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鈴懸ねいろ
2024年10月1日 17:22
十月らしさ、秋のはじめらしさとは何だろう。空の高さと、湿度の低い涼しい風と、夏の間は身を潜めていた花たちの香りのこと。金木犀が咲き始めた街を、長袖のブラウスで歩くこと。だとしたら熱い陽射しを避けて日傘を差し、半袖のシャツで出歩く今は、いったい何という季節と名づければいいのだろう。きっともうすぐ。もう少しで秋は来るはずと何度も思い待ち焦がれていたのに、秋の使者の姿は街な
2024年3月1日 16:20
三月には三月の音がある。三月には三月の空気の匂いがあるように。渡る風や鳥の声。草木が芽吹く時の、かすかな破裂音。猫のハミング。これからくる季節は、恩寵に満ちている。花の咲く瞬間に立ち会いたい。寒さに耐えて握っていた手を開く季節。解放された心も光を求めていて、自分もたしかに自然の一部なのだと感じることができるのだ。♧♧お知らせです。日本左利き協会さんのホームページで
2023年11月1日 06:12
月替わりのカレンダーが残り2枚になりました。いつのまに?こちらの都合も聞かずに勝手にどんどん流れてゆく時間に、ちょっと待ってよと声をかけたくなりました。11月。私が住んでいる街では、空気が乾いて空がぽっかりと青くなる季節です。風は冷たくても陽当たりさえ良ければ、そこは穏やかなサンクチュアリになります。たいていは地理に詳しい野良猫が先に微睡んでいて、特等席を取られちゃったな
2023年9月28日 11:07
満月を見上げると、心の窓がそっと開く。それは昼間とは違う心の使い方だ。窓を開いて月の光が心の深いところまで射し込んでくると、なぜだかすべてが解き放たれてゆく気がする。ベランダの手すりにもたれて、あるいは帰宅の道の途中で足を止めて、わあ、月だ!と眺める時。みんな一瞬、無に還るでしょう。それから少しずつ思いが胸によぎっていく。満月に願いをかけて祈ったり、この月をあの人も見ているだ
2023年9月10日 16:40
日本左利き協会さんのホームページにて掲載させていただいているショートストーリー第3話【Man in the mirror】の後編が公開されました。暑い夜を少しだけ涼しくするお話です。ショートストーリーですのですぐに読み切れます。よろしかったら読んでいただけると嬉しいです。☟******9月最初に書いたお知らせを誤って消してしまいました。泣なので再度あらためて載せ
2023年8月1日 12:28
久しぶりの雨音に耳を傾けているうちに、寝入ってしまったらしかった。夜の窓の隙間から雨の匂いがした。何日も何日もひとしずくの雨さえ降らなくて、地面は干涸び植物たちは渇きに喘いでいた。ああ、やっと潤うんだね。樹木は何でも覚えてしまう伸び盛りの子どものように、どんどん雨水を吸いこんでゆくのだろう。やがて外が明るくなってきたけれど、いつものような強い光は入ってこない。起き出してカ
2023年5月31日 19:07
傘に当たる雨の音が好きです。ユウウツになりがちな梅雨のシーズンではあるけれど、楽しみを見つけながら歩けばなんとかしのげそうな気がします。雨に対して前向きになる方法のひとつとして、傘を新調することをおすすめします。その時はできるだけ自分の好みにしっくりくる傘を選んでほしいです。その傘をさしたくて、雨が待ち遠しくなるかもしれないから。♧おしらせです。日本左利き協会さ
2023年5月2日 16:08
ほんの少し。というものは、知らないうちに積み重なってゆくものだ。忙しさにかまけて気づかぬふりをしているうちに部屋の隅に埃が溜まってしまったり、棚の上に何気なく置いた本がいつのまにか増殖していたり。些細なことだからと誤魔化しつつやってきたつもりでも、物事の結果は正直なもので、ふと見やると大きな埃の塊や難攻不落の積読の山がそびえていることになる。♧以前、私は左利きだという