて

Sports Xに参画して起きたマインドセットの変化

 Leaders Programに参加をして、以下3点の特徴を強く感じました。

 1.システム×デザイン思考を学べること
 2.アルムナイの存在(バックグラウンドが多種多様、専門性が高い、グローバル)
 3.海外の大学との強固な関係

 システム×デザイン思考は、複雑な課題を整理してアタックするための思考法です。受講後、私は仕事のパフォーマンスが向上したと実感しています。仕事はもちろんのこと、日常生活や人生設計にも応用ができますので、さらに習熟していきたい分野です。

 また、同期をはじめ、アルムナイはとにかく個性豊かで、さまざまな立場からスポーツ界に携わっています。平均年齢も若く、グループワークでは当時31歳の私がチーム最年長でした。さらに、ほとんどのメンバーが英語を使いこなします(というわけで私も英語の勉強に身が入ります)。

 2期のプログラムでは、ニューヨーク大学、サンフランシスコ大学(現地)の授業が各4日間ありました。どちらの大学の授業でも、スポーツを産業として捉え、ステークホルダーの関係性やスポーツの価値の具現化がされていました。非常に学びが多かったです。現地の大学院生との交流も大変刺激になりました。

 10年前に志したスポーツビジネスの道。幸いなことに、スポンサー、事業主、セールス、広報、メディアとしてさまざまな役割を経験してきました。これから先のキャリアを見据えとき、私はSports Xと出会うことができました。これからの人生を再設計するうえで、十二分の刺激を与えてくれたと思っています。

okadaryo_写真③ 2期生と先生方

スポンサーシップをRedesignする

 さて、Leaders Programの内容についてもご紹介したいと思います。プログラムには約半年間のグループワークがあります。私たちのチームは『スポンサーシップをRedesignする』というテーマを設定しました。上記の通り、複雑な課題のあるスポンサーシップをシステム×デザイン思考を用いて再定義の糸口を得ようと思ったのです。

 私たちは「ライツホルダーが自分たちの価値を具現化するための指標が必要だ」という仮説を立て、スポーツの本質的な価値を可視化するためのワークを繰り返し行いました。
 議論の末、オリンピック精神である “Respect” “Excellence” “Friendship”という3つの価値が、まさにスポーツ特有のものだと定義づけました。それらを中心に、さらに16個の価値に細分化し、「スポーツの価値16類型」を作りました。発表会では、16類型を活用することで、企業とライツホルダーがマッチングしやすくなるのではないかと提言をしました。

 発表会を終えてからも、スポンサー企業の事例を構造化したり、実際にスポンサーセールスをしてみるなど、提言の深化のためにグループでの活動は続いています。

okadaryo_写真④ グループワーク発表会の様子

『Giveの精神』にあふれるSpots X

 Sports Xは今年度から一般社団法人Sports X Initiativeとなりました。それはインプットするだけの組織ではなく、「アウトプットをしていくんだ」という意思表示だと私は捉えています。

 本業はもちろん、ほかのプロジェクトにも参加したり、家庭を持っているメンバーも多いので、組織の運営や成長のためにはアルムナイ一人一人が当事者となり、アクションをしていく必要があります。

 そこで大事なのは『Giveの精神』だと思います。Sports Xを立ち上げられた先生方や、アルムナイの姿勢はまさにGive, Give, Give。何かを犠牲にしてでも利他のために動ける人が、Sports Xには多くいます。私もそんな一人でありたいと思いますし、これから新たに加わるメンバーの皆さんもきっとそういうマインドを持たれていると期待しています。
 今後10年、20年先を見据え、一緒にアウトプットしていける仲間たちに出会えることを楽しみにしています。

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