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身体傾斜角と筋活動

📖 文献情報 と 抄録和訳

体重負荷に応じたヒトの筋肉と脊髄の活性化について

📕Clarke, Benjamin, Jannah Khalid Al‐Hammdany, and Irene Di Giulio. "Human muscle and spinal activation in response to body weight loading." Journal of Anatomy (2023). https://doi.org/10.1111/joa.13821
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[背景・目的] 人間の立位は、自立した動作のための解剖学的・機能的な枠組みである。自立歩行の回復を目指した技術開発には、立位と移動時の体重支持の研究が不可欠であるが、支持されない体重支持は未だ実現されていない。本研究は、若年健常者の異なる重力負荷における筋および脊髄活性化を測定し、起立時の脊髄刺激の潜在的パターンを提供することを目的としている。

[方法] 18名の健康な被験者が電動台座に乗り、異なる体位で筋活動を表面筋電図(electromyography, EMG)により記録しました。試験した身体角度と相対的な重力負荷は以下の通りである: 0度(仰臥位)、15度(~26%)、30度(~50%)、45度(~71%)、60度(~87%)、75度(~97%)、直立(~100%)、台座上および台座から離れる。記録された筋肉は、ヒラメ筋、内側腓腹筋および外側腓腹筋、前脛骨筋、長内転筋、長腓骨筋、内側広筋および外側広筋、大腿直筋、縫工筋、長趾伸筋、半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋、薄筋、腹直筋、外腹斜筋、脊椎起立筋および広背筋。記録された筋活動から、脊髄活動マップが算出された。

✅ 脊髄活性化マップ
・各筋肉の平均EMGデータを用いて、脊髄活性化マップを計算した
・脊髄活性化マップは各筋肉の神経支配について知られているデータ(下図)を参考に、計算式を組み、脊髄の各セグメントの活性度を推測したもの

📕Ivanenko et al. Journal of neurophysiology 95.2 (2006): 602-618. >>> doi.

[結果]
■ 身体傾斜角度と下肢筋活動
・EMGデータのばらつきは大きかったが、筋活動は体の角度によって変化した。
外側広筋は60度(~87%BW)で、ヒラメ筋は75度で、腓腹筋は90度で活性化した。

■ 身体傾斜角度と脊髄活動マップ
・角度によって平均活性化に有意差が見られた脊髄分節は、腰椎L5分節と仙骨S1分節であった。

[考察] 本研究のデータから、体重を支える自立立位は、試験した限られた数の表層筋の活性化を高めることで達成可能であり、60度傾斜角度(87%BW)は仰臥位と比較して筋活性化を高めるための臨界負荷であることが示唆された。また、腰部および仙骨部の脊髄活性化は、体重負荷による立位維持にこれらの部位が関与していることを示している。このような筋と脊髄の活性化パターンを緊張刺激で再現することで、脊髄損傷後の患者でも自立した立ち上がりと歩行の回復が可能になると推測している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

荷重量は、様々な変化を身体に及ぼす舵取り者だ。

●月面重力下は筋肉の量は維持するが質は速筋化する >>> 🌱note.
●荷重負荷は腱を鍛える >>> 🌱note.
●周期的圧縮が椎間板の代謝に及ぼす影響 >>> 🌱note.
●部分荷重練習の意義。時期・強度に最適あり >>> 🌱note.
●宇宙での運動。強度が骨合成に重要 >>> 🌱note.
●力が骨を強くする仕組み:応力が骨配列を規定する >>> 🌱note.

そして、起立台というのは、その荷重量をコントロールできるツールの1つだ。
今回の研究は、起立台を用いて荷重量を変化させたときの筋活動の違いという、理学療法士としては必ず受信せざるを得ない情報を発した。
その結果、下肢筋活動、脊髄を活性化させるためには『60度』以上の傾斜角が必要であることが判明した。

これまで、起立台の角度設定については、「バイタルとの関連でできるだけあげよう」程度の認識しかなく、「○度以上は上げないとな」とは考えていなかった。
今回の抄読研究は、1つのハードルを与えてくれた。
今後の起立台を用いた介入では、少なくとも60度以上を目指すことだろう。

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