「彼にとっては一大事」

 茜色の夕日が空を染め上げる頃、僕はタイムカードを勢いよく切った。なんとしても、帰らねばならなかったのだ。飲みに誘ってくる同期や上司を振り切って、キャッチの兄ちゃんの誘いを断って走り続けた。なんとしてもなさねばならない。

 走れ。もっと走るんだ。そうでなければ間に合わない。セリヌンティウスを思うメロスのように走れ。

 家が見えてきた。ゴールは近い。時計を見るとタイムリミットまで残りわずかだった。

 耐えろ。俺の体。ぶち抜け。己の限界を。その全てを。
 
 家に着いた僕は早速、家に上がった。そして、テレビをつけた。

「あー! よかった。やっぱアニメはリアタイに限るぜ」

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