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生活空間の狭小化, 回復と運動機能, 認知機能の関わり

📖 文献情報 と 抄録和訳

高齢者における認知機能および運動機能と生活空間狭窄の確率との関連についての前向き研究

📕Zammit, Andrea R., et al. "A prospective study of the association of cognitive and motor function with odds of life space constriction in older adults." Journal of the American Geriatrics Society 72.2 (2024): 390-398. https://doi.org/10.1111/jgs.18640
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[背景・目的] 多くの研究が、ライフスペースの狭小化は認知機能や運動機能の低下と関連していることを示している。認知機能や運動機能もライフスペースの狭窄を予測する可能性があるため、ライフスペースの予測因子としての認知機能や運動機能に関する長期前向き研究が必要である。

[方法] この前向き研究では、Rush Memory and Aging Projectの参加者のうち、最初の最大生活空間と少なくとも1回の追跡評価を報告した1246人を対象とし、最長19年間の追跡を行った。評価項目は生活空間質問票の修正版であり、生活空間を大(地域外)、中(近隣・地域)、小(自宅・庭)に分類した。参加者はまた、予測因子として、グローバル認知機能と運動機能の詳細な複合測定も受けており、最初の生活空間評価で利用可能であった。1年間の生活空間の遷移は、交絡因子と両方の予測因子を同時に含む多状態マルコフモデルを用いてモデル化した。

[結果]
■ 生活空間が狭小化してしまうリスクモデル
運動機能は認知能力よりも生活空間と強く関連していた。
・具体的には、運動機能が高いほど、広い生活空間から狭い生活空間へ移行する確率が低かった(大から中: OR=0.76、95%CI=0.69、0.83、大から小へ: 大→中:OR=0.58、95%CI=0.51、0.67、中→小:0.71、95%CI=0.57、0.87)。
・認知能力が高いことは、大から中への生活空間への移行、および大から小への生活空間への移行の低い確率と中等度の関連を示した(大から中: 大から中へ:OR = 0.91、95%CI = 0.83, 1.00;大から小へ: 大→中:OR=0.91、95%CI=0.83、1.00、大→小:OR=0.85、95%CI=0.74、0.97)であった。
・中程度から小程度の生活空間への移行と認知との関連は認められなかった(OR = 1.01, 95% CI = 0.82, 1.22)。

■ 生活空間が回復する確率モデル
・ベースライン時の認知機能が高いほど、生活空間が回復する確率が高かった(中程度の生活空間から大きな生活空間へ:OR = 1.22、95%CI = 1.04、1.43): OR=1.22、95%CI=1.04、1.43、生活空間が小から中へ: OR=1.32、95%CI=1.01、1.73であり、小さい生活空間にとどまるのとは対照的であった)、小さい生活空間から大きい生活空間への回復とは関連しなかった(OR=1.13、95%CI=0.89、1.44)。
・ベースライン時の運動機能の高さは、すべてのオッズ比が1より大きかったが、回復とは有意に関連していなかった。

[結論] 生活空間が機能を予測するという過去の文献と合わせると、これらの結果は認知機能、運動機能、生活空間の複雑な相互関係の概念を支持するものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

この研究の結果は、とても興味深いと感じた。
何が興味深いといえば、同じ「生活空間」というものをめぐり、その狭小化の要因と、回復の要因が異なる、ということが。
双方向性に同じ矢印を持つわけではないのだ。
具体的には、大まかに狭小化リスクには運動機能が、回復の確率には認知機能が関わっていた。

狭小化には運動機能が関わるというのは、イメージしやすい。
動けないが故に、どんどん生活空間が狭小化してしまうのだろう。
一方で、回復の確率に認知機能が関わるというのはどういうことか。
おそらく、行動変容が生じにくくなるということではないか。

「お母さん、最近動く範囲が狭くなっているから、もう少し外に出ようよ」

この一言に対して、「そうだね」と返事をして、その後の行動変容が生じるか。
そこに、認知機能の高低が関わってくるのではないだろうか。
とにかく、生活空間に関しては、上り坂と下り坂で要因が異なる。
その事実と、こういう分析方法があるということを刻もう。

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