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売上を上げない勇気

「売上を上げない選択をした」と聞いたらあなたはどう思うでしょうか?

強がり?金が余っている?やる気ないの?単なるバカ?廃業?

様々な”つぶやき”が心の中で登場することでしょう。そんな反応を無視するかのように突き進む選択をしたのは、他でもない僕です。

売上を上げないとはどういうことなのか?そもそも、なぜ売上を上げることを捨てたのか?売上を上げないことで何が起きたのか?

じっくりと自分に向き合い、「思考を整理」してみたいと思います。

1.売上を上げない選択

「売上」という文字は”売り”を”上げる”と書くから、売上を上げない行為とは、商売の世界では存在するのをやめますよ!と宣言するのに等しいかもしれませんね。

しかし、この真意は「目の前の売上を目的にした行動を減らす」という意味です。

そして、昨年末に次のようなメッセージをSNSに投稿しました。

来期は仕事の本数を半分に絞ります。

売上が減ろうが、そう決めた。お金に困らない程度だけ残して後はたぶん辞退することになるだろう。今のサイクルではリピート案件だけへ。

「ペイン回避」よりも「ゲイン獲得」の自分の衝動を大切にすることに決めた。いつもと同じことをしていたら、5年後も10年後も日常風景が変わらない。

いつもと異なる風景を見たいなら、いつもと異なるサイクルを作り出す。原理原則はいつもシンプルだね。

いつ死ぬか分からないという死生観の中で本当にこれが俺の人生に必要?
ここは金を求めるべきところ?この時間は他人のためでは?これって俺以外でもできるよね?これってうちの会社でなくてもいいよね?

こう考えると、ペイン回避の時間は、極限まで取り除かなければならない。

一度、今のサイクルを強引に止め、立ち止まらなければならない。

リセットしなければ小さな安定に、安住して他人の人生を生きることになる。10年後に我にかえると残されるのは、老けた自分の姿だけになってしまう。

安定と引き換えに他人に時間を売り渡すサイクルが続きすぎたようだ。

2020年、起業20周年。著者デビュー10周年。

ロジックより大切なものは、自分の衝動だと今さら気がついた初老のつぶやき…(^^;)

決めれば、新たな流れが始まる。
退路を断てば、新たな世界が見えてくる。
手離すから得られるものもある。

経験的にはゼロになっても、底力が出て最後はお金もなんとかしてきたからこの経験値が身体にある以上、怖さはない。

小さな安定というぬるま湯が自分を蝕んでいる気がする。

最近、
社交辞令以外で人に頭を下げてないなぁ
恥もかいてないなぁ
誰にも怒られてないなぁ
生活に困ってないなぁ
人間関係にも悩んでないなぁ.

これで「そこそこ、まぁまぁ、それなりに」という俺の嫌いな言葉に毒されていたんだと思う。

ただ、嘆いても自己卑下しても何も始まらない。現実を直視し、受け入れ、
コントロールできる未来にシフトチェンジを。少なくとも未来に怯えるウサギでは何のための人生かって思うな。

と言いつつ、明確な正解なんて分からないから高速で仮説検証していくのみ!

コンセプトは『次世代に何を残すか』。

大きな反響がまわりから押し寄せてきました。

マジ?生活大丈夫?継続中の案件は?

想像以上に驚きをもって反応されましたね。SNSの表面的な文字のパワーは強く誤解を招くことも多いようです。

厳密に言うと、「売上の”上積み”を狙わない」「目の前の売上確保のためにシャカリキになって行動しない」これだけです。

もちろんこれでは、労働集約型でプロフェッショナル業(芸能人・弁護士・税理士等も似た構造)をしている限り食えなくなります。そのため、前年比の売上はリピートを中心に確保し、年収も1円も下げない体制という前提はありますよ。

これを口頭で説明しても、まだ信じられなーい!大丈夫?の反応が多々残りました。

先のSNSの投稿でも書きましたが、人も会社も次のステージに行く前に、いったん立ち止まって「あり方」を見つめ直すって大事だなぁと痛切に思うのです。

「やり方」は常に進化しても、「あり方」とは自分の中でブレない価値観や軸のようなものです。

これが目先の仕事に追われていて、やみくもに売上だけを求めると、自分が分からなくなることがあるんですよね。

だから、キリが良いタイミング、節目節目で原点回帰や内省によって、心の本音にアクセスすること(あり方を問い直す行為)は、長い目で見ると売上が上がることにもつながると思うのです。

ただし、問題が一つだけあります。

「あり方」を見直すためには、「心のゆとり(≒時間のゆとり)」が必要ですが、詰め詰めのスケジュールではそれも不可能になってしまいます。

※注意:

ちなみに僕の仕事はコンサルや講師業・著者のため、きわめて労働集約的で、単価に加えて、「稼働時間=売上」という構造上の問題もあることを補足しておきます。

そこで最後の手段は一つ。

心のゆとりを見い出すためにも、強引でもいいから物理的には「時間のゆとり」を創出すること。そのためには、売上を落として経営の減速をはかってもいい。難しい決断が必要だったわけです。

まとめると、以下のようになります。

「売上を上げない選択」≒「時間を創出する選択」
「時間の創出」⇒ 「稼働を抑える」⇒ 「売上減の許容」 ⇒ 「あり方の見直し」 ⇒ 「次のステージへの階段を創出」

ひとことで言うと、次のステージへジャンプするために「しゃがむ時間」をつくったということです。

ちなみに、これは1年間限定の仮説検証でもあります。

2.売上至上主義から脱した他社事例

僕の場合は、あくまでも次のステージへ上がるために、じっくりと考え、感じ、思考を整理する時間を取ろうと決めて、売上拡大を1年間限定で目指さないことを決めました。

一方、主旨は違っても、同じように売上を上げることを捨てた経営者がいるようです。

目先の売上拡大にとらわれず、経営のダウンサイジングによって少量・高単価モデルにシフトしてブランド価値を上げていった企業、また、自分の働きやすいモデルを構築すべく、売上拡大より働きやすさを重視した企業。

その形態は様々です。

倒産寸前の赤字レストランが、余計なことをやめるたびに業績がぐんぐんUP!食べログ「全国チョコレート店ランキング」第1位、1本3000円、究極のガトーショコラだけを販売して超人気、ケンズカフェ東京オーナーシェフ、驚きの成功メソッド!

【こんなことを「やめて」みました!】
★ディナーをやめたら、倒産回避!
★ランチとカフェをやめてガトーショコラ専門店にシフトし年商4700万円!
★ネット通販をやめたら、年商1億500万円!
★シェフ業をやめて店の経営に専念したら、年商3億円!
余計なことをやめるたびに、事業も収益もどんどんUP!
いったい何をやめるのか? やめ方、やめどき、
やめる代わりに「強化すべきこと」、
実践してうまくいったノウハウを、本書ですべて明かします!
あなたも、まず何か1つ、捨ててみませんか?

【目次】
序 章 忙しすぎて、儲けることをおろそかにしていませんか?
第1章 余計なことをやめるたびに、会社が大きくなった
第2章 余計なことをやめたら、こんなにいいことがあった
第3章 「余計なことをやめる」代わりに、ますます強化すべきこと
第4章 「余計なことのやめ方」にはコツとタイミングがある
第5章 ブランドは、余計なものを捨てた先にある
終 章 人の役に立とう
(Amazon紹介文より)

売上に振り回されず、忙しさに振り回されずに、「あり方」を見直し、結果として高収益企業に生まれ変わったケンズカフェ東京のストーリーは僕の決断に勇気を与えてくれました。

また、少し前に話題になった『売上を減らそう』という書籍にも、どこかシンパシーを感じました。

・ランチのみ、の国産牛ステーキ丼専門店
・どんなに売れても、1日100食限定
・営業、わずか3時間半
・インセンティブは、早く売り切れば早く帰れる
・飲食店なのに、残業ゼロ
・なのに従業員の給料は、百貨店並み

社員を犠牲にしてまで 「追うべき数字」 なんてない 。
「働きやすい会社」と「経営」が両立するビジネスモデルとは京都の小さな定食屋が起こした、奇跡の経営革命!
堀江貴文さん監修のもと出版されている『まんがでわかる 絶対成功!ホリエモン式飲食店経営』(講談社)で、佰食屋はこんなふうに紹介されています。

・サービスを極限まで絞ることで売上を上げているお店
・飲食店の形は自分の人生に照らし合わせて決めることができる

この2行の冒頭、「サービス」と「飲食店」を「働き方」に変えるとこうなります。

・働き方を極限まで絞ることで売上を上げているお店
・働き方の形は自分の人生に照らし合わせて決めることができる

つまり、どれだけ儲かったとしても、「これ以上は売らない」「これ以上は働かない」。あらかじめ決めた業務量を、時間内でしっかりこなし、最大限の成果を挙げる。そして残りの時間(人生)を自分の好きなように使う、ということ。飲食店関係者だけでなく、すべての働く人たちに、この2行に集約された佰食屋のビジネスモデル、働き方のすべてを共有したい。そう思い、この本を書きました。(Amazon紹介文より)

働き方や幸せの定義から経営のあり方を進化されていった佰食屋の事例は、自分の価値感を強く問い直すスパイスになりました。

こうして様々な事例をみていると、「こうあるべき!」というあるべき論や、「周りはこうしているから・・・」という世の中の空気は自分の発想を貧しくさせるだけのようにも思えます。

つまり、様々な形態が経営や仕事にはあっていい、時期によってフェーズによって様々なペースがあってもいい。

これを改めて痛感することになっていったのです。

まとめると、以下のようになります。

・自分 = 時間の創出型
・ケンズカフェ東京 = 少量・高単価のブランド型
・佰食屋 = 働き方・幸せ改革型

形式、フェーズによって売上を上げるか、一定にするか、いったん下げることを許容するかは、自分が好きなようにきめればいい。これこそがダイバシティ(多様性)である。今の心の持ちようです。

※注意:

決して、仕事や経営のダウンサイジングを勧めているわけではありません。あくまでも、あるべき論や社会の空気に振り回されずに自分のペースで自分なりの正解を定義しましょう!ということです。

僕自身は、1年間限定で今のタイミングだけ、いったん売上拡大(売上の上積み)を捨てるスタンスです。

なお、ここで売上重視か?利益重視か?という議論は横に置きます。コンサル・講師のような自分が商品の場合は、「売上=粗利100%」のため、すべての業界に当てはまるわけでもありませんから。

3.売上の上積みを止めて何をしているか?

さて、「売上の上積み活動を止めて、創出される時間でいったい何をしているのか?」という疑問が周囲からもたくさん降ってくるわけですが・・・

実は、何もしていません。

厳密に言うと、目標を立てて計画を立てて・・・のようなPDCA的生活をしてしまうと、またもや同じループの繰り返しに舞い戻ってしまいますので、主体的に何かを考えて実行することを放棄しています。

考えることよりも自分と向き合い、「何を感じるか」に舵を切ったため、最低限の仕事以外、PDCAサイクルを止めています。

じゃぁ、暇なの?

という声もちょくちょく返ってきますが、何をしているかと言えば・・・

美味しいコーヒー飲みながら読書して、暇があれば運動して、出張に引っ掛けて遠方に一人で出かけ、これまで会っていなかった人に会いに行き、感じることが増えてきたら、一気に「じぶん会議」で放出。

メモ1枚とペンさえあれば、思考は自由に解放され、自分らしさが極まってくる。こんな体験の日々を送っています。

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心と頭の中が放出されたら、整理しては新たな方向性の光を見い出す作業。

これ、すなわち「じぶん会議」というものです。

ビルゲイツも重視する「じぶん会議」は過去の投稿もご参照くださいね。

世間の雑音とは面白いもので、人と違った行動をすると、必ずネガティブな反応が返ってきます。

そんなにノンビリしていて、大丈夫なの?
時代は高速で変化しているのについていける?
スタートアップ企業は寝ずに働いているよ!・・・

はいはい、、、

もう世間のノイズにはお腹いっぱいです!!

「人は人、自分は自分」ですからね。

世間に合わせることが自分の人生ではありません。
世間に時間を奉仕することが自分の人生ではありません。

一度、世間のノイズを断ち切り、自分のルーチンを止め、普段のループから脱線してみること

個人的には、思考の中で”脱藩”した幕末志士の心意気ですから、前向きな減速なのですよ。

売上の上積みを狙ってあくせくしいた日々をいったん止めると、「感じる」ことが増え、思考まで深まるため僕は”減速”の決断をしてよかったと心底思います。

まとめると、以下のようになります。

「考える」 < 「感じる」
「他人向けの時間」 < 「自分の時間」
「PDCA」 <  「OODA」

4.売上の”減速”をしてよかったこと

最後に、売上の減速という決断がもたらしたメリットを整理しておきたいと思います。

(1)長期的なことに時間をさけた

忙しい日々が続くと、つい短期的なことに終始してしまいがちです。

ところが、短期的な売上を減速させたことで、長期的な種まき仕事など「緊急ではないが重要な仕事」に時間を割くことができるようになりました。

感覚的には10%切りそうだった長期的なことへの時間配分が、40%まで達したのですから、ココが一番のメリットかもしれません。

「時間のゆとり=心のゆとり」であって、「心のゆとり=時間のゆとり」でもある。シナジー効果につながっている気がします。

(2)客単価が上がった

目先の売上拡大を意識しないことで、すべての仕事を請けなくなりました。つまり、せっかくいただくありがたいオファーでも内容を吟味して、一部断っているという意味です。

断ることに関しては、取引先との関係性やお金の問題、時間の問題などが絡み、是非は単純に語れるものではありません。また期待を一部裏切るという捉え方もできるため、心苦しい部分も少しはあります。

しかし、長期的な展望に立ち、目先の売上の減速も「決断」した以上は、なし崩しに引き受ける仕事のサイクルは断ち切らなければ、自分の決断の意味がなくなってしまいます。

決断とは、「決めて断つ」ことですから。

決めるだけ決めて、断たなければ前進しないわけです。

断っていると何が起きるのかといえば、真に僕や弊社とお付き合いしたい人、僕自身の価値の本質を分かっている人からしかオファーが来なくなります。

これは、値下げ競争やコンペにかけられる世界から外れますので、ある種の無競争市場になります。

断ることは、時間の創出だけではなく、自分を安売りしないことにもつながり、結果として客単価やギャラの上昇につながるという好循環に入ってくれました。

(3)感じる心を取り戻せた

仕事的にも思考の整理を専門にしているほどですから、考え思考することに比重がおかれてきた昨今。今回の決断で、考えることよりも「感じる」ことの幅が広がった感覚をもっています。

特に、自分自身の感情と向き合い、自分の心に素直になれるようになってきました。

これまでは、目先の売上が絡むことで感じた素直な衝動に目をつむり、頭で考えた「損得を重視」してしまう帰来がありました。ところが、損得よりも「快不快」を重視し、やっと自分を取り戻せた感覚です。

5.やりたいように、やればよい

今回は、自分の決断に至る思考過程を公開する形式で執筆してきました。

でもね、こうして書き終えてみて分かったことがあります。

それは、どこにも正解はないということです。
自分の人生、他の誰かが正解を規定するわけでもないということです。

人生、仕事は常に直線的かつ連続的に進むなんてことはありません。紆余曲折しながら、非連続的に進化していくことだってあります。

そのため、「あるべき論」をいかに抜くのか?

これが、今回の決断と思考の整理結果であると言えます。

思考の整理結果を改めてまとめ直すと、以下のようになります。

<7つの教訓>

① 固定的に考えないこと
② 一つの考え方に固執しないこと
③ 世間の空気に飲まれないこと
④ 他人の視線を気にしないこと
⑤ 正解なんてないこと
⑥ 正解や幸せの定義は人それぞれ
⑦ 常に前進だけは続ける前傾姿勢が大事

要するに、

やりたいように、やればよい!

これに尽きます。

昨年末の決断は大きな、大きな「気づき」というギフトになって返ってきました。

”減速”という起業以来、自分史上初の実証実験は1年間限定で試みたいと思います。

「あるべき論」に捉われている、どこかの誰かに届けばと思い書きました。
何かのお役に立てば幸いです。

著者・思考の整理家 鈴木 進介

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