見出し画像

痛みによるボディイメージの歪み

📖 文献情報 と 抄録和訳

痛みの有無にかかわらずフリーマントル意識調査票を用いて測定した身体イメージ:系統的レビューとメタ分析

📕Budzisz, Aleksandra, et al. "Body image measured via the Fremantle Awareness Questionnaire in individuals with and without pain: a systematic review and meta-analysis." The Journal of Pain (2024): 104530. https://doi.org/10.1016/j.jpain.2024.104530
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Connected Papers
※ Connected Papersとは? >>> note.

🔑 Key points
🔹この結果は、対照群と比較して、痛みを持つ人々における身体イメージの歪みを示す強い証拠である。
🔹痛みのある人では、対照群と比較して、より高い身体イメージの歪みが観察された。
🔹痛みの強さは、持続時間ではなく、ボディイメージの障害との関係において有意であった。
🔹痛みの部位とボディイメージの障害は異なっていた。

[背景・目的] 疼痛が身体イメージに悪影響を及ぼすことは研究により示唆されており、身体イメージは報告される疼痛のレベルにも影響を及ぼす可能性がある。本総説は、痛みのある人と痛みのない人との身体イメージの歪みの違いに関する文献を要約することを目的とする。

[方法] レビューは、Preferred Reporting Items for Systematic reviews and Meta-Analysesの2020年版に基づき、事前に登録されたプロトコールに従って実施された。文献は5つの電子データベースを用いて検索した。痛みの有無にかかわらず、Fremantle Awareness Questionnaire(FAQ)を用いて身体イメージを評価した研究を組み入れる対象とした。適格な研究のスクリーニングと選択は、独立した査読者によって行われた。方法論の質は、Joanna Briggs Institute critical appraisal toolを用いて評価した。メタアナリシス、メタ相関、メタアナリシスは、ランダム効果モデルを用いて実施した。主要アウトカムはFAQスコアであり、副次アウトカムは報告された疼痛変数であった。

✅ Fremantle Awareness Questionnaire(FAQ)とは?
・Fremantle Awareness Questionnaire(FAQ)は、患者の自己身体知覚異常を評価するための質問紙である。
・主に慢性痛患者に対して使用され、自己の身体に対する認識や意識の歪みを評価するツールとして有用である。
・FAQは、患者が自分の体に対してどのように感じているか、特に身体の一部に対する意識がどの程度あるかを評価するために設計されている。

[結果] 痛みのある人(n = 2277)と痛みのない人(n = 615)のデータが要約された。痛みのある人では、痛みのない人に比べて有意な身体イメージの歪みが認められた。痛みのない人と比較して、痛みのある群では、腰痛(標準化平均差=1.33、95%信頼区間=0.88-1.77)または他の身体部位(標準化平均差=1.25、95%信頼区間=0.51-1.99)を経験したときのFAQの評価が有意に高かった。

この図は、Fremantle Awareness Questionnaireを用いた痛みのある個人と痛みのない個人の身体意識の評価に関する系統的レビューおよびメタ分析の結果の一部である。
痛みを持つ個人は、痛みのない個人に比べて身体意識スコアが高いことが示されている。

メタ相関分析の結果、身体イメージの歪みと痛みの強さ(r = 0.31)、安静時の痛み(r = 0.31)、運動時の痛み(r = 0.36)との正の関係が確認されたが、痛みの持続時間については確認されなかった。異なる部位(膝と背中)の痛みを有する個人間で、FAQの平均結果に差が認められた。

[結論] このレビューにより、痛みのある人と痛みのない人の間で身体イメージの歪みに違いがあることが確認された。痛みの強さは身体認知の変化と相関していたが、痛みの持続時間とは相関していなかった。身体イメージの歪みと報告された疼痛の変数との間に中等度の相関が観察された。ボディイメージは、腰痛よりも膝痛の方がより損なわれていた。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

例えば、右の手関節が痛いとする。
そうすると、人間の意識の中では、常に右手関節が意識されることになる。
ものを持つときも、階段を登って右手で手すりをつかむときも、歩いて振動が加わっているときも。
その頭の中では、子どもが描きだす地図のように、身体の比重が崩れている。
具体的には、痛みを発している右手関節の存在がとても大きくなっているように感じる。

このように、疼痛が生じてボディイメージが崩れる、という経験は誰しも経験していると思う。
今回の抄読研究は、その経験は事実だった、ということを示した。
疼痛を有すると、無痛者よりボディイメージが崩れていることが明らかになったのだ。
興味深いことには、その崩れは腰痛より膝痛の方が大きかったという。

本文の考察においては、以下のような要因が検討されていた。
①身体部位の違い: 膝は身体の遠位部(末端部)であり、触覚や痛覚の精度が高い部位である。これに対して、腰は身体の中央部であり、感覚の精度が低いため、ボディイメージの歪みが少なくなる傾向がある。
②文化的影響: 膝痛の研究は主に日本語版のFAQを使用しており、文化的背景がボディイメージの変化に影響を与える可能性がある。一方、腰痛の研究は多様な文化背景で行われており、その影響が異なる。
③脳の再編成: 慢性的な痛みによって脳の構造が変化することがあり、これがボディイメージの歪みに寄与する。特に膝の痛みは、触覚処理の歪みが大きく、これがボディイメージの崩れに繋がる。

このうち、個人的には①の要因が一番しっくりきた。
膝痛や腰痛を有する患者では、ボディイメージが崩れやすい。
それに対して、どのように理学療法を進めることが推奨されるのか、また勉強していきたい。

⬇︎ 関連 note & 𝕏での投稿✨

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪

↓↓↓

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●
#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び

この記事が参加している募集

#最近の学び

182,350件