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和食と日本酒を嗜む #おだしと、おさけ。すずめ

 おじさんたちが仕事の疲れをアルコールで流す、新橋はそういう場所だと思っていたが、実は開拓すればするほど魅力のある街だった。「すずめ」の客層は女性客からお年寄りまで様々で、飲み屋と言うよりは小料理とお酒を嗜む割烹料理店のよう。

 お店は烏森神社の真裏、飲食店が密集した通りの中にあって、寿司界隈では伝説的な「新橋 しみづ」の横にある。小さくて分かりづらいお店なので、ここを目印に行くと分かりやすい。

「新橋 しみづ」が目印。この奥に「すずめ」がある。

 割烹料理店のような要素はメニューにも。「おまかせ5品」を頼めば、その日のオススメや提供のスピードを考慮して、5品を順番に持ってきてくれる。日本酒は数十種類の中から選ぶが、何を飲めば良いか分からなければ店員さんに選んでもらうこともできる。お酒を片手に、何に出会えるのかワクワクしながら1品目を待つ。


磯つぶ貝のうま煮

 一品目から立派なつぶ貝が出てきた。貝をそのまま煮て凝縮させた旨味は口当たりがよく、スッと舌に浸透していく。身を上手く取り出すにはコツがいるようで、一番奥に潜む肝を食べられずに終わってしまうことも。苦労して辿り着いた肝のほのかな苦みは、出汁と混ざり合って味の深みに変わった。

あん肝

 つまみの王道、あん肝。おまかせ5品を通して一番濃厚だったこの味。丁寧に掴まないと崩れてしまう柔らかい質感を見れば、食べずとも美味しいことが分かる。クリアで爽快な味わいの夏季限定酒「るみ子の酒」を交互に行き来していたらすぐになくなってしまった。

たこ焼き風さつま揚げ

 さつま揚げをたこ焼き風にするのは何だか邪道な気もしたが、食べてみて印象が変わった。まず舌に触れるのはソースとマヨネーズの味、でも本番はここから。大きめに切られた具材の旨味が衣の中から溢れて、最初の“居酒屋”チックな印象から“和食”としての味わいに変わった。

鰹のたたき

 この時期のさっぱりとした味わいの鰹には葱と和辛子を包み、酢橘を振って食べる。これだけ薬味を付け足しても十分に対応できるだけの厚みを持たせて切りつけているので鰹の味を阻害せず、バランスを保っていた。夏を感じさせる爽快な味。

蟹クリームコロッケ

 まるで甲羅をそのまま衣に置き換えたかのように詰まったほぐし身は繊維が見えるほど粗く、蟹の香りをダイレクトに感じられる。火入れが甘みを誘導し、揚げ物ながら落ち着きのような上品な味わいに仕上がっていた。タルタルソースの玉葱は粗く刻んでさっぱりと仕上げているので、蟹を引き立たせる役に徹していた。

 タルタルソースと酢橘を半々にかけて食べても美味しい。つまみとしても、料理としても完成度の高い逸品。

鶏牛蒡ご飯

 おまかせ5品には入っていなかったが追加で注文したご飯。具にもご飯にもまんべんなく出汁が染み込み、滋味深い牛蒡、鶏の筋肉質な食感、人参の甘み、、、と詰め込まれた味に胃を癒される。アクセントの山椒が香りにもアプローチしてくる、優しくも刺激的な一杯。

 料理6品+お酒3号で12000円弱。居酒屋と思うと安くはないが、割烹料理と思えば高くはないと感じた。ここの店主は頻繁に新メニューを開発しているようで、通い続けても飽きない店でもある。店主のInstagramには店で提供しているメニューの作り方も載っていて面白いので気になる人は是非。


新橋のおいしいお店レビュー↓



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