フォローしませんか?
シェア
月星真夜(つきぼしまよ)
2024年2月29日 07:12
図書館の窓からの眺めは、木の芽がまだ外に出る勇気を出せずにいるかのような、どこか寂しげな色合いだった。そんな景色をぼんやり眺めながら、ウサギはカメに問いかけた。「カメくん、自分の前世が何者だったか、覚えてる?」彼女の瞳は時間を超えて、はるか遠くを見ていた。「江國香織さんの『いつか、ずっと昔』という本を読んだの。本の中の女の人が言っていたわ。人間になる前に私はヘビだったって。それを読んではっとし
2024年2月22日 07:25
大粒の雨が一定のリズムで冷たく傘を打ちつけていた。図書館で過ごした静かな時間から一転し、ウサギは外の厳しい寒さに身を震わせながら、水たまりを慎重に避けて帰路についていた。彼女の心は、まだ温かい図書館の中の物語の世界に留まっていた。ウサギの心を満たしていたのは、ロバート・A・ハインラインの「夏への扉」。物語の主人公、飼い猫のピートをこよなく愛するデイヴィスの姿が、まるで鏡に映る自分のようで、30
2024年2月21日 07:02
その日、ウサギは図書館に続く道をぼんやりとした視線で歩いていた。彼女は昨夜、ジョージ・オーウェルの「一九八四年」を読み終え、その物語の世界観に深く浸っていた。「この本で一番心に刺さったのは、『言葉を破壊する』という考え方だわ。言葉が破壊されれば人の思考の範囲が狭くなるなんて、今まで考えたこともなかった」とウサギは内心で動揺しているようだった。彼女の隣を歩くカメは静かに頷いた。「僕たちが感情
2024年2月8日 07:22
まだ路地の片隅に少しの雪が残っている中、ウサギとカメは寄り添って歩いていた。周りは静寂に包まれており、二人の足音だけが図書館へ続く道で響いていた。ウサギはフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を読み終わったばかりで、その物語の深い意味に心を傾けていた。「ねえ、カメくん」とウサギは静かに言った。「この本を読んで、アンドロイドにも感情があるかもしれないと思ったの。少し驚い