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『唾液』というバイオマーカが、オーバートレーニングを監視いたします

▼ 文献情報 と 抄録和訳

オーバートレーニングを浮き彫りにする高強度サイクリングプロトコルに対する唾液中コルチゾールとテストステロンの信頼性

Hough, John, et al. "Reliability of salivary cortisol and testosterone to a high-intensity cycling protocol to highlight overtraining." Journal of Sports Sciences (2021): 1-7.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

✅ この抄録を読む前提知識
■ 非オーバートレーニングでは唾液中のコルチゾール(55/80実施前から実施後で約7nmol.L-1)と唾液中のテストステロン(55/80実施前から実施後で約400pmol.L-1)の濃度がしっかりと上昇する
■ オーバートレーニングではホルモン上昇が鈍化し、疲労、心理的ストレス、燃え尽き症候群につながることが報告されている

[背景・目的] スポーツ選手は、パフォーマンスを向上させるために物理的な負荷をかける。ストレスと回復のバランスが崩れると、オーバートレーニングを引き起こす可能性がありますが、診断マーカーが存在しないため、診断は困難である。55/80サイクル(最大作業率55%で1分間、最大作業率80%で4分間のブロックを30分間交互に繰り返す)に対するホルモン反応は、55/80に対するコルチゾールとテストステロンの反応の鈍化がトレーニングの激化を示すことから、初期段階のオーバートレーニング(オーバーリーチ)を浮き彫りにすることができる。しかし、オーバートレーニングをしていないときの55/80に対するホルモン反応の信頼性は不明である。したがって、報告されたホルモン反応の鈍化は、55/80に対するコルチゾールとテストステロンの反応が一貫していないことに起因する可能性がある。

[方法] 参加者(n=23)は、7日以上の間隔をおいて55/80を3回実施し、試験前24時間は運動をしなかった。運動前の尿中の浸透圧とストレス質問票の回答を測定した。コルチゾールとテストステロンの評価のために、運動前、運動後、および運動後30分の唾液サンプルを採取した。

[結果] 唾液中のコルチゾールとテストステロンの反応、浸透圧、幸福感は試験間で差がなかった。唾液中のコルチゾールとテストステロンは,運動前から運動後にかけて,4.2 nmol.L-1(コルチゾール)と307 pmol.L-1(テストステロン),および運動後30分で160 pmol.L-1(テストステロン)だけ上昇した。運動前から運動後のピークまでのコルチゾール(0.89;良好)とテストステロン(0.53;中等度)のクラス内相関係数を算出した。

[結論] 以上の結果から、55/80は、健康な状態であれば、唾液中のコルチゾールとテストステロンの信頼できる上昇を誘発することが示された。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

唾液がオーバートレーニングを検出する、すごいアイデア・技術だ。この技術は、働き方改革ならぬ、トレーニング改革をも引き起こしうる。

働き方改革 ▶︎ 過労死を防ぐために長時間労働・無理を避ける『仕事はなるべく短く、早く帰りなさい』
トレーニング改革 ▶︎ オーバートレーニングを防ぐために過負荷・無理を避ける『これ以上はオーバートレーニングです、ストップしてください』

確かに、良いことだ。・・・。
良いことだ、と思うのだが、良いことをして行った結果、どうなるかを考えてみた方がいい。

過度がなくなった世界、均質化の世界。
極端に悪いこと(過労死など)も少ない代わりに、極端に良いこと(天才・超人の鍛錬・出現)も少ない。
起伏の少ない世界。どう思う?
エントロピー最大化である。
生物にとって、エントロピーの最大化が何を示すか・・・『死』である。
僕たちは、僕たちにとって良いと思うことを最大限しながら、
実際には、死に向かって一歩ずつ踏み出してしまっているのかもしれない。

誰もが同じものを欲し、
誰もが同じである
別の感じ方をするものは、
自分から精神病院に入る
ニーチェ みずからの時代と戦う者 P.54

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【あり】最後のイラスト

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