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フレイルのバイオマーカー。自然免疫系と適応免疫系のトップ10


📖 文献情報 と 抄録和訳

加齢に伴う免疫系のバイオマーカーとフレイルとの関連-系統的レビュー

📕Van Hoi, E. Tran, et al. "Biomarkers of the ageing immune system and their association with frailty–A systematic review." Experimental Gerontology 176 (2023): 112163. https://doi.org/10.1016/j.exger.2023.112163
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✅ 前提知識:自然免疫系と適応免疫系
■ 自然免疫系
・自然免疫系は、あらゆる異物に対して迅速かつ非特異的に反応する。
・簡単な例では、裂傷の部位に白血球が駆けつけ、感染を食い止める。
■ 適応免疫系
・適応免疫系は抗原特異的な免疫反応を担当する
・その抗原を認識して攻撃するように設計された特定の免疫細胞(B細胞やT細胞など)を含む。

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🔑 Key points
🔹フレイルのバイオマーカーとして最もよく研究されているのはIL-6、CRP、TNF-αである。
🔹IL-6とCRPは一貫してフレイルと有意に関連している。
🔹T-リンパ球亜集団については、調査頻度が低すぎるため、強い結論を出すことはできない。
🔹しかし、Tリンパ球はフレイルと関連する可能性を示した。

[背景・目的] はじめに加齢は、免疫系の変化を含むいくつかの生理的変化と関連している。加齢に伴う自然免疫系および適応免疫系の変化はフレイルの一因と考えられている。フレイルの免疫学的決定因子を理解することは、高齢者により効果的なケアを開発し提供することに役立つ可能性がある。本システマティックレビューの目的は、加齢に伴う免疫系のバイオマーカーとフレイルとの関連を検討することである。

[方法] PubMedおよびEmbaseにおいて、 "immunosenescence", "inflammation", "inflammaging", "frailty "のキーワードで検索を行った。免疫パラメータに影響を及ぼす活動性疾患のない高齢者において、加齢に伴う免疫系のバイオマーカーとフレイルの関連を横断的に調査した研究を対象とした。3人の独立した研究者が研究を選択し、データ抽出を行った。研究の質は、横断研究に適応したNewcastle-Ottawa scaleを用いて評価した。

[結果] 合計44件の研究が対象となり、参加者数の中央値は184人であった。研究の質は16件(36%)で良好、25件(57%)で中等度、3件(7%)で不良であった。

■自然免疫系×フレイルのバイオマーカートップ10
🥇IL-6
🥈CRP
🥉TNF-α
4位以降:総リンパ球数、WBC数、好中球数、単球数、IL-8、MCP-1、IL-10


■適応免疫系×フレイルのバイオマーカートップ10
🥇総リンパ球数
🥈WBC数
🥉IL-10
4位以降:IFN-g、IL-2、総B細胞数、CD4/CD8比、IL-17、好中球-リンパ球比、CD4/CD8<1

フレイルとの関連は、(i)IL-6の増加で24研究中12研究、(ii)CRPの増加で19研究中7研究、(ii)TNF-αの増加で13研究中4研究で観察された。その他の研究では、フレイルとこれらのバイオマーカーとの関連は観察されなかった。さまざまな種類のTリンパ球サブポピュレーションが研究されたが、各サブセットは1回しか研究されておらず、研究のサンプルサイズは低かった。

[結論] 免疫バイオマーカーとフレイルの関係に関する44の研究をレビューした結果、IL-6とCRPがフレイルと最も一貫して関連するバイオマーカーであることが明らかになった。T-リンパ球サブポピュレーションについては、最初の結果は有望であるものの、調査頻度が低すぎるため、まだ強い結論は得られていない。これらの免疫バイオマーカーをより大規模なコホートでさらに検証するためには、追加研究が必要である。さらに、これらの免疫バイオマーカーを高齢患者のフレイル評価や治療改善に役立てるために臨床で使用する前に、以前から加齢やフレイルとの関連性が指摘されている免疫候補バイオマーカーとの関連性をさらに調べるために、より均一な環境やより大規模なコホートでの前向き研究が必要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

このようなバイオマーカーの良いところは何か?
それは、「主観」が介在しにくい、というところだ。
例えば、リハビリのアウトカムとなる疼痛や、恐怖感などは主観が介在しやすい評価の代表例だろう。
それは、人の解釈であり、客観性を担保しにくい。

だが、血液データなど生化学データに基づくバイオマーカーの場合には、主観の入る余地が少ない
そのため、明らかとなった疾患との関わりなどは再現可能性の高いものになりやすい。
つまり、信頼できる可能性が高い。

また、バイオマーカーの場合、検査自体はリハビリ内で実施する必要がなく、手間取らないことも魅力の1つだ。
このようなバイオマーカーの知識を増やしていきたい。

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