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査読タイプ & オプション。整形外科領域78誌の状況は?

📖 文献情報 と 抄録和訳

学術医療におけるピアレビューの実践:整形外科の例がパラダイムの転換に役立つかも?

📕Chloros, George D., et al. "Peer review practices in academic medicine: how the example of orthopaedic surgery may help shift the paradigm?." International Orthopaedics 47.5 (2023): 1137-1145. https://doi.org/10.1007/s00264-023-05729-6
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✅ 前提知識①:査読者タイプについて
・単盲検査読(single):著者には査読者が誰かわからない
・二重盲検査読(double):著者、査読者ともに相手が誰だかわからない
・三重盲検査読(triple):著者、査読者、編集者が相手が誰だかわからない

🌍 参考サイト >>> site., 🌍 参考サイト >>> site2.

✅ 前提知識②:査読者の提案と除外
・査読者の提案(Author-suggested Reviewers:ASR):ASRは、査読のコスト削減とスピードアップをもたらすかもしれないが、バイアスを増加させたり、不正を誘発する可能性がある。著者が査読者になりすまし、自分の作品を査読するという悪用事例がいくつかあり、「偽査読」(FPR)と呼ばれている(📕Kwee, 2020 >>> doi.) 。
・査読者の除外希望(Non-Preferred Reviewers:NPR):NPRは、知識があり、公平だが厳格な査読者を排除してしまう可能性もある(📕Siegelman, 1991 >>> doi.)。

[背景・目的] 整形外科領域における査読の現状を把握し、ジャーナルのインパクトファクターと関連付けること。残念ながら、これはあまり注目されておらず、様々な分野で重要な文献のギャップとなっている。したがって、整形外科の分野での現在の慣行を決定することは、他の学術医学分野にも適用できる可能性のある有効なひらめきを提供することができるだろう。

[方法] Journal Citation Reportsに登録されている整形外科の雑誌を検索し、インパクトファクター(IF)、盲検化の方法:シングル(SBPR)、ダブル(DBPR)、トリプル(TBPR)、クアドラプル(QBPR)、オープン(OPR)の盲検化プロセス、著者推薦査読者(ASR)と非希望査読者の選択肢の可能性を抽出する。

[結果] 82誌のうち、4誌は招待制であったため除外した。残りの雑誌において、盲検化は以下の通りであった: SBPR9誌(11.5%)、DBPR52誌(66.7%)、TBPR2誌(2.6%)、QBPR0誌(0%)、OPR3誌(3.8%)、そして12誌(15.4%)では、その内容が不明だった。

ASRとNPRのオプションはそれぞれ34誌(43.6%)と27誌(34.6%)で提供されたが、ASRは8誌(10.3%)で必須だった。IFと他のパラメータとの相関は見られなかった。

[結論] SBPRシステムは、ASR(時には必須)やNPRとともに、誠実さや公平性に疑問のあるまま、いまだに広範囲に使用されている。このような危険な行為を軽減するためのいくつかの勧告と、この科学の重要な側面における研究の不足を解決するための将来の方向性が示されている。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

査読は科学において民主主義が政治においてそうであるように、
すなわち最も効率的なシステムではないが、
最も腐敗しにくいシステムである

“peer-review is in science what democracy is in politics, i.e. not the most efficient system, but the least corruptible”

Lachmann P (2002) The research integrity initiative: progress report. In: White C (ed) The COPE report 2002: annual report of the Committee on Publication Ethics. BMJ Books, London

自己評価→知り合いによる評価→全く知らない第三者による評価
前者に近いほど、バイアスが高まる。
バイアスとは何か?
それは、客観的な論文的な質の外にある、様々な事情のこと。
・この論文が通ったら(個人の)実績がつく
・この論文を通したら(あの人に)感謝されるだろう
・あっ、尊敬する研究者の論文だ、これ。じゃ、絶対質高いわ

思うのだが、客観というものは、どこまで客観だけでいられるのだろう。

空中に投げられた石にとっては、
落ちるのが悪いことでもなければ、昇るのが善いことでもない。

自省録 マルクス・アウレーリウス P. 174

このような精神で査読ができたならば、それは中立な査読になるのだろう。
だが、物事はそう簡単にはいかないものだ。
僕たちは、自分自身で選択している、判断していると思っていても、実はそうだけではない。
事前にもっている情報によって、僕たち自身が操作されているという側面がある。
たとえば、選挙活動(選挙カーなど)において「むしろ悪感情を抱かれるのでは?」とも思われるほどの大きな音で、選挙者の名前を繰り返し繰り返し伝えるのはなぜだろう?
それは、僕たちは知らないものより、知っているものを選んでしまう、からだ。
親近性原理という。
僕たちは、知っているものを好み、知らないものを嫌う。
知っている石ころは、好きになってしまって、ただの石ころでは済まなくなるのだ。
他にも、たくさん色眼鏡の種類がある。
それを減らすための手立ての1つとして、「査読プロセス」がある。
今回の研究によって、査読プロセスにもたくさんの種類やオプションがあることを知った。
そして、現状の査読システムの状況も。
論文投稿時に、「ああ、この雑誌はこういう感じなのね」という視点が増えた。

できることなら目が見えないまま生まれてきて、
突然目が見えるようになればよかった
そうすれば世界を先入観なく見ることができる

クロード・モネ

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