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マタイ効果。査読者は、ノーベル賞受賞者には甘くなる

📖 文献情報 と 抄録和訳

査読者は論文の著者が有名であればより高い評価を与える

📕Brainard, Jeffrey. "Reviewers award higher marks when a paper's author is famous." Science (New York, NY) 377.6612 (2022): 1251-1251. https://doi.org/10.1126/science.ade8714
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> not applicable

[コメント概要]

🕊 Twitterでの著者コメント
査読者は同じ論文の2つのバージョンを読みました。
一方はノーベル賞受賞者を著者としており、
もう一方はあまり知られていない研究者である。
査読者はどちらの論文を気に入ったと思いますか?

正解は、『ノーベル賞受賞者』が著者の場合である。
論文の著者が有名である場合、査読者はより高い評価を与えた。
「マタイ効果」は強力で、異常に大規模な研究結果だった。

✅ マタイ効果とは?
マタイ効果(Matthew effect)またはマタイ原理とは、条件に恵まれた研究者は優れた業績を挙げることでさらに条件に恵まれるという現象のことであり、それは科学界以外の様々な分野でも見ることができる。
🌍 参考サイト >>> wiki.

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

成功することは、さらなる成功の呼び水となる。
ふろむだ(人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている)は、『錯覚資産』という言葉で示した。
錯覚資産はハロー効果を通じて、1つの成功からさらなる成功を生み出す。
ハロー効果のハロー haloとは、後光のこと。
成功者だという認識が「後光」となり、なにもかもが優れて見えるような錯覚。まさか査読プロセスにも、『錯覚資産』が影響していたとは。

このScience のコメントは、二重盲検のレビューは機能しない可能性があることを示唆している。
これは、著者が誰であるかを他の研究から推測できるためだ。
「いやいや、著者名ブラインドされてますやん?」
と思うだろうが、実は、真に論文を読み込むと、誰が著者かわかる場合が多い。例えば、国名が入っていたり、自分の過去の論文を被引用としていたり、ということから。

そして、これは自分の身に当てはめても、そう思えた。
例えば、自分が査読している論文が、あのモーターコントロールの著者『Anne Shumway-Cook』だったら、どうする?
その査読の最中、「ん?」と思うところがあっても、「ああ、これは自分なんかの頭では理解しきれない部分なんだ」、「ここをこんなに省略している。でも、そうしてもいいんだな」など、まず『この人は正解している』という前提からすべてを捉えてしまう。
逆の場合、相手が全くの無名で修士号も持っていなかったら、同じ論文だったとしても「ん?、ここ全然ダメやん」、「ここをこんなに省略している。リジェクトですね」と、まず『この人はおそらく不正解が多い』という前提からすべてを捉えてしまう。
おそらく、主観と客観は完全には乖離し得ないのだろうと思う。
だって、その人が重要だと思う部分だけが入力たり、意識にのぼったりするわけで、その無意識の過程で主観が舵を握ってしまっているのだ。

だからこそ、レビュー プロセスをさらに発展させる必要がある。
大きくは3つあるのではないだろうか。
①完全機械化:主観はない
②ピアレビュー+α:例. コペルニクスジャーナルのアプローチ。このアプローチでは、ピア レビューの後にパブリック コメント期間が続き、すべてのステートメントが公開され、保存される。
③査読における評価指標を具体化・チェックリスト化:主観は入りにくいが、これを究極まで押し進めるなら、誰がやってもよいものとなり、じゃあ機械でいい、となる。
見えてきたのは、「人がやる」場合には、マタイ効果をはじめとしたバイアスはゼロにはできないということ。
それでも人がやるメリットとは、何か?
他方、機械がやるメリットとは、何か?
それらを天秤に乗せ、人がやるか、機械がやるか。
これは、選択の問題だ。

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