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膝の間にボールを挟もう!脳卒中者の立ち上がり動作を改善

📖 文献情報 と 抄録和訳

座位から立位までの股関節内転筋の活性化により、片麻痺者の筋活性化タイミングと立ち上がりメカニクスが改善される

📕Hsu, Wei-Chun, et al. "Increased hip adductor activation during sit-to-stand improves muscle activation timing and rising-up mechanics in individuals with hemiparesis." Journal of Electromyography and Kinesiology (2023): 102741. https://doi.org/10.1016/j.jelekin.2022.102741
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[背景・目的] 長い立ち上がり(sit-to-stand, STS)時間は、機能的なモビリティが損なわれていることの特徴として認識されている。股関節内転筋の同時収縮によるSTSパフォーマンスのバイオメカニクスの変化は研究されておらず、STSトレーニング中の股関節内転筋活性化の使用に対する適応を制限する可能性がある。

[方法] 片麻痺患者10名(平均年齢61.8歳、受傷期間29.8±15.2ヶ月)が、両脚でボールを挟む場合と挟まない場合でSTSを実施した。ボールを挟んだ場合と挟まない場合の関節モーメント,地面反力(ground reaction force, GRF),椅子反力,動作時間,筋電図の時間指標を対照条件から算出し,ボールを挟んだ場合のものと比較した.

[結果] ボールを挟む条件では、非麻痺肢では、負荷率の増加に伴い、上昇相における垂直方向のGRFのピークが減少し、麻痺肢では、膝伸展モーメントのピークが早く発生することが観察された。ボールを挟むSTSでは、ヒラメ筋、前脛骨筋と大殿筋、中殿筋の早期活性化が認められた。

[結論] STSの際にボールを挟むことで、ヒラメ筋、前脛骨筋、大殿筋、中殿筋の収縮タイミングが増加し、より対称的な立ち上がり力学が得られることから、片麻痺者のSTSの際にボールを挟むことが推奨される。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

『体外関節』という概念を思いついたことがある。
それはスクワット動作などにおいて、支持基底面に対して重心が大きく外れた場合、地面と身体との間にまるで関節があるかのような『回転軸』が出現し、その軸回りに運動が起こる。

脳卒中片麻痺者の立ち上がりにおいて、麻痺側下肢でしばしばこの体外関節の運動が起こっている。
典型的なのは、非麻痺側に過度に依存し、麻痺側下肢が股関節外転・外旋、脛骨外方傾斜し、平易に表現すれば外に倒れてしまう。
外に倒れてしまうと、荷重の多くが体外関節における回転トルクに転換されるため、真の下肢関節にトルク負荷が生じにくい。
下肢関節にトルク負荷が生じなければ、筋収縮需要が生まれず、結果的に麻痺側下肢が立ち上がりに参加しにくい。

僕たちは、ダンベルがあるから筋トレできるが如く、負荷があるが故に出力できる。
そして、動作においては適切な負荷を自ら作り出していく必要があるのだ。
今回の研究によれば、脳卒中片麻痺者の立ち上がりにおいては、ボールを膝の間に挟むことが、その負荷を作り出すことに貢献してくれそうだ。
ボールを挟むことで、外に倒れていた下肢が中間位に近づき、体外関節での運動を抑止できる。

脳卒中者の立ち上がりで、麻痺側に荷重がかからない→膝の間にボールを挟む

実践していきたい。

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