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膝屈曲角度に応じたACLの応力, ひずみ分布


📖 文献情報 と 抄録和訳

膝関節屈曲角度の違いによる前十字靭帯の応力とひずみの変化:三次元有限要素法による研究

📕Yang, Shaozheng, et al. "Stress and strain changes of the anterior cruciate ligament at different knee flexion angles: A three-dimensional finite element study." Journal of Orthopaedic Science 29.4 (2024): 995-1002. https://doi.org/10.1016/j.jos.2023.05.015
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[背景・目的] 本研究は、3次元有限要素モデルを用いて、膝関節屈曲角度の違いによる前十字靭帯(anterior cruciate ligament, ACL)の応力とひずみの変化を解析することを目的とした。

[方法] 30名の健常成人ボランティアの右膝に対してコンピュータ断層撮影と磁気共鳴画像撮影を行った。画像データを用いて膝関節の3次元有限要素モデルを構築した。膝関節屈曲角0°、30°、60°、90°におけるACLの応力とひずみの大きさと求心性を評価した。

[結果]
■ ACLの応力分布
・図は、ACLにかかる力の集中領域を視覚化している。
・応力の大きさは0~30°で一定(P>0.999)、30~90°で減少(それぞれP<0.001、P=0.005)した。
・応力集中面積は、0°から60°の間では、近位端、中位端、遠位端で一定であった(P > 0.05)。

この図は前十字靱帯(ACL)の異なる膝屈曲角度における応力(ストレス)分布を示している。
図中の各画像(A、B、C、D)はそれぞれ0度、30度、60度、90度の膝屈曲角度に対応している。

■ ACLのひずみ分布
・図は、ACLの変形度合いを視覚化している。
・ひずみの大きさは0°~30°で増加(P=0.004)、30°~90°で減少(それぞれP<0.001、P=0.004)した。
・ひずみの求心性面積は、0°から30°の間では近位端で増加し、中位端で減少し、30°から90°の間では一定であった(P < 0.001)。

図は前十字靭帯(ACL)のひずみ分布の集中領域を示すネフォグラムであり、
膝の屈曲角度ごとのひずみの変化を視覚的に理解できる。

[結論] 膝関節屈曲角度が低いとき、ACLの応力とひずみの大きさはピークに達し、ACLひずみの求心性は中位から近位端へと徐々に変化した。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

ACL損傷後の筋力トレーニングにおいては、浅い膝屈曲角度ではACLの応力、ひずみが大きくなるので注意が必要である。
これは知識としては知っていたことだ。
だが、今回の抄読研究で『視覚的に』ACLのどの部分に、どのくらいの負荷が加わるかを見るにつけ、より切実な知識になった。

今後、僕の見る景色において、患者さんの膝関節内のACLが、膝関節屈曲角度が浅くなると赤く応力、ひずみが大きくなるようにイメージされるだろう。
基礎研究というものは、本来見えない世界を、目に見える世界にしてくれる。
これからも、積極的に勉強していきたい一分野である。

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