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いま、バイオマーカーとしての『嗅覚』が熱い!

▼ 文献情報 と 抄録和訳

老化や神経変性疾患における嗅覚障害

Dan, Xiuli, et al. "Olfactory dysfunction in aging and neurodegenerative diseases." Ageing Research Reviews (2021): 101416.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[ハイライト]-嗅覚障害(OD)は、神経変性疾患、特にパーキンソン病(PD)やアルツハイマー病(AD)に多く見られる。-嗅球は、パーキンソン病で最も早く発症する脳領域の1つであり、嗅覚障害はパーキンソン病患者の最も早い非運動機能の1つである。-ADの危険因子は嗅覚障害と関連しており、嗅覚障害はAD患者の高次脳処理センターで始まる。-嗅覚障害者の4分の1以下は、検査を受けるまで匂いの問題を認識しておらず、嗅覚検査の必要性が強調されている。-嗅覚機能の個人的な経時的記録が必要であり、将来の認知機能障害を予測する可能性がある。

[レビュー概要] 嗅覚機能の変化は、神経変性の早期バイオマーカーとなることが提唱されている。神経変性疾患は、パーキンソン病やアルツハイマー病に代表されるように、加齢に伴う疾患が多い。早期にリスクを特定するバイオマーカーを確立することは、病状の進行を延期または回避するための早期治療を実施するために重要である。嗅覚障害は、早期のPD患者の90%、早期のAD患者の85%に認められ、これらの疾患の早期診断のための魅力的なバイオマーカーとなっています。ここでは、ヒトに広く適用されている嗅覚検査と、いくつかの動物モデルで行われている嗅覚評価を系統的にレビューし、ODと正常加齢、PD、AD、その他の疾患との関係を明らかにした。また、神経変性疾患診断のバイオマーカーとしてのODの有用性と今後の研究の方向性についても議論している。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

評価や検査の役割とはいったい何だろう?
その大きな1つは「気づきを与える」だと思っている。
本人は、全然問題ないと思っている事項に関して、客観的な評価や検査をすることで、「それまで気づかなかった問題」が浮き彫りになって認識されること、これが重要だと思う。
その意味で、嗅覚にとって評価・検査は非常に大切だ。
なぜなら、主観的に自分の嗅覚がどうなっているかが非常に分かりにくい感覚モダリティだからである。
この論文の中で紹介されている先行報告によれば、

■ PD患者の52%が自分の嗅覚を過大評価し、27%だけが自分が低血糖であることを正しく認識していた(Leonhardt et al., 2019
■ AD患者のうち、病気の初期段階で嗅覚の低下を訴えたのはわずか6%で、実際には80%以上のAD患者が嗅覚機能の著しい障害を示した(Zou et al., 2016)

こと嗅覚領域では、検査・評価が救世主となり得る可能性が高い。アップルウォッチなどウェアラブルセンサーが台頭してくる可能性もあるだろう。とにかく、目を離すことのできない一ジャンルだ。

もし書くとすれば匂いですね
色々なものの周りにある匂いを描きたい
匂いの中に本質があるんですから
開高健

いま、嗅覚が熱い!!!