いつかやるなら今!? 満足高まるマーケティング
以前はものすごく喜んでいたけれど、いまや当たり前になっているサービスってありませんか?
それを説明するのが「顧客満足のピラミッド」です。
私も十数年、この考えを用いて様々な取組をしてきました。
あなたのまちづくりやビジネス、きっとすべての活動において役立つ考えだと思います。
本質サービスと表層サービス
まず、サービスは2種類に分けられます。シンプルな例で示します。
➊本質サービス
本質サービスとは、その商品やサービスを顧客が利用することで当たり前に得られる機能のことを指します。
例1 ホテルでは「宿泊できること」「お風呂に入れること」
例2 レストランでは「注文通りの料理が提供されること」
(上記の例は非常に分かりやすいものですが)つまりは、顧客として、直接的に求める当然の機能です。これは、一般的な基準もあれば、それぞれの基準もあるでしょう。
本質サービスが一定の水準を満たしていることは前提といえます。
大事なポイントは、本質サービスが低下してしまうと顧客満足度が著しく低下する可能性が高いという事実です。
➋表層サービス
一方、表層サービスとは、サービスの質をさらに高めるための機能を指します。
例1 ホテルで、すべて超一流のベッドが使用されている
例2 レストランで、注文を取るスタッフが常に笑顔で好ましい
本質サービスが一定の水準である場合に、表層サービスの向上は顧客満足度の飛躍的な向上に効果的です。
表層サービスの推移
上記の「超一流のベッド」や「スタッフの笑顔」などは廃れることのない表層サービスとして例示してみました。ここで大事なのは、表層サービスは時間の経過に伴って変化する可能性もあるというポイントです。
例えば、身近なスーパーマーケット。「時間の経過による推移」に着目してご覧ください。
新型コロナウィルスよりも前の時代を想定してください。
消毒液を設置していて清潔感溢れる店舗運営を行っているスーパーマーケットには特別な価値があったと思います。2010年代から様々なコード決済が誕生して流れに合わせて即対応をしていたら、コード決済ユーザーからはありがたいと思われたでしょう。キャンペーンも豊富でしたよね。
しかし、いまの時代ではどうでしょうか?
もちろん人にもよりますが、「消毒液はあって当たり前」「コード決済の対応は当たり前」になっています(繰り返しますが人によります!)。
何が言いたいかというと、少し前の表層サービスが本質サービス化しているという現象です。以前は、表層サービスとして更なる顧客満足度向上に寄与したものの、近年はどこでも当たり前となり、もはや、更なる顧客満足度向上にほとんど寄与しなくなってしまった以前の表層サービスはいくらでもあります。
となると、また新たな表層サービスを考え、他社と差別化して満足度を向上させていかなければなりません(いうまでもありませんが、表層サービスのなかでも、不易流行、2パターンがあります)。
ちなみに、いまの表層サービス(図の右下)の例は、実際のものとなります。適切に管理された空間に犬を預けることのできるサービスは、びっくりでした。
顧客満足のピラミッド
マーケティングをしている方に多く知られている「顧客満足のピラミッド」は、世の中の現象をとてもよく表しているので、私はとても好きです。
ここから大事なポイントを挙げていきます。
上下の幅が満足の大きさです。ですので、「あって当たり前」の本質サービスにあたる満足度は著しく低く、「あれば嬉しい」の表層サービスは満足度が著しく高いです。
しかも、表層サービスはどれか一つあるだけで、満足度が高まるというのが何よりの示唆です(表の例でいうと、属性ABがなくても、属性Cがあるだけでピラミッドの頂点まで満足度が高まります)。
また、表の青い矢印に着目ください。
表層サービスを強化すると、上の方向(満足の向上に寄与)に伸びます。
一方、本質サービスを強化しても、横の方向に伸びます。残念ながら、満足後は一定以上の向上はないのです。言い換えれば、不満やトラブルの解消というディフェンシブな効果が生まれます(本質サービスが良くないと言っているのではなく、本質サービスは大事です!)。
しつこいようですが整理しますと、
本質サービス(属性1・2・3・・・)は、一つでも欠けることができないものです。
表層サービス(属性A・B・C・・・)は、どれか一つ卓越していれば、満足度を一気に高くすることができます。
では、ピラミッドを大きくするためには、どうしたらいいでしょうか?
➊ 底辺を広くする
➋ 高さを上げる
このどちらかとなります。「満足度」という意味では、どちらの方が効果が高いでしょうか?当然➋ですよね。
しかし、「➋表層サービスだけ極めればいい!」と思って、本質サービスをいい加減にすることは得策ではありません。
このピラミッドの底辺部は、本質サービスが支えています。
本質サービスの属性は、どの一つでも最低許容水準を割ってしまうと、他の全てがよくても全体的な満足が崩れ落ちます。大きな不満が生じてしまいます。トラブルにも発展しかねません・・・
一方、表層サービスは、そもそも始めから期待されていないサービスです。なくても不満は出ません。しかし、表層サービスを受けた際には、その驚きや感動、感謝、好意などと共に満足を上方に一気に伸ばす役割が期待されます。
つまり、本質サービスは、どの属性も最低許容水準以上を維持することが重要であり、表層サービスは、ターゲットを絞ってそれを高めることが、全体満足を高めることに効果的といえます。
顧客満足のピラミッドのジレンマ
分かりやすいように観光まちづくりの例で考えてみます。
本noteを書いている2024年において、訪日ゲストへの多言語対応の情報提供は当たり前化しつつあります。しかし、10数年前はそうではありませんでした。
パンフレットやサイネージを更新したり、HPの多言語化を進めたり、Googleマップやトリップアドバイザーへの掲載に尽力したり、語学のトレーニングを受けたり、多言語翻訳アプリを学んだり、おもてなしの練習をしたりといった自治体はそう多くありませんでした。
以前から多言語対応に取り組んでいた自治体や民間企業は、訪日ゲストの高い満足を得ることに成功しただけでなく、来訪者のSNSや口コミでたくさんのプロモーション機会が生まれたり、たくさんの補助金を受ける機会を得たり、注目を集めたり、優秀事例で表彰されたりなどと、早期に取り組む生みの苦しみ以上に、評価や実績・成果を得ることに成功したケースも多いのではないでしょうか。
では、多くの仕事や活動のうち、本質サービスを重視している傾向が高いのは、なぜでしょうか?
それは、一つには「楽な判断だから」かもしれません。本質サービスは誰もが必要と思うので、誰も反対はしません。
一方で、表層サービスは好き嫌いが個々人によって異なりますし、「そのサービスに特化していいのか」という判断も難しく、判断にあたっては責任・勇気・覚悟などが必要です。
または、決済が上へ上へとエスカレーションしていく大きな組織の場合や集団でのコンセンサスを得る場合などは、どうしても「ディフェンシブに物事を考えてしまう」かもしれません。
だから、賛同が集まる(異論が出ない)本質サービスを重視し、可能性のある表層サービスを検討したり絞り込むことが難しくなってしまいます。
まとめとご提案
以上、まとめますと私からのご提案は以下の3つです。
➊本質サービスの更なる充実や拡充にかけるリソース
(99%できていることを99.1%に伸ばそうとするようなイメージ)
→それを表層サービスにあててみてはいかがでしょうか?
➋いずれ本質サービス化し、自分たちも取り組むのであれば・・・
→「どうせやるなら今でしょ!?」と思って効果の高い表層サービスのうちにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
➌時代の変化で、いつの間にか本質サービス化
→もし、そうなっていたら、信頼や満足を大きく損なっている状態です!ですので、日ごろより社会に目を向けて計画やふりかえりを行えるといいですよね!
不満の解消と顧客が感動する魅力づくりは別物。
顧客満足のピラミッドで、自分の仕事や活動を見直し点検してみましょう!
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