「初討伐」

 静かな平原の上。血まみれの剣を握りながら、僕はただ目の前を見つめていた。そこには脇腹から血を流した魔物。既に息絶えているのだ。ピクリとも動かない。

 討伐した。初めて命を奪った。冒険者になって初めての討伐。それに対して抱いた印象は恐怖だった。

 剣先を通して、相手の命が消えていくのが手に取るようにわかった。確かに相手は敵意を持って、僕に襲いかかってきた。それでも僕は命を奪った。その事実が恐ろしくて、たまらなかった。

「ありがとうございました! 助けていただいて!」
「ありがとう! お兄ちゃん!」
 突然、大きな声が背中にかけられた。忘れていた。僕はこの母子を救うために剣を振るったのだ。二人が助かった。それだけでどこか心が軽くなった気がした。

「どういたしまして」
 僕は一息ついて、口角を上げた。

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