脊髄損傷になって31年。そこから6年間の加齢による影響
📖 文献情報 と 抄録和訳
長期脊髄損傷で老化した高齢者の二次的健康状態および活動制限の6年間における変化
[背景・目的] 長期にわたる脊髄損傷(spinal cord injury, SCI)で高齢化する人の数は増加している。しかし、二次的健康状態(secondary health conditions, SHC)や活動制限の経年変化に関する知識は限られている。
●目的:長期SCIで老化した高齢者のSHCと活動制限の6年間の変化を明らかにし、SHCと活動制限の変化が性別、年齢、傷害特性にどのように関連しているかを調査する。
[方法] デザイン:Swedish Aging with Spinal Cord Injury Study(SASCIS)より縦断的コホート研究。設定:スウェーデンのコミュニティ環境。参加者:SASCISの初期参加者123名:78名(女性32%)、平均年齢68歳、平均受傷後期間31年、受傷レベルC1-L3、ASIA A-D。主なアウトカム評価項目:腸・膀胱の機能と問題、痛み、痙性、脊髄自立度測定(SCIM III)。
[結果] 6年間で、腸に関する問題が増加し(31%→47%、p = .015)、便秘の発生は24%(p = .013)と倍増した。頻回の尿路感染症(10%→26%、p = .004)、尿道留置カテーテルの使用(15%→23%、p = .031)、その他の膀胱関連の問題(4%→22%、p < .001)が増加した。痛みの発生率は高く(85%)、大きな変化はなかった。痙性は41%から62%に増加した(p < .001)。腸に関する問題の増加は男性で大きく、セルフケアの悪化は受傷後時間が経過した参加者や外傷性の参加者でより大きかった。
活動制限は増加した(SCIM III総スコア平均67→61、p < .001、すべての下位尺度で有意な減少が見られた)。
[結論] これらの知見は、長期SCIで老化した高齢者において、SHCと活動制限が時間の経過とともに増加するという考え方を支持するものである。この結果は臨床医に情報を提供し、健康で活動的な老化をサポートするために、長期フォローアップにおけるプロアクティブでホリスティックなアプローチを呼びかけることができる。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
僕たちは、何かを新しく始めたり、目標を立てたりすることは好きだ。
だけど、何かを続けたり、立てた目標がどうなったかの経過を追うことは、苦手だ。
それは、職場における目標設定と履行状況について考えると、実感できる。
疾患に対する医療においても、似たようなことが言えるかも知れない。
発症直後の治療、リハビリテーション、退院支援には躍起になっている。
長期的な患者の健康状態維持のために、必死でみんな知恵を絞っている。
けど、それを実際に確認した人は・・・?
6年後のあの人は、どうなっている・・・?
ね。
僕たちは、何かの経過を追うことは、苦手なのだ。
今回の研究は、脊髄損傷者を受傷してすでに31年が経過した人々の高齢期の6年間における変化を明らかにした。
この変化は、非脊髄損傷者の変化とは質を大きく異にしたものだと思う。
膀胱直腸障害、痙性など、特にそうであろうと思う。
今回の研究が提供してくれた視点は、今までの僕にはほとんどなかった。
頭に刻み、臨床に臨もう、既往歴に目を光らせよう!
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