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筋力変動の制御。バランス能力の54%を説明

📖 文献情報 と 抄録和訳

健常成人における動的バランスの予測因子としての膝伸展力制御機構

📕Mear, Emily, Valerie Gladwell, and Jamie Pethick. "Knee extensor force control as a predictor of dynamic balance in healthy adults." Gait & Posture (2023). https://doi.org/10.1016/j.gaitpost.2023.01.004
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✅ 前提知識:変動係数(coefficient of variation, CV)とサンプルエントロピー(sample entropy, SampEn)
・変動係数(CV):筋収縮の変動の大きさ。力の安定性の指標。時系列内の固定点からの偏差の程度を定量化。多くの場合、パーセンテージで表され、標準偏差の比率として定義される。力の変動の主な決定要因である運動ニューロンへの共通シナプス入力の分散と強く関連している(📕Negro, 2009 >>> doi.)。
・サンプルエントロピー(SampEn):力の出力の規則性(時系列の不規則性の程度)を定量化。力の時間的フラクタルスケーリングはトレンド解除ゆらぎ分析 (DFA) を用いて推定(難解です)。タスクの要求に応じて迅速かつ正確に力出力を調節する能力を反映(📕Vaillancourt, 2003 >>> doi.)。

🔑 Key points
🔹膝伸展筋力CVおよびSampEnは、Yバランステスト前方到達力と相関がある。
🔹膝伸展力MVCとCVは、Yバランステスト後側方リーチと相関がある。
🔹筋力コントロールの指標は、動的バランスの有意な変動を説明する。

[背景・目的] これまでの研究で、下肢の様々な筋の力制御(力の変動の大きさによって測定)は、静的バランスの有意な変動を説明することが実証されている。多くの機能的活動やスポーツの動的性質を考慮すると、動的条件下でのバランスとその決定要因を評価することは重要である。研究課題:Yバランステスト(YBT)を用いて測定される動的バランスにおいて、筋力制御は有意なばらつきを説明するか?

[方法] 健常者28名を対象に、YBTのパフォーマンスと膝伸筋の筋力制御を測定した。YBTは、右脚で立脚し、左脚で前方、後方内側、後方外側の方向に最大リーチを試みるものである。力制御は、右脚を10%、20%、40%の最大随意筋収縮(MVC)で等尺性膝伸展収縮させて評価し、力の変動の大きさ(変動係数[CV]を使用)と時間構造(サンプルエントロピー、SampEn、トレンド除去変動分析αを使用)に従って定量化された。

[結果] 40%MVCでの収縮時に、YBT前方到達力と筋力CV(r = -0.44, P = 0.02)およびSampEn(r = 0.47, P = 0.012)に有意な相関が観察された。その後の回帰モデルにより、40%MVCでの筋力CVとSampEnは、YBT前方到達の分散の54%を有意に説明することが示された。

また、YBT後側方到達度とMVC(r = 0.39, P = 0.043)、40%MVC時の筋力CV(r = -0.51, P = 0.006)にも有意な相関が観察された。回帰モデルは、MVCと40%MVCでの筋力CVが、YBT後側方到達度の分散の53.9%を有意に説明することを示した。

[結論] これらの結果は、ダイナミックバランスの中程度の分散が等尺性筋力コントロールの測定値で説明できることを示した初めてのものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

ドライバーを300ヤード飛ばせれば、ゴルフが上手いだろうか?
矢が勢いよく飛べば、弓道が上手いだろうか?
そして、最大筋力が強ければ、うまく立ち歩けるだろうか?

最大の力を出す、という以外の課題特性があることは明らかだ。
その大きな幹の1つが『制御(コントロール)』である。
わかりやすく言えば、狙った標的と実践のズレを最小化すること。

そして、その能力はリハビリテーションにおいても重要だ。
今回の研究は、特にバランス機能面において、その重要性を明らかにした。
バランス機能の54%を筋力変動の制御が説明したという。

この論文を読んで、介入内容を内省しなければならないと思った。
最大筋力が課題に対して十分と思われる患者に、漫然と最大筋力を高める介入を続けてはいまいか。
その患者にとっては、いまや最大筋力より「筋力変動の制御」課題が求められているかもしれないのに。
じゃあ、それはどのようにやるのか…。
それは、これから勉強しようと思っている。

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